BANANAFISH DREAM

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趣味の漫画BANANAFISH二次小説を中心に日々更新中♩

 

皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのタイムワープ話の続きです。伊部さんとアッシュの会話、何となくバチバチしてますが別にアッシュは敵意むきだしってわけではありませんよー。設定のおかしなところが多々あるかもしれません。ご了承くださいませ〜ウインク

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

 

第8話:不思議な少年

 

 

木造の小さな旅館の一室。畳6畳の空間が伊部の当分の住まいだ。

 

カメラの整理を終えた後、することがなくなった伊部はタバコに火をつけた。白い煙は天井に向かって上がり、そのうち見えなくなるのをボウッと眺めていた。

 

(ハァ。。。大丈夫かな。撮影無事に終わるんだろうか。。。)

 

奥村英二は思っていたとおり純朴で素直な少年だった。少しシャイなところがあるが、その内面は決して弱くない。むしろ自分の決めたことは曲げずに貫こうとするだろう。

 

伊部は、彼の心にあるまだ見ぬ灯火を明るく照らすことができたらと思っていた。だが、実際に会ってみるとそう思っていたのは自分だけでは無かったと実感していた。

 

皆から”アッシュ”と呼ばれる 外国人の留学生がなぜか奥村英二に張り付いているのだ。英二も別にそれを嫌がる様子もなく、ごく自然に受け入れている。

 

あの後、担任から奥村英二を紹介してもらった。アッシュと呼ばれる少年は奥村英二の側で伊部達の様子を眺めていた。はじめ、アッシュは驚いた様子で伊部を見ていた。彼の唇が動き、何か言いかけたことに伊部は気づいた。あの視線は初対面ではなく、既視感のあるものだ。だが結局アッシュは何も言わなかった。

 

 

(どこかで会ったかなぁ。。。?昔、モデルをしてもらったとか。。。いや、あんな子と知り合いなら絶対に覚えているはずなんだけど。。。)

 

 

今日はお互いに初対面ということもあり、英二とは雑談が中心だった。時々チラチラとこちらを観察しているアッシュが気になったものの、人懐っこい英二の性格もあって少し距離が縮まった気がする。

 

撮影に集中しなければならないが、常に英二のそばにいるアッシュの存在が気になってしまうのだ。それは彼の類い稀は容姿だけではなく、どこか寂しげで複雑な表情から気になってしまうのかもしれない。

 

 

「えっと。。。君は。。。?」

 

伊部は思い切ってアッシュに声をかけようとしたが、ふいっと顔を背けられてしまった。まるで俺に話しかけるなとでも言うかのように。

 

 

(逃げられちゃったか。。。)

 

 

 

***

 

 

 

翌日、英二が軽いストレッチとランニングをしている時、アッシュはグラウンド近くのベンチに腰掛けて読書をしていた。

 

 

「君。。。アッシュくんだね。僕は東京から来た。。。」

 

「知ってる」

 

自己紹介しようとした伊部の言葉をアッシュは遮った。

 

 

顔をあげたアッシュは眼鏡をかけていた。端正な顔によく似合っている。伊部はこの子ならフォーマルな洋服でも着こなせるだろうなと思った。

 

「俺はアンタのこと知ってるよ、イベさん」

 

 

「あ。。。そうなの!? 先生から聞いたのかな、アッシュ君?」

 

 

「。。。アッシュでいい」

 

 

落ち着いているせいか、実年齢より随分大人びて見えた。

 

(本当に高校生なのか? なんかすっごく。。。人生経験積んでそうな雰囲気があるんだけど。。。)

 

 

「あのさ。。。アッシュ、どこかで君と会ったかな? 」

 

 

「なぜ?」

 

 

凄みのある視線を向けられて、伊部は戸惑った。

 

 

「いや。。。何となく。。。」

 

 

「俺のこと、ナンパしているのか?」

 

 

冗談なのか本気なのか、判断のつかない言い方だった。

 

 

「えっ、そんなつもりじゃなくて。。。君が俺のことをまるでどこかで見たかのような表情で見てたから。。気のせいかな?」

 

 

伊部の言葉にアッシュはしばらく沈黙したまま空を見上げていたが、何か納得したかのように伊部の顔をまっすぐに見つめた。

 

 

「ふぅん。。。」

 

 

翡翠色の宝石のような瞳だ。何か妖しげなほど現実味のない美しさだ。もし彼が女性だったら伊部はアッシュに魅了されていただろう。

 

 

「カメラマンって感受性が強いのか?」

 

 

アッシュは独り言を言うかのようにポツリとつぶやいた。

 

 

「うーん、そうなのかもしれないね。。。フフッ、そんなこと聞くだなんて、まるで。。。」

 

(ゴーストかユーレイなのかい?)

 

喉まででかかったが、伊部はやめた。アッシュの儚く美しい容姿のせいで、彼の存在が霊的なものに見えるだなんて馬鹿馬鹿しいし失礼だろう。だが、この少年が何者なのかは知りたいと思った。

 

 

「じゃぁ聞いてみるけど、君は一体何もの何だい?」

 

 

笑いながら伊部は冗談でも言うかのように聞いてみた。

 

 

「。。。。」

 

ふっと冷めた笑いをみせたアッシュの表情は妖艶で怪しげなものに変わっていた。伊部はこんな表情を見せる少年を見たことがなかった。背中がぞくりとする。本当にこの少年は霊的な何かかもしれないと思えてきた。そうなると奥村英二は彼に取り憑かれているのだろうか。

 

 

そんなことを考えながらも伊部はこの少年から目を離せずにいた。この少年の不思議な何かを知りたいという思いと、恐怖心に近い感情で動けなくなったのだ。

 

 

「。。。殺人鬼だよ。それも少年犯罪史最悪の犯罪者で元男娼だ」

 

低い声でアッシュはゆっくりと囁いた。

 

 

「。。。。。」

 

 

きっと自分は彼に揶揄われたのだろうと伊部は思ったが、咄嗟に反応することが出来なかった。それだけアッシュの表情が真剣だったからだ。

 

 

(本当に冗談?でも。。。非現実的すぎる。そんな話、ニュースで聞いたことがないぞ。。。)

 

 

伊部の脳裏に、アメリカにいるジャーナリストの友人の顔がふと浮かんで消えた。しばらく黙っていると、アッシュがアハハと笑い出したのでハッと伊部は我に返った。

 

 

「なんて顔してるんだよ。あんたとはまだ会っていないよ、伊部さん」

 

「。。。。」

 

(「まだ」ってどう言う意味だ? なんかこの子が言うと冗談に聞こえないんだよな。。。)

 

 

伊部は「困ったな」と頭を掻きながら中途半端な笑みを浮かべた。

 

 

「君、なんか迫力あるし、日本語も上手だからさ。。。なんて言うか。。。冗談言っているように思えないんだよね」

 

 

「。。。そう?」

 

アッシュはニッコリと綺麗に微笑んだ。誰が見ても愛想笑いだとわかる笑顔だった。

 

 

「俺は地獄から探し物をしにやってきたのさ」

 

「探し物?」

 

「あんたのおかげで見つかるかもしれない」

 

「?」

 

理解できずに立ちつくす伊部のそばをアッシュはスッとすり抜けて校舎の中に消えていった。

 

 

(。。。不思議な子だな。。。やっぱり幽霊だったらどうしよう。。。お寺に行こうかな。。。)

 

 

伊部はぼうっとしながらしばらくの間誰もいない校庭を見つめていた。

 

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。伊部さん、かなりアッシュにビビっていますね(笑)お化けだと思っていらっしゃるし(笑)

 

人生経験違いすぎるアッシュのド迫力に圧倒されまくりですが、カメラマンならではの感性?でアッシュに何か特別なものを感じているようです。

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのタイムワープ話の続きです。今回伊部さんが登場しますが、細かい設定ど忘れしちゃってるのでおかしなところがあるかもしれません。ご了承くださいませ〜ウインク

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

 

第7話:伊部との対面

 

 

”間も無く電車は終着駅に到着いたします。。。”

