らぶばなです。14歳のアッシュがもし可愛い黒猫(黒猫英二)と出会っていたら。。。というif設定です。時代設定や内容が原作とかなり異なりますが、ご了承ください。お楽しみ頂ければ幸いです。!
「黒猫と14歳のアッシュの出会い(10)」
第十章:君の悲しみ
路地裏をさまよっていた黒猫英二は結局ネズミを取り逃がしてしまった。
(はぁ。。どうしよう)
とぼとぼと歩いていると、前方から茶色の大きな猫が歩いてくるのが見えた。
黒猫英二よりかなり大きなその猫は、動画短く、肩や腰幅は広くガッシリとしていて、尻尾は短く足先に丸みがあった。
体にはいくつもの傷跡があるので、この界隈で逞しく生き抜いている立派な野良猫だ。
「みゃ!?」
(あ、猫だ!他の猫に会うのは初めてだよな。。いまの僕なら猫同士で会話できるのかも!)
黒猫英二は頭と首をできるだけ伸ばし、嬉しそうに手を振る。
「にゃにゃ!」
(こんにちは!)
自宅にはペットはいないが、猫を飼っている英二の友人が、猫はお互いの体の匂いをかぎあうと言っていたことを思い出し、鼻をクンクンさせながら野良猫がやってくるのを待った。
茶色の野良猫は、一瞬黒猫英二を睨みつけたが、なぜか視線をそらして通り過ぎてしまった。
(あれ?どうして?)
しばらくいくと、今度は白い雌猫が歩いてきた。先ほどの野良猫とは違って骨格が細く、すらりとしたタイプだ。彼女も一瞬顔を強張らせたが、またしても黒猫英二を無視するかのように視線をそらしてしまう。
「にゃー!」
(どうして無視するの?)
思わず黒猫英二が声をかけると、雌猫は視線をそらせたままため息をつくように答えた。
「ミャオウ」
(あんたみたいな子猫相手に成猫が喧嘩するわけないでしょ!さっさと出てお行き!)
そして雌猫はスタスタと行ってしまった。
「ニィ。。。フニァー!!」
(子猫?僕、もう高校生だよっ!。。。猫の世界でも僕は童顔なのか?)
毛を逆立てて怒る黒猫英二だが、周りにはもう誰もいない。改めてため息が出てきた。
路地にはビリビリに引き裂かれた紙や空き缶が転がり、壁にはペンキで描かれた大量の落書き。荒れて壊れた車の中にはホームレスが眠っている。なんともおっかなくて寂しい場所だった。
不安な気持ちを抱えながら歩くと、ふと誰かが立ちすくんでいるのが見えた。ジーンズにシャツ、赤いスニーカー。頭にはパーカーのフードを被っている。
(あれは。。。アッシュ! どうしてこんなところに? ひょっとして僕を探してくれたのか?)
飛び上がるほど嬉しい気持ちを抑えながら、黒猫英二はアッシュに向かって駆け出そうとしたがすぐに立ち止まった。
後ろ姿しか見えないが、アッシュは右手にバラとかすみ草のミニブーケを持っていた。だがその腕が小刻みに震えていた。
彼はそのブーケをそっと道端に置き、そのまましゃがみこんだままじっとしていた。
(アッシュ。。!? 一体何をしているの?)
彼の様子がおかしいことに気づいた黒猫英二は慎重にゆっくりと彼に近づいていく。アッシュは体を震わせ、両腕で自分の体を抱きしめている。その姿はまるで何かに耐えるようだ。
「ニー。。。?」
(アッシュ。。。?)
黒猫英二の鳴き声でアッシュは振り返った。彼の瞳からは涙が溢れていたが、黒猫英二を見ると驚きやら呆れやら安堵やら、様々な複雑な感情が沸いてきてすぐに涙は止まった。
「おまえ。。。こんな所にいたのかよ。。。」
「ニャニャ!」
(やっと会えたね!会いたかったよ!)
膝に乗り上がった黒猫英二はアッシュに飛びついた。
「うぉっ!」
その勢いに圧倒されながらも、アッシュは黒猫英二の背中を撫でる。
「おまえ、突然いなくなりやがって。。。!スキップが心配してたぞ。それにショーターも、おまえの飼い主を探してくれたんだぜ?」
これまでの経過を説明してくれるが、生憎英語のリスニング力がないのでほとんど理解できない。だがそれでもアッシュが自分のことを心配してくれていたことはなんとなく理解できた。
「ニィー。。。」
(悪いことしたなぁ。。。本当は僕、君のそばにいたかったんだけどね。猫の本能には逆らえなくて。。。)
黒猫英二はアッシュがシャツで涙を拭っているのに気がついた。
「。。。。。。」
(僕に気づく前から泣いてたよね。。。何があったんだろう?)
彼に問いかけることもできない黒猫英二は、どうしてよいかわからずただ自分の体をアッシュにスリスリと擦り付けることしかできない。
アッシュは嫌がることもなく、黒猫英二の動きをじっと見ていた。
「おまえ。。。俺を慰めているつもりなのか?かっこ悪いところ見せちまったからな。。。」
抱き上げて、黒猫英二の瞳をじっと見つめた。黒猫英二はアッシュの頰をペロッと舐めた。
「くすぐってぇ!あはは。。。おまえって変な猫だな。あの子が生きてたらおまえを見たら離さないだろうな。。。」
「ウニャ?」
(あの子って。。。?)
「俺は何も出来なかった。守れなかった。。。ここであの子が殺されたって後から知った。。。俺の彼女だと勘違いされて。。。」
すうっと涙がアッシュの頬をつたうのを見た黒猫英二はその涙を舐めた。
「不思議な猫だな。。。まるで人の気持ちがわかるみたいだ。。。だからスキップもグリフもお前に心を許すのかもしれないな」
アッシュは黒猫英二の小さな頭を自分のおでこにピタッとくっつけた。それからゆっくりと離し、胸元に英二を抱き寄せた。
しばらくの間、彼らはそこで佇んでいた。
*続*
(あとがき)
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