らぶばなです。14歳のアッシュがもし可愛い黒猫と出会っていたら。。。今回は黒猫ちゃんについてです。お楽しみ頂ければ幸いです。!
「黒猫と14歳のアッシュの出会い(3)」
第三章:消えた記憶
空中でふわりと一瞬体が浮かぶのを感じ、英二は思わず笑みがこぼれた。マットに体が沈んだ後、彼はガッツポーズを決めた。
「よしっ!」
見届けていた先輩と友人たちが集まって来た。
「奥村!すげーな!」
「また記録更新したぜ?次の西日本大会で優勝できるんじゃないのか?」
英二は「えへへ」とはにかんだ。
奥村英二、16歳。島根県出雲市に住む高校生一年生で、彼は陸上部に所属している。
一見どこにでもいるごく普通の高校生だが、彼が得意とするは棒高跳びだ。地元ではそこそこ有名で、山陰地方で彼に敵うものはいない。近く行われる西日本を代表する試合で、優勝を期待されている。
順調に成績を伸ばす英二だがこのところ、彼はある事に悩まされていた。
熟睡できず、何度も同じ夢を見てしまうのだ。
そしてそれは夢とは思えないほど現実感があった。たとえば風で揺れる木々のざわめきや、乾いた土の匂いなどを五感で感じることができるのだ。それほどリアリティがあるにも関わらず、夢を見たことは覚えているのだが、目が覚めると自分がどんな夢をみていたのかほとんど覚えていない。
残っているのは、以前もここに来たことがあるという感覚だけ。微かに覚えているのは黄金色に輝く光のみ。
(また夢を見たのか。。。僕、変な病気なのかな。。。? 大きな試合前で緊張しているとか。。。?)
誰かに相談するにしても、夢の内容を覚えていないのでしようがない。そのうち見なくなるだろうと楽観視して、今夜もまた同じ夢を見るのだ。
今夜も夢の中で英二は思い切り走っていた。樹林で囲まれた敷地の中に西洋風の立派な建物があった。非常に丁寧に手入れされた庭は、花壇や並木、通路、噴水が左右対称に配置されていた。
(うひゃぁ、早い!気持ち良い!)
風を全身に浴び、爽快感が体を突き抜ける。なぜか視界がかなり低いのと、やたら土や草花の匂いを強く感じるのが気になったが、彼は走る事をやめなかった。どういうわけか、体が勝手に動きだすのだ。
だが、突然頰のあたりにビリッと電気のようなものが走り、違和感を感じた。すぐ動きを止め、英二は用心深く周りを見渡しながら、近くにあった美しく刈り込まれた低木の植え込みに身を潜めた。
(僕の体が勝手に危険を察した。。。?)
戸惑いながらも、英二は頭を下げて注意深く様子をうかがった。すぐ近くを黒づくめのスーツを着た人相の悪い外国人の男が通り過ぎる。その男に見覚えは無いが、もしもの時はすぐに走り出せるように腰を低くしておく。
「チッ、ここも荒らしやがったか。。。クソ!見つけたらぶっ殺してやる」
なぜか非常に苛立っている。男の話す言葉は馴染みがなく、英二には理解できなかった。
(スッゲー怖そうだな。。。何言ったんだろ? 英語っぽかったけど。。。。)
男のスラングが英二には聞き取れなかった。その男は舌打ちをし、近くに倒れていたた白い彫像と鉢植えを元に戻した。そして腕時計を見てため息をついた。
「あぁ、もうこんな時間だ。。。今度はガキの方かよ。。。チッ、どこにいやがるんだ?」
ブツブツと文句を言いながら、その男はその場を離れた。英二は安堵のため息をついた。
(ふー、なんだあいつ、やばそうだったな。。。)
英二はキョロキョロと周りを見渡したが誰もいなかった。再び体が反応するままに進んでいく。
(一体僕はどこへ向かっているんだろう。。。でも行かなくちゃいけない気がする。。。。!)