 

アナウンス音と共にガタッと電車が揺れた。伊部俊一は目を覚ました。

 

「ふわぁぁ。。。やっと着いたか。。。さすがに東京からは遠かったな」

 

長時間電車に揺られ、すっかりだるくなった腰と背中を伸ばしながら伊部は車窓の風景を眺めた。

 

のどかな田園風景の奥には小高い山々が見える。家はポツポツと建っているいるだけで人の姿は見えなかった。

 

「思ってた通り、何もない田舎だなぁ。。。でも美しい緑だな。きっと綺麗な風景が撮れるかもしれないぞ」

 

 

大事なカメラの入ったバッグをそっとひと撫でして、彼は電車から降りた。

 

伊部が東京からわざわざ遠い田舎までやってきたのは、ここに住む高校生に会うためだ。たまたま目にした陸上競技のインターハイで伊部は「奥村英二」という選手に目をつけた。目立つ華はないし結果は残念ながら2位だったものの、 なぜだか彼に惹かれてどうしても彼を撮りたいと思った。伊部は彼の母校に許可を得て出雲にまでやってきた。

 

 

「なんか懐かしい風景だな。。。」

 

古い建物が並ぶ街並みを歩きながら彼の母校へと向かう。登り坂に少々汗ばみながら伊部は首から垂らしたストラップ付きのカメラを手にして、時々撮影しながら進んでいく。

 

 

(奥村くん。。。どんな子なんだろう。楽しみだな)

 

 

ブラウン管越しに見た彼はその大きな瞳のせいか、まだ幼さの残る印象だった。彼は優勝を逃してガッカリするよりどこかアッサリしていたのを思い出す。

 

実際はどんな性格なのだろうかと伊部は思った。彼を見ていると、なぜか直接会って彼をもっと見てみたいと思った。なぜかはわからないが、中途半端な自分でも彼に何か出来るかもしれないという想いを抱いていた。伊部の”武器”はカメラだ。撮影を通じて彼の内面をもっと見てみたい、彼の魅力を引き出したいと思っていた。

 

 

校舎は丘の上に建っていた。

 

 

「ふぅ、ふぅ。。。あと少し。あっ。。。グラウンドが見えてきた」

 

息を切らしながら伊部は坂を登り、ゆっくりとフェンスに近づいていく。年季の入ったフェンスは歪んでいてところどころ錆びていたり穴が空いてたりしている。その向こうには陸上部の部員達が練習しているのが見えた。

 

(あの中に奥村くんいるかな?)

 

棒高跳び用の大きなマットの向こうに棒高跳び用のバーを持つ少年の姿を捉えた。

 

 

(あ、あれは。。。奥村くん)

 

伊部のいる場所から少し距離があるのでハッキリとは見えないが、フォトグラファーである彼は自分の目に自信があった。

 

 

制服姿の友人らしき人物と話しており、リラックスした和やかな雰囲気の中で彼は笑っていた。きっと初対面の自分には見せてくれないであろう自然な姿を見ていると、この微笑ましいシーンを写真に捉えておきたいと思い、破れたフェンスの隙間から伊部はカメラを構えた。

 

「!?」

 

その瞬間、何かが伊部のそばを駆け抜けたかのような感覚に伊部は陥った。まるで強風がビュッと吹いたかのような気がした。思わずカメラから視線を外して周りを見たが、木の枝も葉も揺れていない。

 

(なんだ。。。何かを感じた。。。)

 

伊部は錯覚かと思ったが、何かゾッとするものを感じた。彼自身、霊的なものを信じているわけではないし、そういうものを写真に写したこともないのだ。

 

 

もう一度、奥村英二の方を見た。彼は何事もなかったのようにおしゃべりに夢中だった。彼に意識を集中していたので伊部は気がつかなかった。彼の隣にいる少し背の高い少年が伊部を睨みつけていた。

 

(ん?? 金髪。。。?ヤンキー。。。じゃないな、あんな綺麗なプラチナブロンドの髪。。。外国人か)

 

 

金髪の少年からは異様なほどの強い警戒心が感じられた。大げさかもしれないが、野生動物の母親が子供を守るかのような強い視線だった。いや、守るというよりももっと強烈なもので、まるで近づいたら殺すと殺気立ったものだ。

 

なぜここまでこの外国人の少年に睨みつけられるのだろうかと伊部は思った。まだ本人には直接会っていないが、一応撮影の許可はもらっている。おそらくこの少年は知らないのだろう。きっと彼は伊部を不審者と思っていたに違いない。

 

(なんかあの子、すっごく怖いけど。。。手でも振っておこうか、不審者じゃないデス)

 

 

まだ顔が強張っていたが、伊部はできるだけ穏やかにぎこちない微笑みを浮かべ、ゆっくりと手を振った。

 

するとその金髪の少年はハッと何かに気づいたようで、殺気立っていた雰囲気は無くなった。そして今度は何かを探るように伊部をジッと観察している。

 

(うーん、それはそれで何か困るっていうか。。。あの子、すっごいオーラがあるなぁ。。。何なんだろう?よく見たらすっごい綺麗な顔しているしモデル並みだ。。。芸能人なんだろうか? パパラッチとでも思われたのか?)

 

 

混乱する頭を抱えながら、伊部は校舎に入っていった。

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。伊部さんも未来のアッシュと出会ってしまいましたよー。大丈夫かな?(笑)

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのタイムワープ話の続きです。色々と設定がフワッとしていますが、気になさらないでください(汗)

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

 

第六話:インターハイを終えて

 

 

俺は英二をインターハイで優勝させるべく、サポートする気満々だったのだが、結局丁重に断られてしまった。と言うよりも、本気だと思われていなかったと言った方が正しいだろう。

 

 

インターハイまで期間が短かいし、所詮陸上に関しては素人の俺が何を言ったところで英二は真剣に耳を傾けはしまい。むしろ集中できずに困らせてしまうかもしれないと思い、遠慮してしまったところがある。

 

 

もっともっと信頼関係を築いていれば違ったアプローチができたかもしれない。出会ったばかりの俺たちの絆が何かを拍子に崩れてしまうのが怖かったのだ。その隙にリホや他の連中が英二にすり寄ってくるかもしれない。

 

 

(ちぇっ、残念だ。。。俺のこの頭脳を活かせないだなんて。。。)

 

見た目が派手な分、極力目立たぬよう学校の成績は標準よりやや上ぐらいに押さえている。

 

 

カシャカシャ。。。キーボードで俺は英二のライバルとなる人物について調べていた。なるほど、関東に水野という選手がいて、長年英二のライバルとされているようだ。体格がよく、国内トップクラスの選手らしい。彼のジャンプはとても力強く、人を圧倒させるような迫力がある。

 

 

一方、英二の棒高跳びのフォームは真逆だ。英二の場合は走り出してからジャンプするまでの流れが綺麗でごく自然に感じられる。気がつくとあっという間にスルッとバーを飛び抜けていたという印象だ。自然で流れるようなジャンプは人を惹きつける美しさがある。体格の違い、だけではないと思う。

 

 

俺はこの世界にやってきてから英二のジャンプをたくさんみてきた。俺とスキップの前で命がけで跳んでくれたジャンプがやはり一番感動したのだが、練習中や試合時のジャンプも見ていて飽きない。ダイナミックさよりも、軽やかでどこか繊細なジャンプなのだ。そして俺は跳んでいる時の英二の笑顔が何よりも素晴らしいと思う。

 

 

結局、インターハイで英二は2位だった。俺はクラスメイト達と当然応援に行き、声が枯れるまで応援していた。

 

あともう一歩で優勝できたが、やはり競合相手は強かった。英二はサッパリしていて悔しそうな顔もせずに、応援席にいる俺たちに手を振って応援団に礼を言うとコーチの元へと戻ってしまった。

 

 

過去を変えるのが怖くて結局何も出来なかった俺は心底悔しかった。今まで野球やフットボールゲームのサポーターとして応援したことなどなかったが、たった一人の親友のためなら喜んでサポーターになっても良いと思った。

