らぶばなです。みなさんこんばんは!バレンタインはどう過ごされますか?私は甘いもの食べないので作りはしませんが、売り場とかみていると楽しそうだなーと思ってしまいます。そこで、急遽バレンタインの短編小説を書いてみました。荒っぽい文章でごめんなさいね。夜中にほんの数時間で書いたので なんとなくアッシュと英二のバレンタイン・イラストのイメージから創作してみました。それと英二がテンション高めです(笑) みなさん、ハッピー・バレンタイン!
バレンタイン・パーティー
”I love you” と書かれたハートのバルーンをふくらませながらアレックスはため息をついた。
「はぁ〜っ」
(あぁ、一体俺は何をしているんだ?)
彼の周辺にはピンク、レッド、シルバーのバルーンがフワフワと浮いている。
視線を落とすと、これから彼が空気を入れなければならない未開封の風船が入ったパッケージが大量に置いてある。
自分はNYのダウンタウンを拠点とするストリートキッズのグループ「リンクス」ナンバー2だ。何が悲しくてこんなことをしなければならないのだろうか。
もう一度深いため息をアレックスは吐いた。
「ほらほら、まだ風船の数が足りないよ?こんなものじゃぁ、アッシュを驚かすことなんて出来ないよ。頼りにしているんだからよろしくね、アレックス!」
いやに鼻息の荒い英二がアレックスの背中をポンと軽く叩き、気合いを入れてきた。さりげなくバドワイザーを渡した後、英二は立ち上がって部屋の飾り付けをしている。ずっと彼は休みなく手を動かしてパーティーの準備にとりかかっていた。
ばかばかしいと思いながらも、ボスを驚かそうと一生懸命な英二を見ていると手助けしてやりたくなる。アレックスは再び作業に取り掛かった。
前日、アレックスはボスであるアッシュから直接”命令”を受けていた。
溜まり場のバーに呼び出されたアレックスは、余程面倒なゴタゴタが起きたのかと慌てて駆けつけた。何事かと思いきや、アッシュが命じたのは「英二主催パーティーの手伝いをしろ」とのこと。
「パーティーですか。。。?一体なんの?」
すぐに理解できなかったアレックスが尋ねると、アッシュは一瞬戸惑いの表情を浮かべたがすぐにいつもどおりの冷静なボスの表情で言う。
「バレンタイン・パーティーだそうだ」
「えっ!?」
ボスが言うには、スーパーで盛大にバレンタインの関連商品が売られていることに感激した英二が「男だけのバレンタインパーティーをしたい」と言い出したらしい。色とりどりのチョコ、風船、カードを見て突然英二のテンションが上がったとのちにボーンズとコングが説明してくれた。
アメリカと日本とではバレンタイン事情が随分異なるそうで、日本では「女性から男性にチョコを渡して告白する」という独特の習慣があることをアレックスは初めて知った。そして友人や家族、同僚などにも日頃の感謝の気持ちを込めて義理チョコというのを渡すらしい。
こちらでは恋人同士が愛を確かめ合うイベントだ。
「へぇ。。。随分違うんだな。まぁこっちでも家族や夫婦などはプレゼント贈るのもありだと思うけど。。。そもそもなんでパーティーなんだ? それに日本でも男は何もしないんだろう?まして男から男にって。。。変じゃないか?」
色々な疑問が頭をよぎり、思わずボスに聞いてしまった。
「変?そんなの今更だろう」
ふっとアッシュは笑ったあと、アレックスから視線をはずし、少し遠くを見て言う。
「ホームシックになったのかもな。毎年この時期には誰かに祝ってもらっていたんだろう。。。それにあいつはいま自由に身動きとれないからな。何か理由をつけて騒ぎたいだけなのさ」
「。。。。。。」
