BANANAFISH二次小説 短編「君の面影を追って(2)」 | BANANAFISH DREAM

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らぶばなですほっこり。アッシュ生存設定です。アッシュと英二がそれぞれアメリカと日本で離れて暮らしています。最初は順調に連絡取り合っていたのですが、なぜか英二と連絡が途絶えて。。。続きをお楽しみ頂ければ幸いです。今回はオリジナルキャラが出てきます。


 

「君の面影を追って(2)」

 

 

アッシュは幸せな夢を見ていた。懐かしい親友が温かな瞳と笑顔を自分に向けて語りかけてくれているのだ。

 

たったそれだけで涙がでそうになるのを感じる。アッシュは彼の笑顔が好きだった。言葉ではうまく言い表せないが、兄のような家族のような彼はアッシュにとって世界で唯一信頼できる存在だ。

 

 

不思議なもので、英二と離れて暮らすようになってからアッシュは悪夢を見る回数が減った。そして穏やかでじんわりと心が温かくなるような夢を見るようになった。彼がくれたお守りを肌身離さず持っているからか、アッシュはまるで英二が悪夢から自分を守ってくれているのではないかと思うようになっていた。

 

 

【アーッシュ!もう何回めだ!いい加減に起きないとシャワーを頭からかけるぞ!】

 

 

決して自分を特別扱いせず、普通の人間として接してくれていた彼の声が聞こえてくる。

 

 

「あと5分待って。。。待って、オニイチャン。。。。」

 

アッシュは自分が寝ぼけているのかまだ夢を見ているのかよく分からない状態だったが、もぞもぞと動きながら英二の次の言葉を待った。

 

 

すると再び親友の声が聞こえてきた。先ほどより機嫌が良い。

 

 

【ほーら、アッシュ。座って。今朝は海老とアボカドのサラダを作ったよ。君の大好物だろう?さぁさぁ】

 

 

「あぁ、わかった、食うから。。。」

 

 

急かしてくる英二にアッシュはフォークに手を伸ばそうとしたが、掴んだ感覚はない。やはり現実ではなく夢を見ているのだと悟った途端、「ジリリリリ。。。!!」とけたたましい目覚ましアラームの音が響いた。

 

 

「。。。チッ」

 

 

苛立ちながらサイドテーブルに置いてあった携帯のアラームを消し、荒っぽくベッドの上に投げつけた。

 

わかってはいたものの、毎度夢だと分かるたびに落ち込んでしまう。カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しくて眉間に深い皺を寄せたながら、アッシュは枕元に置いてあるお守りをしばらく見つめていた。

 

 

「はぁ。。。やっぱり夢か。。。」

 

 

 

59丁目のアパートで彼と過ごした短くもアッシュにとって貴重な穏やかで優しい日々を思い出すたびに虚しくなってくる。

 

いまこの空間に英二がいない現実を思うとやはりため息がでてしまう。

 

 

(こんなに広かったっけ。。。?)

 

 

親友を守るために買った家のはずだが、いまその存在がアッシュ自身を苦しめている。だからと言って、もう2度と味わえないかもしれない貴重な思い出の詰まったこの空間を手放す気持ちにもなれなかった。

 

 

(あいつ。。。今どうしているんだろう。。。元気なのかな。。。)

 

 

しばらくアッシュは天井を眺めていたが、ようやくゆっくりと起き上がった。

 

 

 

***

 

 

 

英二と出会う以前、アッシュは部下達に命じて起こしてもらっていた。だが、最近では自分で起きるようになった。部下は部下でそのほうが安心することをよくわかっているのだが、英二に起こしてもらうことはアッシュにとって特別なことであり、再び誰かにお願いする気持ちにはなれなかった。

 

 

 

アッシュはキッチンで熱いコーヒーを作った。ここは英二との思い出が濃厚に詰まっている場所のひとつだ。テーブルに座ると、料理を担ってくれていた英二の後ろ姿を思い出してしまう。

