『BANANAFISH』アッシュ・リンクスお誕生日創作SS 2018(後編) | BANANAFISH DREAM

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らぶばなですニコ 。アッシュのお誕生日SS後編です爆  笑。前編はこちらですラブラブ よければお付き合いください!インデックスは短編小説に入れています。

 

 〜君へのプレゼント〜(後編)

 

「ただいま」

 

ようやくアッシュがアパートに帰ってきた。時刻は22時を回っていた。

 

けだるさが全身を覆うのを感じていた。

 

(さすがに疲れたな。。。)

 

正直言って今日はハードな1日だった。ディノとバナナフィッシュをつなぐ関係機関を徹底的に調べ、そこで働く従業員と接触をし、得た情報を基にマックスと今後の打ち合わせを行い、仲間たちに指示を与えたり他グループとのいざこざが起きていないか確認したりしていた。

 

今すぐベッドに倒れこみ、眠ってしまいたいほどの疲労を感じながらも、ドアを開ける時は少し心が軽くなる自分がいた。それは自分をいつもあたたかく迎えてくれる親友の笑顔を期待していたからだ。

 

どれほど心が折れそうになる事が起きても、英二に迎えられると不思議と心が落ち着くのだ。

 

「英二?」

 

普段なら玄関まで出迎えてくれるか、何か用事をしていたとしても『おかえり!」と声をかけてくれるはずなのに今日は何の反応も無かった。英二が現れないことにアッシュは疑問を感じた。

 

(寝るにはまだ早いな…シャワーでも浴びているのか?)

 

リビングを覗くと、英二は戸惑うような、困ったような表情のまま突っ立っていた。

 

「あ、アッシュ。。。おかえり」

 

「ただいま」

 

不安に揺れる黒い瞳を見て、アッシュは自分の胸がチリチリと焼けるような苦しさを感じた。視線は訝しそうなままできるだけ静かに穏やかに尋ねた。

 

「。。。何かあったのか?」

 

「。。。いや、”あった”わけじゃなくて。。。”無かった”から謝りたくて。。。」

 

トンチンカンな答えが返ってきて、アッシュは眉間にしわを寄せた。決して我慢強い方ではないとわかっているが、身の危険が生じるような出来事があったのか、そうでは無いのかを知りたかった彼は腕をくみ、指先でトントンと自分の腕を叩いて苛立ちを表した。

 

「一体何の話だ?何が起きたか聞いている 」

 

誤解させてしまったことに気がついて、英二は両手を振り否定した。

 

「ちがう、僕に何かが起きたわけじゃ無いよ。えーっと、実は今日きみの誕生日だって知らなくて。。。何も準備できなかったから。。。」

 

「なんだ、そんなことか。。。」

 

心配するような敵襲ではないことを知り、強張ってた表情がゆるんだ。

 

「気にするな。。。正直どうでもいいし、犯罪者の誕生日を祝ってどうするんだ?そんな価値なんてねぇよ」

 

くるりと英二に背を向け、自分を蔑むようにアッシュは答えた。

 

英二は彼の言葉にショックと沸々と怒りの感情が高まり、思わずアッシュのシャツをぐいとひっぱり、自分の方を向かせた。そして瞳を大きく見開き、悔しそうな表情のまま大声で怒りを爆発させた。

 

「何言ってるんだよ、とっても大事なことじゃないか!」

 

突然怒鳴られたアッシュは何が起きたのか一瞬分からなかった。自分は何か気に触ることを言っただろうかと考えるがやはり分からなかった。

 

「おまえ、何をムキになっているんだ? どうしたんだ?」

 

労わるように英二の肩にそっと手を起き、心配そうにのぞきこんできた。

 

同性でも思わず見惚れてしまいそうなグリーンアイズと目が合い、突然怒鳴ってしまったことへの申し訳なさと照れ臭さで視線を逸らしてしまった。

 

(あぁ、君は分かっていない。でも僕のことを心配してくれているんだな。。。) 

 

どう言えば自分の気持ちが伝わるのだろうか。深呼吸してアッシュをもう一度真正面から見た。もどかしかく感じながらも拙い英語で精一杯の気持ちを伝えた。

 

 

「ちがうんだ、ごめんよ。僕は、悔しかったんだ。君が自分のことをそんな悲しい言葉で卑下するものだから。。。」

 

英二の言おうとしていることに気づいたのか、アッシュは軽く舌打ちをした。

 

 

