宮沢賢治『春と修羅』序文より




おそらくこれから二千年も

たつたころは


それ相当のちがつた

地質学が流用され


相当した証拠もまた

次次過去から現出し


みんなは二千年ぐらゐ前には

青ぞらいつぱいの

無色な孔雀が居たとおもひ 


新進の大学士たちは

気圏のいちばんの上層

きらびやかな氷窒素のあたりから

すてきな化石を発掘したり


あるいは白堊紀砂岩の層面に

透明な人類の巨大な足跡を

発見するかもしれません




〜宮沢賢治〜



(『新編 宮沢賢治詩集』新潮文庫より)