らぶばなです。アッシュ生存設定です。アッシュと英二がそれぞれアメリカと日本で離れて暮らしています。アッシュって英二と離れたらどうなっちゃうんだろう?寂しがり屋さんですからね(英二の前では)後にオリジナルキャラが出てきます。お楽しみ頂ければ幸いです。
「君の面影を追って(1)」
ハロウィンの夜、NYのダウンタウンに住むありとあらゆる不良少年たちは ”ある情報” を聞きつけ、興奮しながら騒ぎたていた。
「おい、聞いたかよ? コニー・アイランドでオーサーとアッシュが今晩対決するってよ!!」
「マジか?行こうぜ!俺はオーサーが勝つと思うけどな。今、ほとんどのチームがあいつに吸収されているし」
「俺はアッシュだな。何と言ってもあいつは”白い悪魔”だぜ」
「最高に面白いショーが見れそうだ、早く俺らも見に行こうぜ!」
不良少年達は 錆びた線路の上で 実際の”ボス同士の戦い”を見た途端、言葉を失った。
掟に従い、ナイフのみを持ちお互いの命を奪い合おうとするアッシュとオーサーの気迫に圧倒されていた。
体をかすめる鋭利な刃。激しい攻防戦。死がすぐそばにある状況のもとで血を流しあい戦う二人。
恐ろしいほどその生命は輝いて見えた。
右肩と左の腹を負傷しながらもオーサーに勝利したアッシュ。
血を吹き出しながら地面に落ちていくオーサー。勝利宣言するアッシュにストリートキッズ達は大騒ぎ。大歓声のなか、満身創痍のアッシュは何かを叫んでいた。残念ながらほとんど歓声にかき消されてしまったが。その後彼は倒れ、警察に回収された。
混乱する現場で誰かが呟いた。
「ほらな、やっぱりアッシュ・リンクスは”悪魔”だった。」
***
それから年月が経ち、多くの血なまぐさい戦いと共にBANANAFISHに関する事件が”終了”した。
全てが終わり、ようやく晴れて自由になったアッシュは帰国する英二を見送るために空港へ向かう途中、ラオに刺されたものの奇跡的に助かった。日本に帰国してからその事実を知った英二はすぐにアメリカに戻ろうとしたが、現実はそう甘くはなかった。
彼自身の体調不良はもちろん、ビザの問題、大学の長期休学、さらには親の反対と父親の再入院に伴う金銭的な理由が重なった。
自業自得なのだが、問題があまりにも多すぎてすぐに出国できそうにもなかった。
心配のあまり、英二はアッシュにビデオチャットやメールで毎日何度も連絡を取っていた。
「オニイチャンは心配性だな。俺はこの通り大丈夫だ。。。お前も体を治せよ」
青白い顔で穏やかに微笑むアッシュを抱きしめたい気持ちをこらえながら、英二は励ましの言葉を送り続けた。
「僕は必ず君のところに戻ってくる。。。。信じていて、アッシュ」
「君がちゃんと食事しているか心配だよ。また君と一緒に和食を食べたいな」
「リハビリはどうだい?痛いところはあるかい?」
アッシュも英二と離れていまったことは寂しいが、遠く離れた日本から英二がこうして頻繁に連絡をくれることを心待ちにしていた。英二の言葉はいつもアッシュの孤独な心をじんわりと温めてくれる。だが本心は、英二自身の口から、アッシュの目の前で聞きたかった。だがそれを口にすることはできない。英二を苦しめるだけだから。
入院生活を送りながらも、アッシュは多忙だった。アレックスを通じてダウンタウンの現状と各グループとの関係を把握し、警察の動きやゴルツィネ亡きコルシカマフィアの動きに対しても非常に警戒していた。
幸いアッシュ・リンクスはすでに死んだことになっていたので、マックスやジェシカの協力を得ながら正体がばれずに過ごすことができた。アッシュはラオを銃殺したが、強盗にあった彼は「正当防衛」で身を守っただけだと見なされ、逮捕されることもなかった。そして集中治療室から個室に移され、退院の日も決まった。