 

 

「英二くん残念だったね。。。またあのライバルに負けちゃった」

 

「でも2位だよ!すごいよね。。。あとで声かけてお祝いしようよ、英二くん来るかなぁ?」

 

「カーレンリース君も一緒に参加しようよ」

 

 

クラスメイトに誘われたが、なんとなく英二は来ない気がしたので俺は断った。

 

 

 

***

 

 

 

部屋に戻り、俺はベッドに倒れるようにダイブした。慣れない応援なんてしたから喉が痛くて体もだるい。

 

「はぁ。。。」

 

 

閻魔大王との期限がどんどん近づいてくる。

 

 

(こっちに来てもう2ヶ月半か。。。)

 

 

カレンダーの日付を見ると、落ち着かない。毎日俺の望んだものについて考えているが思いつかないのだ。

 

 

焦りが俺の全身を包み込んでいた。

 

 

 

「くそっ。。。!あっという間に期限が来てしまう。。。」

 

 

 

このまま楽しく残りを過ごすのも良いだろうが、この謎を残したままというのがどうにも気に入らなかった。自分のことなのにどうして分からないのだろうか。

 

 

ーコンコンー

 

 

時計の針を見ると、普段なら英二は寝ている時間だった。やっぱり試合後はいつもと違うのだろうか。

 

 

 

「英二、どうした?」

 

 

「アッシュ、もう寝るのかい?」

 

 

「いや。まだもう少し起きてるつもり」

 

 

「ね、そっちに行ってもいい?母さんたち寝てるし、窓越しだと声が響くかもしれないから」

 

「そうだな、こっちに来いよ」

 

 

奥村家の玄関が開き、英二が俺の住むアパートに向かって歩いてくるのが窓から見えた。

 

冷蔵庫からペットボトルを取り出し、サイドテーブルに置いてから俺は玄関へと向かう。

 

 

 

軽くノック音がして、英二が入ってきた。

 

 

「こんな時間にごめんよ。なんか眠れなくて。。」

 

 

「そんな時もあるよな。まぁ、好きなところ座れよ」

 

 

「ありがとう」

 

 

英二は小さなカウチに座った。いつもと変わらないように見えるが、どこか表情がさえない。やはり試合のことで落ち込んでいるのだろうか。それとも疲れているのだろうか。迷ったが、試合のことが話題にでないのも不自然かと思った。俺は出来るだけさりげない口調で言うよう気をつけた。

 

 

「。。。あー、今日は惜しかったな。おまえ、カッコよかったぞ。」

 

 

「あぁ、応援ありがとう。まさか君がハチマキを頭に巻いて応援してくれるだなんて思わなかったよ」

 

 

「リホが。。。これが正当な日本の応援スタイルだって言うものだから。ちょっと怪しいなと思ったけど」

 

 

「君、目立つのは嫌いなのに応援団なんてしてくれるんだもん。可笑しくって跳ぶ前に吹き出しそうになった」

 

 

「。。。俺に何ができるか分からなかったから。リホめ、やっぱり俺で遊んでたな」

 

 

「ハハハ、でも君の存在のお陰で僕は元気をもらったけどね。」

 

 

「そうか、それならよかった」

 

 

「ねぇ、アッシュ。君って時々。。。すごく遠いところにいたんじゃないかって。。。気がするんだ」

 

 

英二はじっと俺の瞳を見ながら言った。俺はニヤッと笑った。

 

 

「あぁ、たしかにNYは遠いぞ」

 

「いや、そういう意味じゃなくて。同じ地球なんだけど、まるで別世界から来たような気がする」

 

 

「宇宙人とでも?ギズモか?」

 

 

「また、そんなことを言うんだから」

 

 

英二は肘で俺の脇腹を小突いた。

 

 

「あ、このソーダもらうね。いいでしょ?」

 

 

自分の好きな飲みものがテーブルに置いてあることに気がつき、英二は無遠慮に手にとってゴクゴクと飲み出した。俺は英二のこういうところが結構気に入っている。それだけ精神的な距離が近いことを意味するからだ。

 

 

 

「あー、旨かった。。あっという間に このソーダ、飲み終わっちゃった! あっという間。。。。あっという間だった。。。今日の試合も。。。」

 

 

「また来年があるさ。。。」

 

 

「ライバルの水野に勝つのは難しいと思ったけど。。。。何だかなぁ。。。僕の目の前に大きな壁のようなものがある気がするんだ」

 

 

「。。。。。。」

 

 

 

 

「あぁ、こんな事言っても困っちゃうよね」

 

 

何が正解なのか分からないが、俺は英二を勇気付けたかった。期待とプレッシャーで押しつぶされそうになっていたのだろう。それから解放されたが、不満足の結果になってしまった。まだ気持ちの整理が出来ていないようだ。

 

 

できる限りの言葉と想いを彼に向かって告げた。

 

 

「おまえはもっと大きな困難にぶつかるだろう。。。でも絶対にお前は壁を飛び越えられる。。。俺が保証する。。。」

 

 

英二はキョトンとしていたが、嬉しそうに微笑んでくれた。ごく自然な笑顔だった。

 

 

「ふふっ、まるで目撃者みたいな言い方だね」

 

 

「。。。そう?」

 

 

「ね、アッシュ。君がここにいてくれて良かった。今日なんて特に。。。」

 

 

「遠慮せずに俺のところに来れば良い。覚えておけ」

 

 

「うん!」

 

 

 

それからしばらくして、英二をモデルにした写真を撮影したいという依頼が東京からあった。

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。英二の高校時代の設定がすっごく曖昧なので、間違ってたらごめんなさいね。もう一度漫画見直さなきゃ( > fly boy,...の方)なぁ。。。でもこのまま進んじゃうんだ(笑)

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのタイムワープ話の続きです。英二の天然ぶりが相当ひどいです(笑)

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

 

第五話:英二の恋愛事情

 

 

白い湯気と共に香辛料の香りが俺の部屋に漂っている。

俺は英二に案内されたスーパーで買ったインスタントラーメンが出来上がった。これはアメリカでも売っている某有名メーカーの商品で、現実の英二が好きなものだ。

 

今日も夕食を食べに来ないかと英二に誘われたが、連日だと迷惑だろうし今日の出来事にかなり動揺していたので頭を整理したくて断った。

 

 

ズズっと音をたてて麺をすする動作は現実の英二から教えてもらった。”こう食べた方が美味い”と言うものだから、いつの間にか俺も麺をすすれるようになっていた。

 

 

このラーメンの味は俺も好きなのに、残念ながら今日は味があまりしない。それは俺の心理状況が原因なのだが。

 

 

「。。。ふぅ、もういいや」

 

俺は割り箸を麺に刺したまま、テーブルに置いた。

 

 

「。。。。。」

 

 

なぜか泣きたいような、心細い気持ちでいっぱいだった。

 

 

(なんだよ、英二。。。彼女がいただなんて聞いていないぞ。。。)

 

 

英二に元カノがいたという衝撃の事実に、俺は勝手に傷つき落ちこんでいた。そして自分の浅はかさに自己嫌悪した。

 

 

「。。。はぁー」

 

長く深いため息をついた。もう何回目だろうか。俺はどこかで英二は恋愛に疎いと思い込んでいたのだ。それはあいつがとってもシャイで、俺の仲間達が際どい雑誌を見ていても顔を真っ赤にしてそっぽを向くようなやつだからだ。

 

だが、今日のリホの態度をみて、クラスの女子の英二への反応をみて何となくわかった。

 

 

”英二は意外とモテる”

 

 

物腰が柔らかく、可愛らしい顔をしている。それに陸上部の期待の星とくればリホのように応援したくなるものだ。リホ以外にも英二をチラチラと見ている女子生徒が何人もいたのだ。

 

 

分からないのは英二の気持ちだ。リホへの態度が不自然だった。それは別れたことへの後悔なのか気まずさからなのか、それとも未練があるのだろうか。。。

 

 

気がつけば、抱えていたクッションが押しつぶされそうになっていた。

 

 

「いや、元カノがいたっていいじゃないか。普通だろ?それに俺がどうこう言う問題じゃない。。。」

 

 

ガールフレンドという固定枠は設けなかったものの、経験だけは無駄に積んできた身だ。英二がまともな恋愛をしたことがあるのなら良いことだ。

 

 

子供っぽい独占欲から嫉妬するだなんてあってはならないことだ。しかも過去のことだ。

 

 

(だけどもしまた付き合ったら?新しい彼女ができたら?)

