らぶばなです。アッシュ生存設定で英二はなぜか音信不通中です。突然現れた英二そっくりな日中ハーフ、リンジにアッシュはどんな仕事を与えるのでしょうか。。。。続きをお楽しみ頂ければ幸いです。
「君の面影を追って(4)」
アッシュに呼び止められたリンジは予想外の返答に驚いた。
「俺に仕事を。。。? 」
リンクスに所属することは断られてしまったが、そのボスであるアッシュから直接 ”仕事”を依頼されたのだ。
(一体何をさせるつもりなんだ。。。殺し。。。とか言うんじゃないだろうなぁ。。。)
訝しげな表情で固まっているリンジに、アッシュはすぐ近くにいたアレックスというリンクスNo.2の男に声をかけた。アレックスはアッシュほど圧倒的なカリスマ性や美しさを持ってはいないものの、精悍な顔つきで頭の切れそうな印象だった。
アッシュはアレックスの耳元で何か指示をした後、彼はリンジに背を向けてバーから出て行った。
仕事を依頼しておきながら出て行くだなんて一体どうしたのかと不思議がるリンジの元にアレックスがやってきた。彼はリンジを見た後、なぜか深いため息をついた。そしてごく小さな声で自分に言い聞かせるように「これじゃぁ、仕方がない。」と呟いた。
「。。。?」
きょとんとするリンジにアレックスはハッと我に返った。
「ボスは後から来る。それまでこっちで待ってろ、付いてこい」
そう行って、雑居ビルの階段を指差した。
「。。。あぁ」
どうやら仕事の話は嘘ではないようだ。リンジはアレックスに連れられて3階フロアにやってきた。ここはアパートになっているようで、狭くて簡素な部屋が4〜5つ並んでいた。そのうちの1つを開けて、アレックスはリンジに入るように促した。
ワンルームタイプのごくシンプルな部屋だ。ベッドと小さなテーブルしかないが、家出中のリンジにとっては十分天国のような場所だった。
「この部屋を自由に使って構わない。俺たちのアジトの1つだ。」
「え、いいの?」
「住むところ無いんだろう? あとでボスが仕事を依頼しにくるから待ってろ。」
鍵をリンジに向かって放り投げ、アレックスは部屋から去ろうとした。リンジは慌ててアレックスを呼び止めた。
「あのさ。。。ひとつ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
振り返ったアレックスに、リンジはずっと感じていた違和感について尋ねてみた。
「あんたのところの仲間は。。。なんで俺の顔をジロジロ見るんだ? アジア系なんてそんなに珍しくもないだろう?」
「。。。その顔に感謝するんだな。だが、余計なことはあまり聞かない方がいい。」
アレックスは無表情のままそう言って、部屋を出て行った。
「俺の顔・・・?」
***
(一体何なんだ。。。?でもどうやら俺の外見のおかげで助かったらしいな。。。)
リンジはベッドに寝転びながらボーッと天井を眺めていた。リンクスのメンバーは彼の顔を見てまず驚き、笑顔を見せたと思いきや落胆するのだ。
(俺って誰かにそっくりなのか? どいつもこいつも人の顔見て一喜一憂しやがって何なんだよ。。。)
彼らがリンジを見て誰を思いだしているのかが気になって仕方がない。気がつけば30分ほど天井の染みとにらめっこしていた。
すると突然ドアが開いたのでリンジは驚いて起き上がった。それはアッシュだった。
「わっ、あんたか。。。」
鍵をかけていなかったとは言え、ノックもせずに突然入ってきたアッシュにリンジは驚いた。アッシュは眼鏡をかけていたせいか、別人のように見えた。
「どこの学生かと思ったよ。。。」
アッシュはタブレットを手にしていた。ベッドに腰掛けて、タブレットをリンジに見せた。
「おまえに頼みたいことがある。このサイトを見ろ」
リンジに見せたのは、日本人フォトグラファーのwebサイトだった。
「シュンイチ・イベ アートオフィス。。。東京か。。。」
伊部俊一という日本人カメラマンの個人事務所のサイトで、彼の作品や展示会、最新情報などが紹介されている。
「このサイトで毎日更新される最新ニュースとブログの翻訳を頼みたい。俺は日本語が読めないからな」
このサイトは日本人向けに作られているので当然日本語で作成されている。アッシュ・リンクスがなぜこの日本人カメラマンのサイトについて知りたいのか。サイトに掲載されている30代であろう髭を生やした伊部俊一の写真をじーっと眺めているうちに、リンジはある項目に気がついた。