「良かった。。。。あともう少しで退院だね。おめでとう。実は僕、リハビリを兼ねて毎日出雲大社にお参りしてお祈りしていたんだ。早くアッシュが退院できますようにって!」
モニターの向こうにいる英二は嬉しそうにニコニコ笑っている。
「心配かけたな、英二。」
「ねぇ、アッシュ。。。退院祝いに日本から何か送って欲しいものはあるかい?納豆でもいいよ!」
「うぇー、納豆はパス。そうだな。。。お前の妹がくれたっていうあの小さな”オマモリ”がいいな」
「お守り?あぁ、それなら出雲大社で手に入るね!分かった、すぐに送るよ!」
満面の笑顔になった英二につられてアッシュも微笑んだが、すぐに口をすぼめて拗ねたような表情に変わった。ずっとはぐらかされていたが、彼に確かめたいことがアッシュにはあった。
「それよりも英二、お前は最近どうなんだよ。。。ちっとも近況を教えてくれないじゃないか。ずーっと俺のことばかり聞いてきて」
英二は一瞬驚いたように目をハッと大きくさせ、一度視線を床に落とした後で不自然に微笑みを作ろうとしていた。明らかに返答に困っていた。
「僕のことはいいんだよ、それよりも君の話が聞きたいな。あー、早くNYに戻りたいなぁー」
「。。。。(またか。。。)」
アッシュはため息をついた。英二が抱える問題をすべて解決できるとは思えないが、アッシュは彼のためなら最大限の協力をするつもりだった。何なら政府のコンピューターにハッキングしてでも英二が出国できる手助けをしたかったし、金銭的な問題があるのなら援助するつもりだった。
だが英二は頑なに言おうとしなかった。おそらくアッシュを心配させたくないのと、彼が自分のために支援することがわかっていたからだろう。自分の問題だから自分で解決したいという気持ちが強いだろうが、それよりももし万が一アッシュが関わっていることが警察にバレたり、逮捕されるようなことがあったりしたら。。。という恐怖感があるのだと思う。
「オニイチャン。。。俺、首を長くして待ってるよ。オニイチャンがこっちに来てくれるのを」
優しい親友の考えることはもうすでにアッシュにはお見通しだった。自分が日本に行くことも考えたが、英二の周りの問題が解決しない限り英二は受け入れそうにない。だからアッシュは待つことにした。ずっと英二は自分を信じてアパートで一人、帰りを待っていてくれたように。
「うん!僕はいつでも君のことを想っているよ。」
「。。。。うわぁ、恥ずかしいこと言うねぇ、オニイチャン」
照れ隠しのために揶揄うような口調になってしまうが、英二にはすでにお見通しだろう。モニター越しとはいえ、アッシュは英二を直視できず、そっぽをむきながら素っ気なく一言だけかえした。
「。。。俺も」
***
アッシュが退院して数日後、アパートに英二からの荷物が届いた。
何でもないダンボールに日本の切手が貼り付けられていた。古い神社やお祭りの絵が描かれている伝統的なものが貼られている一方で、漫画のキャラクターらしい切手も貼られていた。おそらくアッシュに日本がどういうところかを知ってもらいたくて、英二はわざわざ切手で支払いをしたのだろう。
「。。。これは後でスクラップしておくか」
そして伝票に丁寧にかかれた英二の手書き文字を見た途端、英二が自分に書いてくれた手紙を思い出した。
「何だか久しぶりだな。。。」
アッシュは懐かしい気持ちで、もう一度あの手紙を後で読もうと思いながら、まるで子供のようにワクワクとする気持ちを抱きながら箱を開けた。かつて誕生日にグリフが自分にプレゼントをくれた時のような新鮮な気持ちだった。
箱の中には「退院おめでとう!」という英二のメッセージカードと共に、出雲大社で手に入れた緑色のお守りと絵葉書、日本のお菓子や文房具などが入っていた。