 

 

今は隣人で同じクラスメイトということで仲良くしてくれているが、彼女ができれば俺との時間は減るだろう。そう思うと何とも言えないほどもどかしく、心が暗くなっていく。

 

 

 

ーコンコンー

 

 

再び俺の窓から音がして、俺はハッと窓辺にかけよった。

 

 

「英二! なんだよ、もう22時だぜ?」

 

 

「電気ついてるからまだ起きてるかなって。。。ごめん、もう寝るところだった?」

 

 

「いや、まだ眠くない」

 

 

英二は鼻をクンクン嗅いだ。

 

 

「良い匂いするなぁー僕もラーメン食べたくなってきたよ」

 

 

「こんな時間に食うと豚になるぜ。陸上部のエースさん」

 

 

「エースかどうかは分からないけど、確かに次の日に影響がでそうだね」

 

 

「どうしたんだよ?」

 

 

 

「ん?ちょっとどうしているかなって。。。すぐそばにいるんだなって思うと話しかけたくなっちゃって。迷惑だったらやめるよ」

 

 

「いや、それは構わないんだ。別に用事がなくたって。。。誰かと話したい気持ちの時もあるだろう?」

 

 

そして今の俺にとって、その相手は英二だった。

 

 

「アッシュ、今日はちょっと元気なかったね。みんなに質問攻めにあうから疲れたのかい?」

 

 

「。。。。」

 

 

前から思ったことだが、英二は天然そうに見えて人の機微に敏感だ。俺にはもちろん、友人たちにも細かい配慮をしながら人の気持ちに寄り添ってくれるのだ。その優しさが伝わるからこそ、英二の人気は男女ともに高い。

 

だからといって決して優しいだけの優男ではない。棒高跳びに関してはストイックで練習を欠かさず、試合では優勝を狙っている。

 

”大和魂をみせてやる”と言っていた現実の英二のセリフが懐かしく思い出された。あの時、俺とスキップを助けるために水道管を手に命がけで壁を飛んだ英二はまさに立派な漢(おとこ)だった。

 

 

「なぁ、英二。おまえ、リホと付き合っていたのか?」

 

 

英二はギョッとして困ったように顔をくしゃくしゃにして笑った。

 

 

「困ったなぁ。。。クラスの女子が君に余計なことを話したんだね?」

 

 

俺はドキドキしながら英二をまっすぐに見て聞いた。

 

 

「今も好きなのか?」

 

 

「えっと。。。なんて言ったらいいかな。。。皆なぜかそう思っているんだよね。。。」

 

 

ポリポリと頭を掻きながら英二は眉を八の字に下げた。

 

 

「どうみても、リホはおまえのことが好きだろう!?」

 

 

「リホちゃんは優しい子だから、僕のことを放っておけないだけだよ。僕が一年の時、同じ塾に通っていて、よく勉強を教えてもらっていたんだ。今は陸上に専念したいからもう塾は辞めちゃったんだけどね」

 

 

「おまえの気持ちはどうなんだ?」

 

 

「僕?うーん、よく分からないよ。だって僕、陸上に忙しくて。。。そんな風に考えたことがないから。。。」

 

 

英二の言葉を聞いて俺は心底安堵した。これで今夜はぐっすりと眠れる。だがまだ心配は尽きない。

 

(ひょっとしてリホの片思いなのか。その割に元カノ感を出していた気がするが。。。)

 

 

「おまえ、思わせぶりな態度とっちまったんじゃねぇの?断れずに相手のペースに巻き込まれたから変な噂が流れたんだろう?」

 

 

額から妙な汗を流しながら、英二は固まった。

 

 

「僕、本当にそういうの疎くて。。。。去年、リホちゃんがとつぜん”付き合ってくれる?”と聞いてきたんだ」

 

 

「ほら、やっぱり告白されたんじゃないか」

 

 

「部活の後だったからとにかく眠くて、ちゃんと聞いていなかったんだよ。リホちゃんがどこかに行きたいとか話してたから、そこに一緒に行けばいいのかなと思って”うん”って答えたんだ」

 

 

「。。。。は?」

 

 

俺は英二の言葉に絶句した。お気楽天然野郎だとは思っていたが、これほどまでにひどいとは思っていなかった。

 

 

「おいおい、相手は勘違いしちまっただろう?」

 

 

「うん。。。どこに行くのかと思ったら地元の遊園地でさ。それをクラスメイトに見られたからすっかり誤解されちゃって。変な噂たてられてリホちゃんに悪かったなーって思ってる」

 

 

「相手はその噂に喜んだんじゃねぇの?ライバルが減るから」

 

 

 

「何言ってるんだよ、リホちゃんが僕を好きだなんてあり得ないよ。あはは。その後、大事な試合が控えてたからずーっと朝から晩までトレーニングしていたんだ。そしたら、ある日リホちゃんが泣きそうな顔で ”もういいわ、終わりよ!” って言うんだよ。。。」

 

 

「あーぁ。。。」

 

 

(放ったらかしにされてプライドが傷ついたんだろうな。。。思わず別れの言葉を告げちまったってところか。。。)

 

 

「それで僕、もうリホちゃんの行きたい場所に付き合わなくても良いんだってわかったから余計に部活に専念できたよ。お陰でその時は優勝できた。」

 

 

「。。。。。」

 

(ヤバイ。。。すごくズレてるぞ。。。こいつ。。。)

 

 

いつの間にか押し切られて付き合うカタチになり、棒高跳びに夢中になっているうちに、呆れられて一方的に振られたカタチになった英二のことを哀れに思うべきか、自業自得だと思うべきか判断の難しいところだった。

 

 

ただの天然では済まされないレベルの英二に当分恋愛は難しいだろう。気兼ねなく付き合える男友達の方が良いはずだ。

少々リホに同情しながらも、きっとまだ英二を諦めていないであろう彼女にどう対策をとるべきかアッシュは考えていた。

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。 自分の知らないところで勝手に付き合ったことになって勝手に振られたことになっている英二です(涙)この話のアッシュの英二への気持ちは恋愛よりは独占欲に近いかな。。。とにかく英二に甘えたいアッシュです。

 

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もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのタイムワープ話の続きです。名前のあるモブ女の子登場しますのでご注意くださいませ

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

 

第四話:謎の少女

 

 

閻魔大王に与えられたワンルームで俺は荷ほどきを始めた。箱から荷物を取り出してフローリングの上に置く。だがその手はいつの間にか止まっていた。この夢のような世界に俺はまだ戸惑っていた。

 

 

俺の望んだものについて考えていた。

 

 

(一体俺は何を望んだ?)

 

 

この”設定”から、それは英二に関する何かであることは明らかだ。だがどうしても理解できないことがいくつかある。どうして高校生の英二である必要があるのだろうか?

 

(確かあいつ、大学生って言ってただろ?)

 

 

俺の年齢に合わせた設定なのかもしれない。俺はスクールに通いたかったのか? 英二と一緒に?