 

 

 

アッシュが使っているマグカップは英二と一緒に買ったお揃いの片割れで、彼が好きな鳥のキャラクターが描かれている。もう片方は食器棚の奥にしまわれたままで随分長いこと使われていない。

 

 

部下が届けてくれた新聞をめくりながら、アッシュは冷蔵庫から昨日の食べかけのピザを口に放り込んだ。自炊することはほとんどないものの、デリや冷凍食品を利用するようになった。そのおかげで食事を抜くことは随分減った。

 

 

以前に比べてアッシュはずっと穏やかな日々を過ごしている。リンクスのボスで有る限り、危険はつきものだが今のところダウンタウンで大きな動きはない。アッシュは仲間達が動きやすいように慎重に頃合いを見てそろそろボスを引退してアレックスに引き継ぐつもりだ。

 

いくつか会社をすでに立ち上げており、ビジネスを通じて仲間にも仕事を受け持ってもらうつもりだ。罪深い自分にできることは自分のような悲しい過去を持つストリートキッズを救うことだ。

 

そしてその活動に集中している間は英二のことを思い出さずに済むのだ。決して忘れようとは思ったことはない。いつか彼と再会できたとしたら、少しはまともな人間になっておきたいと思っていた。

 

 

(いつか。。。なんて来るのだろうか。。。)

 

 

ふとキッチンの静けさが気になって、アッシュはテレビをつけた。英二のいない空間は静かだ。時々アッシュは虚しさを感じて、この気持ちをどうすれば良いのか分からなくなってしまう。

 

だが、かつて英二が自分に贈ってくれた手紙を思い出すと、不思議と心が穏やかになるのだ。たとえ会えなくても、彼が何をしているのか分からなくても。自分が英二を想う気持ちに代わりはない。

 

 

 

『。。。。先日、日本で起きた自然災害の影響で、多くの被害がでました。』

 

 

 

テレビから聞こえてきたニュースにアッシュは顔を上げた。こういうニュースを聞くたびに目が画面に釘付けになってしまう。オクムラやエイジという名前が出てこないかどうかをまず確認するのだ。

 

 

(英二と家族は無事なのだろうか。一体英二はどこにいて何をしているんだろうか。)

 

 

確率でいうとほんのわずかなのだが、アッシュは英二に何かあったのではないかと気になって仕方がないのだ。だが本人に確認することはできない。

 

 

英二にメールを送っても返事がなくなってから1年が経った。あれほど毎日頻繁に連絡を取り合っていたにも関わらず。はじめはスカイプや携帯に連絡してみたが、とにかく彼からの返信はなく繋がらないのだ。

 

 

多忙だった英二はSNSを一切更新していないし、アッシュ自身はもちろんリンクス達メンバーもSNSには手を出していない。たとえブライペートでも自分達の情報をネット上に挙げることは自殺行為だときつく伝えてる。

 

 

彼の身に何かあったのではないかと気が気でなかったが、アッシュの調べた限りでは 奥村英二という青年の死亡情報は確認できなかったこともあり、少しずつ落ち着きを取り戻すことができた。ふだんはあまり彼のことを考えないようにしている。

 

 

リンクスのメンバー達はボスを心配し、マックスや伊部に連絡をとるよう促したが、アッシュは首を縦に振らなかった。

 

 

「。。。これでいい。」

 

アッシュは静かにポツリとつぶやいた。まるで迷子になってしまったかのように遠い目をして言うボスを見た時、英二を知るボーンズやコングは、ボスがやせ我慢をしていること、けれども英二に迷惑をかけたくないし、彼を信用しているからこそ今は連絡を取らないのだと感じ取っていた。

 

もし彼らが英二を見つけることができれば、「何をやっているんだ!」と英二に詰め寄っただろう。不満はあったものの、ボスにそう言われて彼らはこれ以上口出しすることは出来なかった。

 

 