翌朝、アッシュはビデヲチャットを通じて英二にメッセージを送ると、英二からすぐに返事が届いたので通話をすることにした。
「英二、荷物届いたぜ。サンキュー。お前がくれたお守りのせいか、すごく体調もいい」
「そうか、それなら良かったよ」
「スシとテンプラの形をした消しゴムも入っていた。あれを見たコングがよだれ垂らしてたぜ?」
「あははは。相変わらず食いしん坊だなぁ。」
「ボーンズは”消せるペン”を見てマジックじゃねぇのか?って驚いてたぜ。俺のお気に入りは5色ペンだな」
「気に入ってくれたのなら嬉しいよ」
「あぁ、お前が送ってくれた日本のお菓子、あっという間にリンクスの連中に食われちまった。よっぽど気に入ったのか、また送ってくれって俺を見るたびにしつこく言ってきやがる」
「。。。。。ふふっ」
ほんの少しだけ、英二の反応が遅れた際にアッシュは気がついた。英二の頰ラインが随分シャープになっている。なんだか表情もボーッとしていて疲れているようだった。ふだんなら英二の変化にすぐ気がつくものの、日本からの荷物に舞い上がっていたのかもしれない。
「なぁ、英二。。。おまえ、なんだか顔色悪いぞ?ちゃんと食ってるのか?」
「えぇ、そう?ちょっと忙しかったからかなー」
「何かしているの?」
「うーん、バイト始めたくらいかな」
「何やってるの?」
「塾の英語講師と家庭教師。体が鈍りそうだから引っ越しのバイトとかも時々するよ」
「。。。。え?」
英二の言葉にアッシュは一瞬どう答えてよいのかわからなかった。英二のことだから”時々”だなんてありえない。
おそらく日中は大学に通い、夜は講師として遅くまで働いている。さらに休日は肉体労働をしているのだ。きっとまともに眠っていないのだろう。目の下にはクマができていた。
「おいおい、張り切りすぎじゃないのか?おまえ、まだ大学辞めてないんだよな?」
「それはちょっと色々あって、まだ考え中なんだ」
ちっとも頼ろうとしてこない英二にアッシュはやきもきしそうだった。だが、ここで怒っても仕方がない。
「あ、心配しないで。僕は大丈夫。そんなヤワじゃないよ。君も知っているだろう?」
「そうだけど。。。」
「じゃぁ、君にはその頭脳を使って、どんどん稼いでもらわないと!」
「任せておけ、得意分野だ。」
ニヤリと笑うと英二はようやくいつもの笑顔を見せてくれた。
「ふふっ。頼もしいね」
「英二。。。。俺は。。。いや、何でもない」
言いかけた言葉をアッシュは飲み込んだ。だが、英二は彼が言いたかった言葉の続きを代わりに言ってくれた。
「アッシュ。。。。僕は君に会いたいよ。。。。早く」
「。。。。。。」
「もう少しのしんぼうだ! 僕たちはどれだけ離れていても友達なんだから!」
「あぁ、そうだな。。。」
こうして連絡を取り合うだけでもありがたいことだった。ラオに刺されたあの時、もしもアッシュが死んでいたら英二は一体どうなっていたのだろう。アッシュはそのことを考えただけでも恐ろしかった。
こうして退院後もふたりは毎日連絡入っていたが、どういうわけかその感覚は3日、5日、7日、1ヶ月。。。と伸びてきた。忙しいのだろうとアッシュは理解していたが、英二の声が聞けない日は心が虚しくてやる気がおきなかった。
だが英二が約束してくれた「またNYに戻ってくるから待っていてほしい」という言葉と彼がくれたお守りがアッシュを支えてくれていた。アッシュも暇人ではない、目の前には片付けなければならない問題や調べたいものが山ほどあった。
できるだけふだんは英二のことを考えないように努力をし、時々お守りにキスをして肌身離さず持っていた。
そしてとうとう英二と連絡が取れなくなって1年が経った。
*続*
(あとがき)
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