 

(。。。どうも、しっくりとこない)

 

 

常に生きるか死ぬかの状況だったとはいえ、呑気な高校生活を送ることを望んだとは思えない。それならば、俺の命と引き換えにグリフやショーター、スキップが生き返ることを望む。

 

 

閻魔大王は俺の他の望みも知っていたはずだ。だが誰かの生死に関わるものは叶えられないと言った。

 

 

「あぁ、わからねー、何かヒントは。。。? こんなんじゃ、あっという間に半年経っちまうぞ?」

 

 

 

俺はヒステリックに叫んだ。すると窓からコンッと何かがぶつかった音がした。

 

 

窓を開けると、傘を手に持った英二が俺に向かって笑っていた。どうやら傘の先端で俺の窓を小突いたようだ。

 

 

「やぁ、アッシュ。久しぶり」

 

俺はニヤッと笑って答えた。

 

「あぁ、英二。1時間ぶりだな」

 

 

「。。。荷ほどきは順調かい?」

 

 

「整理整頓は苦手だ。全部床にぶちまげてやった」

 

 

「うーん、それは休憩が必要だな。」

 

 

「おまえがくれた愛読書でも読めと?」

 

俺は視線を床に転がっている少年サ●デーに向けた。

 

 

「それも良いんだけど。。。もし飯食ってないなら、うちで食べていけよ。母さんに君のこと話したら、一緒に夕食どうかって」

 

 

「え。。。おまえのうちで?」

 

 

「あぁ、簡単なものしかないけど。その後よければ僕の部屋で。。。」

 

 

「行く!」

 

食い気味に俺は返事していた。

 

「はやっ!」

 

 

「スッゲー腹減ってるんだ」

 

(それに英二の部屋を見てみたい)

 

ひょっとして俺の願望が「英二の部屋を訪れること」かもしれないしな、と俺は自分自身になぜか言い訳をしていた。

 

 

 

 

 

結果として、俺の望みはそうでは無かったようだ。だが俺は奥村家の家族と対面し、きちんと挨拶をして夕食をご馳走になった。

 

 

英二の母親は入院している父親に代わってパートが忙しく、ほとんど家を留守にしているようだ。細かい家事は妹と祖母が交代でしているらしい。女ばかりで口やかましいから嫌だと英二は言っていた。俺はもっと口やかましい女どもを知っているから、奥村家の女性たちはとても慎ましくて穏やかに見えた。

 

 

驚いたのは食事だ。俺が見たこともないようなヘルシーでまともな飯だった。簡単なもので恥ずかしいと英二の母親は照れていたが、正直言って俺の胃袋的にはパーフェクトだった。豆腐に野菜、新鮮な魚に地元のコメ。。。どれも俺の口にあったので、珍しくライスのお代わりをしてしまった。

 

高校生の英二は家事など全くしていない様子だったが、のちに英二が俺に作ってくれる食事は母親から自然と受け継いだものなのだろう。メニューがよく似ていた。

 

そして俺にとって恐怖の納豆も食卓に並んでいたが、それだけは丁寧にお断りした。

 

 

 

***

 

 

制服が手元に届くのに1週間かかるということで、俺はシンプルな白のシャツにジーンズ。。。要するにいつもの格好で通学することが許された。

 

 

隣に住む英二が自然と俺の世話係として教員の間で認識されるようになり、俺の通学初日は英二と一緒に行くことになった。

 

 

ドアを開けると、教室は一瞬にてどよめいた。

 

「ウオォ。。。!!」

 

皆俺を見て固まっている。口元を手で押さえて叫ぶのを我慢している女子生徒、あんぐりと口を開けてボーッとしている男子生徒。。。

 

 

俺は思わず肘で英二を小突いた。

 

 

「オイ、一体なんだ?ここにいる奴らは外国人を見たことがないのか?」

 

 

「。。。。はは、みんな君があまりにカッコ良いからびっくりしているのさ。悪気はないよ。」

 

 

確かに俺をジロジロ見てはいるが、俺が今までくらっていた嫌な種類の、セクシュアルなものでは無かった。

 

 

「ふぅん。。。まぁ、いいけどよ。。。まるでオリの中にいる動物みたいな気分だぜ」

 

 

身の危険がない分ずっとマシなのだが、学校生活を送ったことのない俺にとってこれはキツい。慣れない視線に俺はどうして良いのかわからなかった。

 

 

「いやぁ、それだけ君は魅力的ってことだよ。僕、君のことを自慢に思うよ!」

 

何てことないと言った口調で英二は笑って言い切った。

 

 

「。。。。。」

 

 

英二が俺を自慢に思うと言っただけで、なぜか俺の胸は高揚した。我ながら単純だ。視線には慣れないが、きっとすぐ見飽きるだろうと思うことにした。

 

 

 

担任教師からの説明の後、簡単な自己紹介をしろと言われて俺は日本語で挨拶をした。なぜか俺が日本語を話すたびに生徒たちは「オォっ!」「すげー!俺より上手かも」と反応してくる。

 

 

日本での生活に慣れていない俺のために、教師は英二の席のひとつ前に座るよう俺に指示した。

 

 

 

***

 

 

 

「ねぇ、見た?アスランくん!」

「あぁ、イケメンの留学生よね。でも日本語が上手!」

「カッコいいなぁー彼女とかいるのかな?」

 

 

 

休み時間毎に色々な人間が俺を見るためにやってきた。

 

 

「おーい、アッシュ。食堂行こうぜ?お昼ご飯持ってきてないだろ?」

 

 

英二が声をかけてきた。正直腹は減っていないが、どこかに逃げたい気分だったので丁度よい。

 

俺たちは食堂にある売店でパンとおにぎりを買い、英二オススメの陸上部員が使用するグラウンドにあるベンチに腰掛けた。

 

 

「特等席だな」

 

「いいだろ?時々僕もここで休憩するよ」

 

「どんな時に?」

 

 

「うーん、ちょっと疲れた時とか、気分が乗らない時とか」

 

 

「へー、意外だな。おまえ、いつもニコニコしているし、友達からよく話しかけられてるから。。。」

 

 

「。。。試合前とか、ちょっとナーバスになっちゃうんだ。悪気はないのはわかってるけど、先生や友達から”期待”されると辛い時があるよ」

 

 

「。。。。」

 

俺は焼きそばパンを口に頬張りながら、英二の横顔をみた。

 

 

グラウンドの遠くを見る英二は何か迷っているような表情だった。

 

 

「棒高跳びの選手ってこの学校に何人いるの?」

 

 

「5人くらいかな」

 

 

「おまえ、関西地区のトップなんだろ? インターハイでトップも狙えるほどの実力だって。。。。隣の席の女子が俺に話しかけてきた。俺は聞いてもいないのに」

 

 

「あはは、モテる男は辛いね。トップかぁ。。。どうだろう。関東にすっごい強い選手がいるんだ。僕は一度も彼に勝てたことがない」

 

 

「インターハイっていつ?」

 

 

「2ヶ月後だよ。」

 

 

「。。。俺、絶対に応援する」

 

 

「本当?嬉しいな。。。アッシュに応援してもらえると力が湧いてくるよ」

 

 

「お前の練習記録はある?動画は?試合はもちろん、練習中のものもあれば全て見せてくれ」

 

 

「。。。え、どうしたの?」

 

 

「あぁ、ライバルのことについても調べないとな。お前のコーチは誰だ?紹介してくれ」

 

 

「。。。アッシュって陸上経験者だっけ?」

 

 

「全くない。ルールも知らない」

 

 

「。。。。ぷっ!あははは!真面目に言うからてっきり。。。騙されたぁ!」

 

 

「え?俺は本気だけど。。。分析してお前を絶対にトップにしてやろうと思って。。。」

 

 

「もう、僕がプレッシャーで押しつぶされそうになっていると思ったからそんなこと言ったんだろう?」

 

 

「え、だから本気だって。。。」

 

 

その時、俺たちの座るベンチに影が差し、誰かが目の前に立っていることに気がついた。ふだんの俺なら気配に気がついただろうが、やはり英二がそばにいると調子が狂う。

 

 

 

「英二くん」

 

 

すらりと背が高く、黒髪をポニーテールにした女子生徒だった。肌の色が白く、目は大きくてまっすぐ英二を見つめている。セーラー服がよく似合っていて、スカートの裾から見える足は膝から足首までまっすぐで綺麗なラインだ。

 

愛らしい顔と綺麗なボディラインをしているので、この田舎ではきっと目立つだろう。

 

 

(。。。この子、誰だっけ? クラスメイトではないよな。。。)

 

 

「あ。。。」

 

その子をみて、英二は戸惑うような表情を見せた。

 

 

