【鉱物言葉集】

春日武彦「猫・勾玉」より石に関する言葉






ときおり〈ねごと)が書斎に入ってきて、机の上をチェックしていく。

勾玉には気付いたようだったが、
2、3秒ほど訝しげに鼻で嗅いでから
そのまま立ち去ってしまった。

感想を聞きたいところだが 
喋ってくれない。

やるだけのことはやったのである。
茶トラの猫と虎眼石の勾玉とで、
もはやわたしの運勢は盤石である。



春日武彦著「猫・勾玉」
(『作家と猫』所収、p158.159)







「人生がつまらない」と

感じていた著者は、

ある日、占い師のもとを訪れる。




そこで言われたのは、

家の中に「虎に関するもの」を置くと

よい、ということ。




著者の家には、

〈ねごと〉という名前の

茶トラの猫がいた。




それだけで十分なはずだったが、

著者は虎眼石の勾玉を買う。 






研磨された虎目石(タイガーアイ)


〈Wikimedia Commons〉

虎目石は、繊維状の鉱物が石英の中に置き換わって生まれる石。古代エジプトでは「幸運を招く聖なる石」として扱われていたという。光の角度により、虎の目のように見えることが名前の由来。



 



私は石に特別な力を求めては
いないけれど、
見えないものを
「無い」と言えないと思っている。



石が石であり続けてきた時間の層は
人間のそれとはまったく違う。
何にも宿っていないと言い切るのは
違う気がする。




自分で拾ったり買ったりした石が
大切で愛おしいのは
誰かではなく「私」が
時間をかけて
選んだからなのだと思う。



人は石に出会ったら
ただ眺めるだけでは飽き足らず、
自分の物語の中に
連れていきたくなるのかもしれない。




 

私の机の上






トラ猫の画像