身の安全の為に、不自由な思いをさせている事への罪悪感だろうか。変に縛り付けて外に飛び出されるよりも家の中で発散できるのならそれに越したことはないと思っているようだった。
他人を気遣うボスを見るのは珍しい。アレックスはアッシュがなんらかの理由があって英二と行動を共にしていることは分かっていたが、深い事情までは知らなかった。ボスが明らかに他のやつとは異なる態度を英二に取っているところから、友人というポジションとはまた違う特別な立ち位置で彼を扱っている気がしていた。
「オーケー、ボス」
アレックスは頷いた。アッシュは酒の入ったグラスを手に取って一口飲んだあと、わずかに口角を上げた。
「お前にとっても、気分転換になるんじゃないか?」
その言葉にアレックスは咳き込んだ。
「ゴホッ、ゴホッ。。。」
(あぁ、ボスにはバレてたか)
バレンタインの直前に、アレックスは付き合っていたガールフレンドと別れてしまったのだ。傷心の彼にアッシュは気づいていたのだ。
「俺は用事があって手伝うことはできない。パーティーに参加できるか微妙だが。。。行かないと英二が怒るだろうな」
ボスが常に忙しくしているのは良くアレックスも理解していた。大変な中、どこか楽しそうな口調で「何とか都合をつけるつもりだ」とアッシュは言った。
***
英二はアレックスやコング、ボーンズを呼んで、アレックスには風船づくりと部屋の飾り付け、コングには買い出しを頼んで、ボーンズと一緒に料理をしている。
台所からは英二の口笛が聞こえてくる。きっと手の込んだ料理を作っているのだろう。時折ボーンズとの笑い声を交えながら上機嫌で準備をしている。
家にこもりがちで退屈だという英二に同情したリンクスのメンバーたちは、このパーティーに付き合うことにした。
「おまえ、日本では女の子に告白されたのかよ?」
ボーンズがニヤニヤしながら聞いた。
「え!そんなの。。。内緒だよ!」
なぜか顔を真っ赤にして英二は答えようとしない。
「いいじゃないかよーおしえろよー」
「と、ところでさ!アッシュは誰かにバレンタインを祝ったりするのかな?」
「ボス?祝ってもらいたい女は山のようにいるけどなー。どうだろう?あんまりそんな話しないし。。。いい寄る連中が多すぎてウザいと思ってるのかも」
「ウザい?なんて贅沢な!」
「でもよ、時々スパイみたいな奴がいるんだよ。オーサーの息のかかった女が近づいてきたこともあるんだぜ?すげー美人だったけど。。。でもボスはスゲー勘がいいからすぐに気づいて追っぱらったぜ」
「え。。。そんな事もあったの?」
(そんな事あったら、人を信頼しづらくなるよな。。。)
英二は少なからずショックを受けた。
「アッシュ、参加してくれるかな。。。」
「きっとくるんじゃねぇか?なんだかんだ言って、ボスはおまえに甘いからな」
「そ、そうかな?でもせっかく用意したからね、うまくいくといいなぁ」
その時、部屋のインターホンが鳴った。
「あ!アッシュだ!ボーンズ、頼むね!」
バタバタと英二は足音を立ててアッシュを出迎えにいった。
***
腕時計の針は19時を指していた。
(よかった。これならあいつも文句言わないだろう)
予定よりもかなり早く帰ってこれたことにアッシュは安堵した。
ドアが開き、アッシュは家に入る。「早かったね、アッシュ!」と満面の笑みで迎える英二を期待していたが、彼の目の前にはカラフルな大量の風船が風と共に飛んできた。
「 ハッピーバレンタイン!」
英二が叫ぶも、嵐のような風音が想像しくてはっきりと聞こえない。更に赤やピンクのハートのバルーンが激しく飛び交い視界が何とも悪い。
「何だこの風は。。。!? 寒い!このバカでかい風船もウザいぞ!俺の顔めがけてやってきやがる!」
手を振ってバルーンを叩き落とそうとするも、すぐに他のものが目の前にやってくる。