「君がこの世に生まれてきたことをお祝いしたいだけなんだ。こうして知り合えて友達になれたこと、いま一緒に過ごしていること、君のそばにいれることに感謝したいんだ。だから今日は僕にとって特別な日でもあるんだよ?」

 

 

英二の言葉ひとつひとつがアッシュの心にじんわりと沁みるようだった。今まで人に利用されてきたアッシュにとって、自分の誕生日は他人に「奉仕」することを意味していた。誰しもが彼に「見返り」を必ず求めていた。

 

 

これまで自分の誕生日が誰かにとって特別な日だなんて考えたこともなかった。ただそばにいて、心配して、時には喧嘩しながらも心は繋がっていて。。。もうすでに英二からは特別なプレゼントを受け取っているのだ。これ以上何を求めるというのだろうか。

 

だが、この親友はどこまでも誠実で思いやりがあって、おせっかいだった。

 

「。。。悪かった」

 

小さな声で拗ねたように答えたアッシュに英二はクスッと微笑んだ。

 

「いいかい、覚えていてくれ。僕は君の誕生日を今後忘れたりはしないよ? たとえ君が嫌がっても毎年必ずお祝いさせてもらうからね」

 

 

英二はわざとらしく声を低くして脅し口調で言ったが、全く怖くなくただ不自然に聞こえるだけだった。

 

アッシュもわざとらしく身体を震わせ、大げさに怯えたフリをした。

 

「オイオイ、なんか怖いなぁ、変なコトしないでくれよ?『プレゼントは自分』と言うつもりか?」

 

「ハァッ?誰がそんなことするものか!

 

「だって、オニイチャン、ボクへのプレゼントは無いんだろう?」

 

プレゼントなんてどうでも良かったが、怒りの矛先を他に向ける為にわざと聞いてみた。案の定、用意できなかったことに罪悪感を感じていたのか、さっきまでの怒りはどこへいったのか、申し訳なさそうに英二は頭を垂れてしおらしくなった。

 

「そうなんだ。僕、ずっと考えていたんだけど。。。何がいいのか分からなくて。。。」

 

「じゃぁ、俺が指定する。お前の”誕生日”の話をしてくれ。日本ではどんな風に祝うんだ?」

 

意外な言葉に英二は口を半開きにしたまま顔を上げた。

 

「エッ。。。僕の誕生日の話?それでいいのかい? それが君へのプレゼントになるの?」

 

アッシュはリビングのソファに移動し、腰を掛けて足を組んだ。

 

「主役がいいと言ってるんだ。さっさと話せよ」

 

「そうだなぁ。。。すごく普通なんだけど」

 

促されるように英二もアッシュに近づいていく。

 

「その”普通”がいいんだ」

 

アッシュは穏やかに微笑んだ。

 

 

***

 

時刻は23時を回っていた。リビングのローテブルには空の缶ビールが数本転がっていた。

 

英二は時折身振り手振りジェスチャーをくわえながら日本でどう誕生日を過ごしたのかアッシュに話していた。もちろんアメリカのセレブのような華やかなパーティーなどではなく、静かな田舎でのごく普通の日常の一部だった。アッシュは終始興味深そうに聞き、時折頷き、親友の話を楽しんでいた。

 

 

「。。。それで妹がさぁ、”定番のショートケーキはもう飽きたでしょ? チーズケーキの方が美味しそうだからこっちにしたよ!”って結局自分が食べたいケーキ買ってきたんだぜ? 」

 

「カワイイ妹じゃないか」

 

「そうかなぁ?生意気な時もあるけどね」

 

英二は首を傾げて否定をしたが、アッシュは穏やかに微笑んだ。兄妹の話はアッシュにグリフとの懐かしい記憶を思い出させた。英二の妹には会ったことはないが、きっと彼がいうほど生意気ではなく素直で可愛い少女なのだろうと感じていた。

 

 

「男友達からは何か祝ってもらったのか?」

 

「うーん、みんなお金も大してもってないから、駅前のカラオケ店にいって一緒に歌ったかな」

 

「カラオケか、楽しそうだな」

 

アッシュの瞳が輝くのを見て、今度は英二がフフッと微笑んだ。

 

「そうだね、君はけっこう歌うのが好きだもんね。シャワー中によく歌声が聞こえてくるもの」

 

「日本のエンカは最高だ」

 

冗談半分で聞かせた演歌をなぜかアッシュは気に入り、もっと教えろと言ってきて英二を困らせたことがあった。

 

「アハハ、それはどうも。。。うちのバァちゃんも風呂に入りながらよく演歌を歌っていたなぁ。。。懐かしい」

 

「お前は歌わないのか?」

 