一部のリンクスのメンバーは、仲間うちでよく英二のことが話題にあがっていた。

 

「英二のやつ、あれだけボスにべったりひっついていたのに。。。帰国しちまったらどうでも良くなっちまったのか?」

 

「ひょっとしてボスと喧嘩別れでもしたのか? 言い争っているところなんて見たことないんだけどな」

 

「日本でオンナができたんじゃねぇの? そっちが忙しくて俺たちのことなんて忘れたのかもな」

 

色々な憶測をしながらも、決してボスの前では英二の名前を出さなかった。彼らなりに気をつかっているし、仮にそんなことをすればボスに半殺しにされるかもしれないと思っていたからだ。

 

 

英二と多少接したことのある部下達は彼のことをそこまで悪く言うものはいなかった。彼らは英二のことが嫌いではなく、むしろ出来るだけ長くボスと一緒にいてもらいたいとすら思っていた。自分たちといる時には見れないボスの人間らしい表情をたくさん見ることができた。

 

とにかく彼らはただ知りたかったのだ。危険な思いをしてまでボスとずっと一緒に戦ってきた英二がなぜ連絡してこないのかが。アッシュから信頼されているボーンズやコングなど幹部連中に英二の噂をしていたと知られるときっと怒られるとはわかっているが、やはり気になるものは気になった。

 

 

アッシュは決して英二の話題を自らは出さないが、英二のことや日本のことが気になるのは明らかだった。街ですれ違うアジア系の若者を見かけると、アッシュは自然と彼らを目を追っている。大抵は中国系の観光客だが、リンクス達も彼らを良く観察しているうちに、日本人とそのほかのアジア系人種を見分けられるようになってきた。

 

 

テレビのニュースで日本の話題が出ると必ずチェックしているし、そもそも部下が毎日アッシュ宅に届ける新聞はNYタイムズとジャパニーズタイムズなのだ。

 

 

以前と比べて覇気がなく寂しそうなボスをなんとか元気付けたいと子分達は考えていた。だがそれをできるのは奥村英二ただ一人なのだ。もどかしくはがゆい気持ちだった。

 

 

***

 

 

そんなある日、リンクスのメンバー達は自分たちの縄張りに偶然入り込んできた少年を助けた。

 

 

たちのわるい酔っ払いに絡まれ、殴りつけられた少年を見た時、彼らの怒りは沸点に達した。面倒なトラブルを起こすな、巻き込まれるなと常日頃ボスから言われていたが、きっと他のリンクスのメンバーも同じことをしていただろう。

 

「おい、大丈夫か。お前」

 

「。。。助かったよ」

 

泣きそうな表情のその少年を見た時、不良少年たちは自分の目を疑った。

 

「おい。。。こいつ。。。似てないか?」

 

「本当だ。。。あいつにそっくりじゃねぇか」

 

 

助けられた少年は不思議そうにジッとリンクス達を眺めていた。

 

 

大人しく控えめな印象で、健康的な肌色に大きな瞳。艶のある黒髪で見た目は15−16歳くらいだ。この少年は、かつてこの地にいたボスの親友を思い出させるのに十分な容姿だった。

 

メンバーの一人が少年に近づいて尋ねた。

 

「おい。。。お前、ひょっとして日本人か?」

 

「えっ? まぁ。。。日本人の血も混じってるけど。。。?」

 

 

少年の言葉を聞いて、リンクス達はなんとも言えない表情でお互いの目を見合わせた。

 

「なぁ、これってすげぇぞ!」

 

「あぁ、ボス。。。驚くだろうな」

 

 

そして少年に手を差し伸べた。ただ単に自分たちのボスを喜ばせたいという気持ちで。

 

 

「おまえ、俺たちのところにこいよ。会わせたい人がいる。きっと喜ぶぜ」

 

 

 

 

*続*

 

 

 

(あとがき)

お読みいただきありがとうございます爆笑。よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。

 

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もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM

 

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