しばらくそういているうちに、ようやく風は止んだ。あちこちにエアファンが取り付けられていたことにようやく気がついた。頭にかぶっていたブラウンの帽子は床に落ち、すっかりボサボサになったプラチナブロンドの髪を見て、英二がケタケタと笑う。
「あははは!何その顔。。。。おかえり、アッシュ!それからサプラーイズ!」
「お、ま、え。。。!」
バカバカしくてアッシュは怒りに震えるも、英二に本気で怒ったりはしない。その代わり、英二のこめかみに拳をあててグリグリと押さえつけた。
「ただいま英二!」
「アイタタタタ!あぁ、ごめんよ調子にのって。。。」
両手をばたつかせて英二は謝った。すぐにアッシュは英二を解放して、着崩れた服を直した。
「早く帰ってきてくれて嬉しいよ。今日は僕のわがままに付き合ってくれてありがとう」
大きな澄んだ瞳で微笑まれると、アッシュは喉に何かが詰まったかのようなもどかしさを感じてしまう。
遠い昔に忘れてしまった大事なものを英二の中に見てしまうのだ。
「別に。たまたまだよ」
そっけなく言って、アッシュは英二の頭をお返しと言わんばかりにぐしゃぐしゃに手で撫でてリビングへと向かった。
***
英二の手料理を食べながらリンクスたちは上機嫌で酒を飲んでいた。
「男からお祝いされるバレンタインなんてはじめてだ」
誰かがそう言って笑うと、英二は頰を膨らませた。
「別に細かいことはいいじゃないか。恋人だけじゃなくて、家族にチョコやプレゼントを渡すこともあるんだろう?」
「うーん、子供にとかじゃないかな?」
「僕は君たちより年上だよ?」
「おまえに言われてもなぁ。。。実感ない!」
からかわれた英二はますますリスのように頬を膨らませた。
「ちょっと君たち。。。あ、そうだ!」
突然何かを思い出した英二はごそごそと大きなダンボール箱を引っ張ってきて皆の前で披露する。
「これこれ!日本から取り寄せたんだぜ?君たちにも日本のバレンタインを味わってもらおうと思ってさ」
英二は嬉しそうにそれぞれチョコの入った箱を渡していった。
「やった!日本のチョコって美味いって聞いたぜ」
「どれどれ。。。」
リンクスたちはバリバリと目の前で包装紙を破きはじめた。
アレックスはシルバーの缶を開け、不思議そうに首を傾げている。
「英二。。。?なぜ俺にスパナとペンチを贈るんだ?車の修理でもしろと。。。?」
「それ、チョコで出来ているんだよ!車好きの君にぴったりだと思って!」
「チョコレートなのか、これ?」
精巧な作りの工具型チョコの匂いを嗅いでアレックスはようやく納得した。
「すっげーな。食うのもったいねー」
関心しているアレックスの次に、コングが戸惑いながら英二に小瓶を見せてきた。
「英二、なぜ俺には小石なんだ?」
小瓶の中にはカラフルな小石が詰まっていた。
「コング、これも石じゃなくてチョコなんだよ?スッゲー綺麗だろう?」
「本当か?」
疑問を感じながらも恐る恐る口に小石チョコを入れたコングは その美味しさにニッコリと微笑んだ。
「うめーな、この石!日本じゃ石を食うのか!」
「だからチョコだって!話聞いてないだろう!」
そして、箱を開けたボーンズが「ギャッ!」と叫んで床にぺたりと尻餅をつけた。
「こ、これ。。。!虫じゃねぇか!」
ツヤツヤしたカブトムシと白い幼虫が箱に入っていた。
「ボーンズ、これもチョコだよ。ちゃんと食べれるんだからね」
「本当か? すげー!食う前にこれで他の連中を脅かしてやろうっと!」
「あはは、喧嘩しないよう気をつけてよ」
それぞれの反応に英二は気をよくして上機嫌になった。
アッシュは複雑な気持ちで部下をみていた。
(この流れ。。。あいつ、一体俺になにを渡すつもりだ?)