「参ったな。。。見つかったか」

 

 

そう言って英二は頭を掻いた。

 

 

 

「またこんな所にいたんだ。また試合のことで悩んでるのね?」

 

 

 

(”また” ?”悩んでる?” 随分英二のことをよく知っていそうな口ぶりだな。。。)

 

 

 

アッシュは無遠慮に真横から女子生徒を観察していた。

 

 

「あ、留学生のお友達も一緒だね。ごめんね、邪魔して」

 

 

 

金髪翠目で誰もが羨むほどの美貌のアッシュが横にいるのにその存在にすぐ気づかないはずがない。アッシュはピンときた。この女子は英二に特別な感情を抱いていることを。

 

 

そして英二が休憩時間にこのベンチに座る意味を理解している。それだけ他の生徒より英二と近しい距離にあるということを。

 

 

「いや。。。」

 

 

何だかモヤモヤする気持ちを落ち着かせようとアッシュは深呼吸をした。

 

 

 

「ねぇ、英二くん。困ったことがあるならいつでも。。。何でも話してね。」

 

 

「うん。。。ありがとう」

 

どこか煮え切らない態度の英二をアッシュは不審そうに見ていた。

 

 

(嫌なのか?そうじゃないのか?)

 

 

その時、女子生徒の友達たちが声をかけてきた。

 

「リホー!!次、体育でしょ? 更衣室行くよー」

 

「うん、今行くーまたね、英二くん」

 

 

リホ、と呼ばれた彼女は英二に笑顔を見せて手を振って去っていった。

 

 

「。。。。ふぅー」

 

なぜか深いため息をつく英二を見て、俺はちょっと意地悪な気分になった。おいてけぼりをくらったような気持ちだったからだ。

 

 

「英二、何で元気なくしてんの?」

 

 

わざとニヤニヤしながら聞いてみたが、英二は俺の意図には気づかず地面をみたままオニギリに食いついた。

 

 

「いや。。。あ、カツオブシ買いたかったのに梅干し買っちゃった。どうりで酸っぱいわけだ。。。」

 

 

独り言のように英二は呟いた。

 

 

***

 

 

 

昼食後、俺たちはックラスに戻ってきた。英二がトイレに行っている間、チャンスとばかりに隣の女子がまた俺に話しかけてきた。適当に流していたが、ふと先ほどの女のことが気になった。

 

 

「。。。なぁ、リホって知ってる?英二と仲よさそうだったけど」

 

「え、リホ。。。!? あぁ、英二くんのね」

 

含みのある言い方に俺はピクッと反応した。

 

「ーはっ?”英二の” って?」

 

「えっと。。。色々と噂があって、私もハッキリとは分からないんだけど、英二くんの元カノらしいよ」

 

 

「。。。元。。。カノ?」

 

 

何かの聞き間違いかと思った。現実の俺は、少し前あいつに’’ガールフレンドはいるのか?”と聞いたらあいつは照れ臭そうに”女友達なら。。。”答えたのだ。ハッキリ問い詰めた訳ではないが、俺は勝手に英二は今までガールフレンドはいたことがないと思い込んでいた。

 

 

まさかの言葉に俺は頭を何かで殴られたかのような衝撃を受けた。背中から冷んやりと汗でて気持ちが悪い。隣の女子は俺が日本語を理解していないと思って、余計なことに再度説明してきた。

 

 

「あぁ。。。元カノってのは、か・の・じ・ょ! 昔のガールフレンドってこと!」

 

 

 

その言葉に俺の思考と体は完全に硬直した。何かがポキっと折れたような音がしたように思う。

 

 

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。 アッシュ、本気で英二のコーチしようと思っています(笑)めちゃくちゃ分析してくれそうだけど、英二には冗談としかとってもらえないところがかわいそう(涙)

 

モブ女の子出てきますので、ちょっと苦手だと思われた方ごめんなさいね。でもあまり出しゃばりませんのでご安心を。。。

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのタイムワープ話の続きです。個人的に高校生の英二ってもっと天然で子供っぽいところがあるかな〜と思っています。そういうところをちょっと表現してみました(笑)

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

第三話:都合のよい設定

 

 

 

 

英二に連れてこられた職員室で、俺は自分の現状を知った。教師が英二に俺の状況をペラペラ説明しだしたからだ。

 

 

どうやら俺は英二の通う高校の”交換留学生”らしい。NYに住んでいる日本びいきの両親(会ったこともないが)の影響で、日本語はすでにペラペラ(なんて都合のよい設定だ)。日本文化と最新技術を学ぶため、半年間だけこっちで過ごすことになっているそうだ。

 

「まだ制服の採寸が終わってないから当分は私服で通学してもらうしかないだろう」

 

「きっとアッシュなら似合うでしょうね。クラスの皆も驚くだろうなぁ。。。」

 

 

 

なぜか教師と英二は勝手に盛り上がっている。まぁ、英二が話し上手だからってのもあるだろうが。

 

 

「奥村、アスラン君のお父さんは有名な銀行家でな。お母さんはモデル兼ジャーナリストらしい」

 

「はぁ〜、すっごいですねぇ。想像つかないや!」

 

 

俺はジーっと他人事のようにただ聞いていた。

 

(へぇー、俺の親ってそういう設定なんだ)

 

 

こっちの世界にいる自分に関する重大な情報だから、本来はしっかり聞いておくべきなのだろう。閻魔大王の設定通りに俺は行動しないと不審がられてしまう。

 

だが、やはり他人事としか思えなかった。

 

何せ現実の俺は殺人鬼でストリートキッズのボスで、しかもオーサーに刺されて死にかけている。生きているのか死んでいるのかも分からない状態だ。

 

 

(もし俺が全く違う人生を歩んでいたのなら。。。)

 

続きを考えようとしたが、何だか気持ちがもやもやする。そんなことなどありえないからだ。目の前で起こっているのは、いわば夢のようなもので、閻魔大王のちょっとしたお遊びみたいなものなのだ。だから本気にしてはいけない。

 

 

「。。。じゃぁ、奥村。部活の邪魔をして悪かったな。アスラン君のことを頼むぞ」

 

「大丈夫ですよ、先生。今日やることはほとんど終わってますから。じゃ、行こうか、アッシュ!」

 

 

「。。。。」

 

 

俺は床をじっと見ながら考えことを

 

「。。。アッシュ?」

 

 

ポンと肩を叩かれ、俺は慌てて顔を上げた。

 

 

(やっべー、聞いてなかった)

 

 

「え、どこかへ行くのか?」

 

 

「どこって君の家に帰るんだよ。」

 

 

「あー。。。」

 

(しまった、俺ってどこに住んでるんだっけ?)

 

 

頭をぽりぽりと掻きながら何と答えるべきか迷った。まさか宿なしですとは言えない。家も分からないだなんて怪しすぎるだろう。閻魔大王にちゃんと聞いておけばよかったと俺は無下にしたことを後悔しはじめた。

 

 

ふっと俺の目の前に鍵が差し出され、俺は思わず顔を見上げた。

 

 

「先生から受け取ったよ。。。君の家の鍵。君のお父さんが学校に預かってもらうよう大家さんにお願いしたみたいだね。。。それにしても、空港から直行で学校に来ただなんて疲れただろう?荷物は先に届いているって先生が言ってたよ」

 

 

どうやら俺の寝床は保証されているらしい。俺は安堵のため息をついたが、英二はいい具合に誤解してくれたようだ。

 

 

「。。。。いやぁ、もう疲れたぜ」

 

(別の意味でハラハラしてだけどな。。。)

 

 

「先生がどうして僕を呼んだのか分かったよ」

 

 

英二がカラカラと笑い、自分のカバンから長袖ジャージを取り出して羽織った。今日の練習は終わりにするらしい。

 

 

「。。。? どういうこと?」

 

 

「行ってみたらわかるよ。さ、行こう」

 

 

 

***

 

 

 

学校の外は住宅街だった。狭い歩道を歩きながら坂道を下っていく。どこか懐かしい感じの木造建物や、昔ながらの個人商店、小さいが落ち着いた感じの公園などがある。人はまだらで車もほとんど走っていない。