「うーん、アニメソングの方が得意かな。。。」

 

「さすがお子ちゃまだな」

 

ニヤニヤと見下すように笑うアッシュを英二は軽く睨んだ。その視線を避けるようにアッシュは立ち上がり、キッチンに向かった。冷蔵庫を開ける重い音がした。

 

「おい英二、ビールがもうないぞ」

 

「え?もう?。。。 そういえば夕方にコング達が来てガバガバ飲んでたな。。。」

 

仲間達のために常に多めに飲みものを用意していたのだが、今日はふだんよりも暑く、買い置きしていた分が全て無くなっていた。

 

「俺は誕生日なのに酒も飲めないのか」

 

アッシュはわざと俯き加減で、悲しそうな表情を作った。

 

「あぁ、ごめんごめん! 僕、今から買ってくるよ」

 

慌てて英二は立ち上がった。アパートには二十四時間開いているスーパーがあるのでそこへ行くつもりだった。

 

「俺も行く」

 

「僕一人でも大丈夫だよ? 主役はゆっくりしてな」

 

英二はニッコリと微笑んだ。

 

高級アパートなのでセキュリティもしっかりしていて安全だ。だが夜中ということもあり、アッシュは何となく英二を一人で行かせたくはなかった。自分でも過保護だと自覚はしていた。

 

「何かつまみが欲しい」

 

「そうか、それじゃ一緒に行こう」

 

二人は部屋を出た。

 

 

***

 

 

夜遅い時間なので、店内の客はまだらだった。二人はカートを押しながら気になったものをカゴにどんどん入れていった。

 

「わぁ、日本のお菓子がある!これ、結構ビールとあうんだぜ?」

 

懐かしい祖国の菓子袋に英二は嬉しそうに手にとって眺めていた。パッケージが違うだの、値段が高いだの菓子ひとつで騒がしい親友をアッシュは微笑ましく見ていた。

 

「気になるなら買えば? 変わった形のライスクラッカーだな」

 

「これは果物の種の形なのさ。ビールと一緒に食べると最高だよ。おっと、味付けが2種類あるのか。。。へへ、こっちにしよう」

 

なぜかニヤニヤと英二は笑いながらカゴに菓子袋を放り込んだ。

 

「?」

 

アッシュは英二がなぜ笑っているのか理解できなかった。パッケージには日本語で ”わさび味” と書いてあった。

 

 

***

 

部屋に戻り、買い足したビールや菓子袋をローテーブルに並べ、再度二人は乾杯した。英二が選んだ菓子を口に入れるなり、アッシュは激しくむせ出した。

 

「ゴホッ、ゴホッ。。。か、辛い! なんだよこれ。。。鼻にくる! 」

 

涙目で鼻をつまむアッシュを見て、英二は腹を抱えて笑い出した。

 

「あはは!やっぱりキツイだろう!?』

 

「俺はこの味知ってるぞ。。。スシに付いてる調味料だろ? たしかワサ。。。」

 

「そうワサビさ!」

 

「おまえ、俺に食わそうとして、わざと選んだろう?」

 

アッシュは立ち上がり、仕返しとばかりに英二のこめかみに両拳を当ててグリグリと押し付けた。激痛に今度は英二が身悶えながら許しを請うた。

 

「イテテ! 君に日本の味を知ってもらいたくて。。。。ごめん、ごめん! 許してよ!」

 

しばらく英二が悶絶する様子をニヤついたままアッシュは眺めた後、満足そうに解放した。そしてソファーにだらしなくもたれ、両手を上げて伸びをした。大きな猫がゴロゴロとしているようだと英二は思ったが、黙っていた。

 

「あー、飲みすぎた」

 

そう言ってアッシュは欠伸をした。

 

「珍しいね、君ってお酒強いのかと思ってたけど」

 

「まぁな、めったいに酒に酔わない。それほど酒がうまいと思うこともねぇしな。。。」

 

酒に強いことは知っていたが、美味しいから飲むわけではないと言う理由に英二は少し驚いた。

 

「そうなの? 今日は疲れてたのかい?」

 

英二の問いには答えず、アッシュはじっと英二の黒い瞳を見つめた。しばらく二人は無言のまま見つめあっていた。

 

「。。。。」

 

(アッシュが何か言いたいことでもあるのだろうか、それともやはり疲れているのか)

 

何も言わないアッシュのことが英二は心配になってきた。硬い表情でアッシュの顔を覗き込んだ。

 

「どうしたの?気持ち悪いのかい?」

 

「ちげーよ、バカ」

 

