宮沢賢治『注文の多い料理店』序文より




わたしたちは、氷砂糖を

ほしいくらいもたないでも、


きれいにすきとおった風を食べ、

桃いろのうつくしい朝の日光を

のむことができます。


またわたくしは、

はたけや森の中で、

ひどいぼろほろのきものが、


いちばんすばらしいびろうどや

羅紗や、宝石いりのきものに、

かわっているのを

たびたび見ました。 


わたくしは、そういう

きれいなたべものやきものを

好きです。




〜宮沢賢治〜



(『注文の多い料理店』新潮文庫)





宮沢賢治は、自然を愛し、

慈しむ心を大切にしていました。


序文は、


「けれども、わたくしは、

これらのちいさなものがたりの

幾きれかが、おしまい、あなたの

すきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。」


と締めくくられています。