「ここを見ろよ。ここに英語の問い合わせフォームがあるじゃないか。知りたいことがあるのなら、ここから彼とコンタクトをとればいいんじゃないのか?」
問い合わせフォームを指差しながら、アッシュに尋ねたが彼は「わかっている」と答えた。
「。。。なんでしないの?」
わざわざ翻訳を頼む必要もないのではとリンジは疑問を感じたのだが、アッシュは首を振った。
「それは出来ないし、そうするつもりはない」
「。。。はぁ!?」
どう言う意味なのかリンジは理解できなかったが、アッシュはサイトからブログの一覧を表示させ、画面をスクロールして半年前の日付を指差した。
「この日から最新までの翻訳を頼む。」
「えぇと。。。1年以上前の記事を翻訳するのかよ。どれどれ。。。『新しいアシスタントを迎え入れました。スタッフがブログを更新します。』か。。。へぇークソ真面目なアシスタントなんだな。」
面倒くさそうにリンジは頭を掻きながら、指定された日付の記事をチラリと見た。
カメラマンの伊部が事務所にいる若いスタッフの後ろ姿を撮影した写真が掲載されていた。おそらく二十歳前後で、ラフなTシャツとジーンズを履いている。シャツにはバックプリントで日本で流行っているノリノリ君という鳥の模様がプリントされていた。
「ふーん、このお兄さんがサイトやブログの更新をしているのか。なぁ、あんたは一体何が知りたいんだよ?」
リンジの問いかけに、アッシュは一瞬戸惑った様子だったが、ポツリと「。。。全てだ」と答えた。
更にもう一つ、アッシュはリンジに仕事を依頼してきた。それは、「島根タイムス」というローカル地方新聞の翻訳だった。
NYにいるアッシュがなぜ島根県のローカル情報を知りたがるのだろうか。リンジは色々と聞きたかったが、アッシュにはその目的を語るつもりはないらしい。
「これ全部翻訳するのかよ?」
「いや、必要な項目を指定する。まずはタイトルだけでいい。気になるものがあればそれはまた後で依頼する」
そう言ってアッシュはリンジに画面をスクロールさせ、いくつかの項目を指差した。
「えーっとトップニュース、地域行事、スポーツ。。。。ハハハ、あんた島根に引っ越すつもりなのか?」
笑いながらリンジはタブレットの画面を下にスクロールさせると、アッシュは「ここ」とある項目を指差した。
「。。。事件・事故?」
「ここは記事全部を翻訳しろ。被害者の名前と年齢も忘れずにな」
厳しい目つきでアッシュは念を押すように言った。
「。。。あぁ」
(なんでそんなことを知りたがるんだ?)
「誰かこの地に知り合いでもいるのか?それとも人を探してるのか?ガールフレンドに逃げられちゃったとか?」
「余計な詮索をするな。追い出されたいのか?」
アッシュは先ほどより低い口調に変わった。リンジはぞくりとした。明らかに怒りのオーラが含まれていた。正直リンジは目の前にいるアッシュ・リンクスのことを舐めていた。全くストリートキッズのボスには見えなかったからかもしれない。少々冷やかしても大丈夫だと思ったのだが、気安にそんなことをすれば命は無いのだと初めて実感した。
「。。。わ、悪かったよ。やればいいんだろう?」
「他に気になったものがあればまた個別に翻訳依頼をする。指定されたアドレスにレポートを提出しろ。それがお前の仕事だ。ここでのルールや細かいことはリンクスの仲間に聞け」
「。。。わかった」
大人しくなったリンジに気づき、アッシュは彼の顔をじっと見た。リンジは初めてアッシュが自分を見た時の事を思い出した。
「。。。」
(あぁ、まただ。。。)
リンジの予想通り、アッシュは小さくため息をついた。そして無言のまま、苦々しい表情をしたまま部屋を出て行ってしまった。
言葉には出さなくても、リンジには何となくわかってしまった。アッシュが誰かを自分に重ねて見たことに。そして現実世界に絶望していることに。
「何なんだよ、あいつが探している奴って。。。」
*続*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!。ほんの小さな事でも良いから英二のことを知りたい健気なアッシュを書きたかったのです。。。(涙) よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
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