【鉱物言葉集】
春日武彦「猫・勾玉」より石に関する言葉
ときおり〈ねごと)が書斎に入ってきて、机の上をチェックしていく。
勾玉には気付いたようだったが、
2、3秒ほど訝しげに鼻で嗅いでから
そのまま立ち去ってしまった。
感想を聞きたいところだが
喋ってくれない。
やるだけのことはやったのである。
茶トラの猫と虎眼石の勾玉とで、
もはやわたしの運勢は盤石である。
春日武彦著「猫・勾玉」
(『作家と猫』所収、p158.159)
私は石に特別な力を求めては
いないけれど、
見えないものを
「無い」と言えないと思っている。
石が石であり続けてきた時間の層は
人間のそれとはまったく違う。
何にも宿っていないと言い切るのは
違う気がする。
自分で拾ったり買ったりした石が
大切で愛おしいのは
誰かではなく「私」が
時間をかけて
選んだからなのだと思う。
人は石に出会ったら
ただ眺めるだけでは飽き足らず、
自分の物語の中に
連れていきたくなるのかもしれない。
トラ猫の画像