アッシュは英二の額に思い切りデコピンをした。思わぬ衝撃と痛みで英二は軽いめまいと共に後ろずさんだ。

 

「グハッ! 何すんだよ?痛いだろ?」

 

おでこに手を当てたまま、英二は英二を睨みながら文句を言った。

 

「あははは!」

 

アッシュは腹に手を当て愉快そうに大口をあけて笑いだした。

 

「あーぁ、これは酔ってるな。。。ちょっと待ってろよ」

 

愉快そうに笑うアッシュを見て、怒りはあっけなく静まった。呆れながらも英二は床に転がっていたスナック菓子と飲み終えた缶ビールを拾い、アッシュのために水を持ってこようと席を立った。

 

 

英二の背中を見ながら、アッシュはもう一度フッと笑った。そして窓際に移動し、階下の夜景に目をやった。なぜだか今夜はいつもよりネオンが煌めいている気がした。

 

 

実のところアッシュは酔ってなどいなかった。仲間同士ではもっと強い酒を多く飲むし、ゴルツィネ邸では最高級の酒を”教養”として否応無く教え込まれてきた。だが、それらは必ずしも”楽しい時間”とは言えなかった。それに飲んだからと言って辛い現実や過去が変わるわけでもなく、深酒は時に命を狙われる可能性があった。

 

先ほどまで英二と晩酌していたものは、市販のチップスと英二が用意したおつまみのサラダ、それと缶ビールだ。ごく普通のもので特別な酒が用意されていたわけではなかったが、酒がすすんだ。それは親友と飲む酒が楽しかったからだ。

 

缶に残っていた酒を口に含み、飲み干した。あともう少し欲しい気がするが、それを言うときっと英二は怒るだろう。彼の反応を想像しただけで、なぜか頰が緩むのを感じた。

 

(英二は他の奴と全く違う。。。本当に、不思議な奴だ)

 

常に他人への警戒心を抱いているアッシュが、このような感情を人に対して持ったのは英二が初めてだった。

 

(俺はいつまであいつといれるだろうか。。。)

 

冷えた水の入ったグラスを持って、英二がキッチンからもどってきた。

 

「おーい、そろそろ飲むのはやめたほうがいいよ。ほら、水持ってきたよ」

 

「んー」

 

アッシュはカウチからずるずると体をずらし、そのまま床にドスンと座り込んだ。そしてだらしなく床のカーペットにゴロリとうつ伏せに寝転んだ。

 

英二は一瞬眉間に皺を寄せたが、グラスをテーブルに置き、穏やかな笑みを浮かべてアッシュに近づいた。

 

「そんな所に寝るなよ」

 

「。。。もう動きたくねえ」

 

「飲み過ぎだね、立てるかい?ベッドで寝た方がいい」

 

「。。。面倒くさい」

 

「もう、ガキみたいなことを言うなよ」

 

「誕生日くらい我儘言わせろよ」

 

「でも、もう日付が変わるぜ?」

 

時計を確認すると12時前だった。

 

 

「今日のうちに伝えたい事があるのだけど。。」

 

そう言いながら、英二はアッシュの横に寄り添うように座った。アッシュは目を閉じたままだが、まだ眠ってはいないようだ。

 

「アッシュ、僕は君に会えて、ここに置いてもらって感謝しているんだ。何ができるってわけじゃないけど、僕はいつも君のそばにいるよ。君が困った時や悩んだ時には支えてあげられるぐらい強い”オニイチャン”でありたいって思っているのさ。さっきも言ったけど、君が生まれた日は僕にとっても特別な日だよ。誕生日おめでとう」

 

「。。。。」

 

英二の言葉はまるで魔法のようだとアッシュは思う。決して流暢とは言えない英語だが、心を込めて話しているのが伝わってきた。

 

「。。。。」

 

何を返して良いか分からず無言のまま寝そべっていた。

 

心地よい言葉を瞳を閉じたまま聞いていても、彼の優しさがじわじわと体に浸透していった。

 

知らず知らずに強張っていた体の力が抜け、心はふわふわと柔らかくなっていくのを感じた。彼をこんな風にできるのは英二だけだった。

 

きっと、これが幸せということか。。

 

この感覚を永遠に感じていたい、英二をずっとそばに置いておきたい。。。そんなことは不可能だとわかっているがそう願わずにはいられなかった。

 

「アッシュ?寝たのか?」

 

アッシュが無反応なので、英二は彼の顔を覗き込んだ。薄く目を開いているものの、その口元は穏やかな寝息をたてていた。

 