 

 

「こっちの道が近道だよ」

 

 

英二が指差した方はコンクリート舗装されていない小道だった。もう夕方近くになっているので空はオレンジ色になり、木の陰が長くなっている。心地よい風がサワサワと通り抜けていった。

 

 

俺たちは肩を並べてまっすぐ歩いていく。ここが英二の故郷なのかと思うと感慨深い。時々知り合いが通るらしく、英二はすれ違うたびに丁寧に頭をさげて挨拶をする。

 

 

田舎道は静かで、俺たちの足音と鳥の鳴き声以外に聞こえるものはなかった。俺たちはすっかり無言になっていたが、息苦しさを感じることはなかった。英二の隣にいるのは不思議と心地よいのだ。

 

俺にとって随分”都合のよい設定”にしてくれたものだと俺は閻魔大王の情けに思わず苦笑しそうになった。

 

 

ふと俺は英二が制服を着ていないことに気がついた。

 

 

「あれ、お前。。。着替えないのか?」

 

 

「うん、汗かいたし、着替えるの面倒くさいもん。どうせすぐ風呂に入るから。。。だからいつも帰りはジャージ姿さ」

 

 

英二はクンクンと着ているシャツを匂って、わざと大げさに”汗臭い”と舌を出した。

 

 

「はははっ、お前らしいな」

 

 

俺の言葉に英二は立ち止まった。

 

 

「え?。。。僕らしい?」

 

 

「。。。。あ」

 

俺は自分の失言に気がついた。いつの間にかふだん英二といる時のような感覚に陥っていたからだ。

 

(出会って間もないないのに、”おまえらしい”なんて不自然にもほどがあるだろう)

 

 

 

「。。。俺の日本語おかしかったか?まだ勉強中なんだ」

 

 

咄嗟に俺は誤魔化した。日本語が話せる設定だとは言え、本来俺はアメリカなのだから表現を間違えることもあるだろう。

 

 

「。。。。ううん。上手だよ」

 

 

英二は否定せず、道端の石ころを足で蹴飛ばした。

 

 

「。。。。。」

 

 

(こういう優しさもこいつらしいな)

 

 

俺たちは15分ほど歩き、ある古い一軒家にたどり着いた。青い瓦屋根に白い壁の2階建木造住宅だ。小さな庭には大きな木と家庭菜園用らしき小さな畑がある。1階には縁側付きの和室、2階には個人の部屋がいくつかあるようだ。

 

 

「ここ?俺の家って」

 

俺は家を見上げた。まさか一軒家だとは思わなかった。

 

 

「いや、ここは僕の家」

 

 

「英二の?」

 

 

なぜ英二は自分の家に俺を連れてきたのだろうかと不思議に思っていると、英二は隣の建物を指差した。そこは単身者用の2階建ハイツだ。

 

 

「ここだよ、君の家」

 

 

「え、おまえの家の隣なのか?」

 

 

「そうみたいだね。えーっと、201号室。。。あ、あの角部屋だね。わぁ、僕の部屋と真向かいじゃないか」

 

 

「えぇっ!」

 

英二は自分の部屋はあそこだと指差した。俺の部屋と隣接していて、窓ごしに会話できそうだ。

 

 

「ね、君の部屋、見に行ってもいいかな?」

 

「あ、あぁ構わないけど。。。」

 

 

「じゃぁ、行こうぜ!」

 

いたずらっ子のように英二はワクワクしているようで、モタモタしている俺の手を引っ張りながらハイツへと入っていく。

 

 

 

 

俺の部屋は家具が備え付けられたシンプルなワンルームだった。机とベッド、着替えや生活必要品の入った段ボールが数箱積み重なっていた。

 

 

英二はキョロキョロと俺の部屋を眺めて ”いいなぁ〜。シンプルなモノトーンの家具がかっこいい!”と言いながら窓に近づいていく。そして窓を開けた。

 

 

「アッシュ!そこで待ってて!」

 

 

そう言った後、英二は部屋からかけて出て行った。俺も窓から外を眺めていると、英二がハイツから出てきて急ぎ足で自分の家に入り、ドタバタと走る音が聞こえたかと思うとガラッと二階の部屋の窓が開いた。

 

 

「おーい!やっぱり近いね!」

 

 

英二は窓から俺に手を振った。

 

 

 

「あぁ、これ。。。手を伸ばせば届くんじゃないのか?」

 

 

「本当だね。ねぇ時々ここで話ししようよ。落ち着いたら君の部屋にも遊びに行かせて!」

 

 

「。。。別に構わないけど」

 

 

「僕の部屋にも来てよ。狭いけどね」

 

 

「。。。ん」

 

 

英二の部屋はどうなっているのか正直気になっていたので、俺は素直に頷いた。

 

 

「じゃぁ、これは君の引っ越し祝いに」

 

 

そう言って英二は厚みのある本のようなものを手にとって”投げるよ〜”と言ってゆっくり放り投げてきた。

 

バサッと音がしてちょっとザラザラした感覚の本を俺は受け取った。

 

 

それは『少年サ●デー』と書かれた英二の愛読コミックだった。

 

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。 アッシュの家、英二と同居でも面白いと思ったのですが、お隣さんにしてみました。これじゃほぼ通いつめますよね。。。創作しているうちにどんどん内容が(最初に考えていたのと比べて)変わっていくので、ラストはどうなるのか自分でも想像つきません。更新速度もまちまちになると思いますが、楽しんでくださったら嬉しいです。

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。いやぁ。。。久しぶりのブログ更新です。二ヶ月以上経ってる?忘れられてるかもしれませんが。。。拍手ボタンに拍手、コメントくださった読者様ありがとうございます!

 

わたくし、プライベートがちょっと忙しくて怠けてました(笑)

引っ越し後、庭の手入れと家の気に入らないところをDIYしたり(かなりハマってます)、仕事が忙しくなったり、息子の保育園行事が忙しかったりで。。。やっとひと段落ついたかな。あっというまにハロウィンじゃないですか!

 

ハロウィン創作は時間が足らず間に合いませんでしたが、創作中のif設定小説の第二話をUPしたいと思います。内容をお忘れの方の為にあらすじをいいますと、オーサー戦後、生死をさまようアッシュがなぜか閻魔大王の捌きを受けることになります(笑)本来なら地獄行き決定のはずのアッシュですが、彼の生い立ちに同情した閻魔大王が望みを叶えようと期間限定である約束をします。ですが、肝心のアッシュはそれが何か分からないまま過去にタイムワープして英二と出会ってしまう。。。というゆるーい設定です。細かいことは気になさらずにお付き合いいただければ幸いです。

 

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 

 第二話:高校生の英二

 

 

オーサー戦で生死をさまよった俺、アッシュ・リンクスは地獄送りになる寸前だったが、閻魔大王に情けをかけられて英二と知り合う前の過去に送られた(生死はハッキリしないがおそらく死んではいない)。半年間の間に俺が心の中で切望した”何か”を達成しなければならないらしい。だが俺にはそれが何か分からねぇ。。。期限内に叶わなければ地獄送り、叶っても俺の素行を見て今後を決定するらしい。。。なんてふざけた話なんだ。

 

 

過去の日本に送られ、高校生の英二と対面してしまった俺はこいつの顔をまともに直視できなかった。英二は童顔だが、高校生の英二は何ていうか。。。更に幼く、ひょっとして小学生と間違えられるかもしれないなという印象だ。

 

 

汚れを知らないであろう澄んだ瞳にツヤツヤとした黒髪、浅黒く日焼けした肌が眩しくて直視できそうにない。生命力に溢れたこいつを見るのはなんだか嬉しいやら恥ずかしやらで、とにかくどうすれば良いかわからなかった。

 

 

 

「あ。。。俺は。。。」

 

(そもそも、俺、こいつとまともに話せるのかな? 英二の英語はひっでぇなぁ。。。)

 