前方に誰かが寝そべっているのが見えた。サワサワと心地よい風が吹き、その人物の髪が揺れた。黄金に輝く柔らかいブロンドを見た時、英二の耳がピクピクと反応した。
(僕は。。。彼を知っている!彼だ!)
英二は彼に近づいて声をかけた。
「。。。みゃお!」
本人は「こんにちは」と声を出したつもりだったが、なぜか猫のような声が喉からでた。
(あれ? どうなってるんの?)
不思議に思い、口を触ろうとして長い毛のようなものにが手に触れた。両ほほに数本ずつあり、それはピンと立っていた。
(これって。。。髭?)
喉に触れると毛だらけの感覚に驚く。夢中で気づいていなかったが、自分の手を見ると真っ黒な毛に覆われていた。そしてピンク色の肉球を見た時、英二はようやく自分の姿に気がついた。
(僕。。。黒い猫になっている。。。?)
芝生の上で眠っていた少年は、完全に寝ていたわけではなく、とっくに英二の存在に気づいたようで、ゆっくりと目を開いた。ピンピンと耳を立てながら少年の瞳を覗き込み、英二は驚いた。
(うわぁ。。。綺麗な瞳!グリーンだ!)
外国人の少年は英二を見て柔らかく微笑んだ。
「またおまえか。。。よく飽きずに来るな。。。ほら、今日はパンをくすねてきたぜ、食うか?」
残念ながら彼の言葉が英二には理解できない。言語は英語だとわかっただけで、ネイティブスピーカーの速さに付いていけない。
「おまえ、遊んで欲しいのか?ヒゲとしっぽが立ってるぞ?」
英二の尻尾を撫でながら、その少年はパンを差し出そうとしたが、遠くから男の声がした。
「おいー、アッシュ! いるのか?」
男がこちらに近づいてくる音がする。英二は先ほどすれ違った男だとすぐにわかった。彼の耳が後ろに引いた。
「チッ。。。おまえはその辺りに隠れてろ」
先ほどまでの柔らかい表情から一転して、少年は厳しい目つきに変わった。
英二は慌てて茂みに隠れた。
先ほどのスーツの男はアッシュを見つけ、舌打ちをした。
「なんだ、いるならさっさと返事しろ」
寝そべったまま、不機嫌そうにアッシュは答えた。
「。。。なんだよ、昼寝のじゃまするな」
男は再度舌打ちをする。
「パパ・ディノがお呼びだ。新しい数学教師が来たから紹介したいと」
「。。。ふぅん」
興味なさそうにアッシュは答えた。男は苛立ちながらも時計を確認した。時間が気になるようだ。
「いいか? 必ず10分以内に客間へ行くんだ」
要件はそれで終わりと男は少年に背を向けようとしたが、ふと振り返って少年に尋ねた。
「お前、この辺りで野良猫を見なかったか?」
「。。。野良猫だ? それは俺のことか?」
男は皮肉っぽい笑みを浮かべた。どこか人を馬鹿にしたような冷たい笑いだった。
「ハッ、面白いジョークだな。。。だがお前の飼い主は野良猫のお前を血統書付きの猫にしようとご執着らしい」
男の言葉に少年は興味を抱かない。男はタバコを取り出した。
「探しているのは本物の野良猫だ。最近庭を荒らす猫がいるらしい。見つけたら処分するようパパに言われている、おまえも協力しろ。だが今はとにかくパパのところへ行け。わかったな?アッシュ!」
男は偉そうに言いつけて、その場を去って行った。そしてその男が言った「アッシュ」という言葉に英二はビクッと反応した。
(そうだ、アッシュだ!この子はアッシュと言うんだった!)
英二の中で、前回見た夢の中の記憶が蘇り、今目の前の現状とつながっていった。
*続*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!黒猫の正体は16歳の英二でした!夢の中だけでつながるというファンタジー(笑)英語力がないのでコミュニケーションが取れない上、起きると夢の記憶がなくなっているという(あれ?どこかのアニメ映画みたい。。。笑) よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
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