「あ!寝てるよーもう!」

 

せっかくのお祝いの言葉を聞いてもらえずショックを受けた英二は、無遠慮に親友の肩をぐいと引っ張って仰向けにし、その美しい白い頰にベチベチと音をたててはたいた。

 

天国にいるかのような心地よいまどろみの中から呼び戻されたアッシュは心底嫌そうに英二を睨みつけた。

 

「何すんだよ、俺は眠いんだ。。。」

 

「おい、こんなところで寝ると風邪ひくぜ? ベッドで寝ろってば」

 

アッシュは英二に背を向け、そのままうつ伏せになった。そして低く甘えた声でつぶやいた。

 

「。。。動くのがだるい、オニイチャン、ベッドに運んでくれ。。。。」

 

その言葉に英二は目を丸くした。

 

「は!? 僕より大きい君を? 冗談だろう?」

 

「まだ12日だ。。。誕生日にわがまま言っていいだろう?」

 

「ちぇっ。。。仕方ないな、おんぶするか。。。重い! 

 

スラリと無駄な肉のない身体とは言え、一人の人間を移動させるのはきつかった。

 

 

「背中に乗せて、あとはひきずって行こう」

 

もっとトレーニングしておくべきだったと後悔しながら背中にアッシュをのせた。少しずつ進んでいく。

 

アッシュは英二の体温、触れた肌の感触を心地よく感じていたものの、あまりに何度も「重い、重い」とぶつぶつ言う英二の文句が気に障ったのか、アッシュは眉間にシワを寄せ、英二の後頭部に向かって わざとらしく嫌味を言い始めた。

 

「おまえ、もう老化現象が始まってるんだな。。。かわいそうに。。。」

 

「なんだと?僕はこれでもスポーツマンだぞ?」

 

支えていた手をはずし、勢いよく英二が立ち上がると同時に、支えを失ったアッシュが勢いよく床に崩れ、ドンと重い音がした。

 

臀部から落ちたアッシュは腰に手を当てて

 

「ぃってーな。。。お前、筋力落ちてるだろう。それとも太ったのか?」

 

「そんなことないよ!そりゃぁ、前はもっと鍛えてたけどさ」

 

「ほら、お手本を見せてやる」

 

英二の膝裏に手を差し込み、そのままひょいと彼を持ち上げた。突然ぐらりと視界が変わり、英二が見上げると自分を見つめるアッシュの瞳とぶつかり、羞恥心で顔が赤くなった。

 

「ちょっと、アッシュ!やめろって!なんでお姫様抱っこなんてするんだよ」

 

「このままベッドまで運んでやろうか?」

 

アッシュはセクシーな声で英二の柔らかそうな耳たぶの近くで囁き、わざと息を吹きかけた。英二の全身がぞわぞわと鳥肌がたった。

 

「バカにするなよ? 僕が君を絶対にベッドまで運んでやる!降ろせよっ!」

 

拳を作った腕でアッシュの胸をドンと叩いたので、バランスを崩したアッシュは英二を解放した。アッシュはほくそ笑んだ後、自ら英二の背中に飛びついて、両腕を英二の首の前でからませた。

 

「そうか、じゃぁ、しっかり頼むよ」

 

突然背後にズシリと重みと首が若干締め付けられて英二は少々苦しそうに声をあげた。

 

「うっ、やっぱり重い。。。だけど大和魂を見せてやる!つかまってろよ、アッシュ!」

 

英二は再び英二をおんぶして、力強くゆっくり歩みを進めた。心地よい英二の体温にアッシュは思わず本音が出てしまった。

 

「来年もよろしく。。。オニイチャン」

 

「もちろんさ!」

 

即答した英二の返答に気を良くしたアッシュは微笑み、こっそりと英二の背中にキスをした後、ゆるやかな眠気の中で瞼をゆっくりと閉じた。

 

(終)

 

*あとがき*

 

お読みいただきありがとうございました!非常に長ーい後編になってしまいました(汗)男同士ってどうお祝いするんだろう?思った疑問から今回の創作をしました。きっとプレゼントは贈らず、飲みに行って騒ぐのかなーと想いました。。。ふざけてじゃれあう二人と(主にアッシュが)書きたかったのです。プレゼントは”英二の誕生日の話”。これならお金もかからないし、英二のことをもっと知れるからいいかなぁと思いました。久しぶりの創作で、思ったように書けませんでしたが、愛情だけは込めました。お付き合いいただいた皆さんに感謝します!そしてアッシュ、お誕生日おめでとう!

 

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