英二との関係を思えば、他の連中よりも多少は贔屓されてもおかしくないとアッシュは期待していた。だが、箱を開けたアッシュは虚しく首を垂れた。
「ボス?」
「英二。。。なぜ俺には魚なんだ?」
「スッゲーリアルだろ?これは焼き秋刀魚チョコだぜ?やっぱり山猫には魚だと思って!」
英二は日本で知られているという、魚を口に咥えた猫の歌を日本語で歌い始めた。
(やっぱり英二は英二か。。。)
どこまでも天然で天真爛漫な英二に、アッシュはため息をついた。
***
アッシュは用事があると言って出かけてしまった。
「あとで戻る」
そう言い残して。
傷心のアレックスに付き合わされてさっさと酔いつぶれたリンクス達はリビングでそれぞれソファ、絨毯の上で寝転がっていた。
英二は風邪をひかないようそれぞれに毛布をかけてやった。
玄関の開く音がした。サプライズを警戒したアッシュが鍵で開けたようだ。
「おかえり!」
出迎えた英二にアッシュは「これ」と言ってバラのブーケを渡した。
「俺からのプレゼント」
「え。。。僕に?」
嬉しそうに英二は微笑んだ。
「花束だなんてもらうのいつ以来だろう?スッゲー綺麗だね。でもいいのかい?」
「なにが?」
「だって、本当は女の子にあげようとしたんじゃないの?」
「は?」
「だって、こっちでは恋人にあげるもんなんだろう?」
「寂しそうなオニイチャンにあげたくて買ったの!いつも世話になってるしな。。。バレンタインパーティー、楽しかったぜ」
「あはは、なんだか照れるな」
英二はそういって、台所で花を一度置き、小箱を持って来た。
「今度は何チョコ? 納豆の形したやつ?」
「ちがうよ。これは僕からのささやかなプレゼント。さっきはみんなの手間、既製品のチョコを渡したけど。。。本当は手作りチョコを渡したかったんだ。。。」
「手作り?」
意外な言葉に驚きながらもアッシュは受け取り、丁寧に包装を開いた。
まず見えたのが、英二が好きな鳥のキャラクターの携帯ケースだった。
「これ、僕とお揃いだよ!」
「。。。。。。」
(そういえば英二はこの鳥キャラのファンだった。。。)
ニコニコ笑う英二に苦笑しながら、アッシュはチョコの包みを開いた。
「あのー、初めて作ったからイマイチ綺麗な形にならなくてさ。。。うまく解けないし」
自信なさそうに英二が言い訳を始めた。
手作りだとわかる不恰好な形のチョコだが、その歪な形が何とも不器用なくせに張り切る英二そのものを表しているようで アッシュはくすぐったい気持ちになる。
「ほんとう、すっげーブサイクな形」
「な、なんだよ!分かっているよ。自分でも。捨てようかと思ったけどせっかく作ったから」
「捨てる必要なんてない。俺はこのいびつな形のチョコがいいのさ」
そう言ってアッシュは優雅な動きでチョコを口に放り込んだ。
目を閉じてゆっくり咀嚼して味わうアッシュを見るのがなぜか恥ずかしくて、英二は目をそらした。
「うん、甘い。すっげー硬いところと柔らかいところがあるけど」
「。。。。。無理して食べなくてもいいよ。僕が責任持って食べるよ」
慌てて回収しようとする英二の手をわざとらしく振りほどいてアッシュがニヤリと笑う。
「これは俺のチョコ。残りはゆっくり味わうから」
「。。。。。本当?」
嬉しそうに微笑む英二を見て、アッシュも満足そうに微笑んだ。
「コーヒーいれようか? みんなもう寝ちゃったんだ。寝室でDVDでも見ようよ」
「そうだな、あまーい恋愛映画でも見るか?」
「何言ってるんだよ、ホラー映画かアクション系がいいなぁ。あ、アニメでもいいけど」
「。。。ガキ」
小さな声でアッシュは囁いた。
「何か言った?」
「いいや、残りのチョコを堪能させてもらいます」
「あはは、じゃぁコーヒー持ってくるね」
英二は笑いながら台所へと行った。
(しめしめ、気づいていないな。。。)
かぼちゃペーストを混ぜ込んだチョコレートを英二は手作りしていたが、アッシュは気がついていないようだった。
(コーヒーと一緒に、花瓶に入れたバラのブーケも寝室に持って行って飾ろう)
二人のバレンタインの夜はこれから。いつかぼちゃを混ぜたことをアッシュに話そうかと英二は一人ほくそ笑みながらコーヒーを入れるためのお湯を沸かし始めた。
*終*
(あとがき)
お読みいただきありがとうございます!日本のチョコ、面白いのが結構ありますよね。バルーンに関しては、昨日子供とプレイルームで大量の風船飛んでいる部屋の中で遊んだので(四方に扇風機が設置されてました)それをアッシュにも味わってもらいたくて。。。(笑)よければ小説へのご感想、リクエスト等お聞かせくださいね。
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