日本語の話せない俺がどうして今の英二と対話できるのだろうか。俺はどんどん不安になり、冷や汗で背中がゾクゾクしてきた。

 

戸惑っている俺の頭の中に低くくぐもった男の声が響きだした。

 

【おい、アッシュ。聞こえるか?】

 

 

思い出したくもねぇが、これは閻魔大王の声だ。俺は心の中で思い切り舌打ちをした。

 

 

【よく聞け。私はお前の心に話しかけている。お前が心で思ったことは全て私に聞こえていると思え。。。だから舌打ちなどするでないぞ、フォッフォッ。。。あぁ、私たちの声はこの少年には聞こえないから安心しなさい。】

 

 

英二は不思議そうに俺を見つめているが、俺は自分の心を落ち着かせるためにゴホンと咳払いをし、心の中でつぶやきはじめた。

 

【おい、俺はいまどういう状況なんだ。。。?なぜ過去の。。。日本にいるんだよ?しかも英二は英語がまともに話せねぇじゃないか!】

 

 

【大丈夫じゃ。お前は留学生という設定じゃ。周りが勝手に教えてくれるからそれに合わせておけ。】

 

【はぁ〜?てめぇ、何を適当な事言ってるんだよ!】

 

 

眉間にシワを寄せながら俺は天を仰いだ。この青空のどこかで忌々しい閻魔大王が俺に話しかけているのかと思うと胸糞が悪い。せっかく高校生の英二に会えたのに素直に喜ぶことのできない状況に俺は顔をひきつらせた。

 

 

突然クスクスと笑い声が聞こえたので視線を向けると、英二が可笑しそうに俺を見ていたのに気がついた。

 

(しまった。閻魔大王が気になって目の前にいる英二のことを忘れていた。。。)

 

妙なやつだと思われたかと俺は内心焦っていたが、できるだけ表情に出さないよう英二の顔をジーっと見つめた。英二は人懐っこい笑顔を俺に向けて一歩距離を縮めてきた。ほどよく筋肉のついた英二の腕が俺の目の前にのびてきた。何だと思ったら、俺に手を差し出してきた。その時、俺は自分がマットレスの上に座っていることに気がついた。

 

どうやら英二はマットの上にいる俺を立ち上がらせるつもりらしい。

 

英二の手は少し日に焼けてやや骨ばっているように見えるが、思ったより柔らかくて驚いた。手にとってよいか迷ったが、彼の綺麗な肌に引き寄せられるように俺は自分のものを差し出していた。

 

「。。。。」

 

何となく気まずくて、英二の顔を見ることが俺はできなかった。英二はカラカラと明るく笑いながら話しかけてきた。

 

「君、、、まだ寝ぼけてるの? あはは、マットの上で昼寝している子なんて、はじめて見たよ。もし昼寝の邪魔をしたのならごめん。でもそろそろ僕、練習しないといけないから。。。」

 

 

英語は無理だと判断した英二は日本語で話してきた。だが、どういうわけか俺はそれが理解できた。癪だが、これは閻魔大王の力なのだろう。英二の言っていることが分かるので正直ありがたい。

 

「あ。。。悪い、邪魔したな。。。」

 

 

英語で返答したつもりだったのだが、どこかで聞いたような別の言語が自分自身の声で聞こえてきたので俺はものすごく驚いた。

 

(俺はなんて言ったんだ? この言語ってまさか。。。)

 

 

英二は首を左右に振ってやんわりと否定した。こいつの様子から、どうやら俺は日本語で返答したらしい。これも閻魔大王のしわざなのだろうか。

 

 

 

「君、日本語、上手だね。。。そうそう、君の名前は? 」

 

 

俺はちょっとだけ名乗ることを躊躇したが、本名を伝えることにした。

 

 

「。。。。アスラン・ジェイド・カーリンレース」

 

 

俺の名前を復唱する英二をじっとみていたが、特に過剰な反応を示すこともなかった。

 

 

「アスラン君だね、僕はエイジだよ。さ、職員室まで案内するよ」

 

 

人懐っこい笑顔を見せてくれたが、”アッシュ”と呼んでくれないことが何だか寂しくて距離を感じてもどかしい。俺の知っている英二とは少しちがっている。まだ出会う前だから当たり前なのだが。

 

 

「。。。。アッシュと呼んでくれ」

 

 

何だか照れくさくて、まっすぐこいつの目を見ることが出来なかった。いつも俺に注いでくれる温かい感情を過去の英二に求めるだなんて馬鹿げている。だが、そうせずには俺は正常でいられそうになかった。

 

 

「アッシュ? ニックネームかな? わかった、アッシュ!」

 

首を傾げながらも、英二は頷いてくれた。

 

 

「ねぇ、アッシュは。。。」

 

「おーい、奥村! その子を連れてきてくれ!」

 

 

英二の問いを妨げるように、校舎の窓越しに教師らしき中年男性が腕を振っている。

 

 

「はい!先生!」

 

 

爽やかな声で返事をした後、英二は白い歯を見せて俺に微笑みかけた。

 

 

「アッシュ、先生が呼んでるから行こう。きっと色々説明してくれるよ」

 

 

ほんの数分前に出会ったばかりなのに、英二はまるでずっと昔からの親友であったかのような自然な口調で俺に話しかけてきた。思わずはじめてこいつと出会った時のことを思い出してしまった。

 

 

こいつのこういうところ、不思議だなと思う。そしてそれが嬉しいと俺は思う。

 

 

「。。。あぁ。英二」

 

 

 

この時代の英二と出会うことと、俺が望んだものがどう関係しているのかまだ分からない。こいつと楽しい高校生活を送ることを望んだわけではないのだ。だが、何か理由があるに違いない。

 

 

(まだ期間は半年ある。。。もし叶わなかったとしても俺は別に構わない。。。”現実”の英二が無事でいてくれるのなら。。。

 

 

 

俺たちは肩を並べて校舎に向かって歩き始めた。

 

 

「あの先生、僕のクラスの担任なんだ。ひょっとしてアッシュも同じクラスかな? そうだったらいいのになぁー」

 

 

「そうだな」

 

ここの世界はかなり安全なのだろう。学校の門は開いているし守衛はいない。念の為、俺は自分の腰に手を当ててみたが、もちろん銃など持っていなかった。少々不安はあるものの、平和ボケした連中相手ならどんな状況になっても戦う自信はあった。

 

 

(どうせ死にかけてる身だ。。。地獄送りになる前に楽しい思い出でも作ってみるか)

 

 

 

覚悟が決まると、なんだか力が抜けてリラックスしてきたようだ。高校生の英二がどんな生活をしていたのかも正直みてみたい。

 

 

「ふふっ。。。」

 

 

なんだかおかしくて俺は笑い出した。

 

 

(殺人鬼のアッシュ・リンクスが高校生になるだって!俺の仲間たちが知ったらどんな顔するだろうか?)

 

 

 

「あ、アッシュ。やっと笑ってくれたね。ちょっと緊張が解けたかな?」

 

 

「。。。」

 

 

「ン? 困ったことがあったら僕に聞いてね」

 

 

 

「あぁ、よろしくな。オニイチャン」

 

 

「えっ、おにいちゃん?? どういう意味?」

 

 

俺にとって特別な言葉なのだが、当然この世界の英二には理解ができない。目を丸くしている英二を追い越して俺はスタスタと歩き始めた。

 

 

「あ、アッシュ〜待って!」

 

俺を追いかける英二の声がする。振り返らず俺はニヤリと笑った。

 

 

 

 

*続*

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。 テンポ遅めになっちゃいましたが、また続き更新したいと思います。

 

拍手ボタンに拍手や一言コメント等くださったみなさま、ありがとうございます!茶虎さん、ジローママさん、お返事できなくてごめんなさいね。ちゃんとみていますよ。

 

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もしバナナフィッシュがハッピーエンドで終わるなら~365日あなたを幸せにする小説■BANANAFISH DREAM

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。アッシュのお誕生日記念に読み切りのお話を作りたかったのですが、時間が足らず間に合いませんでした。その代わりに今創作中のif設定小説の第一話をUPしたいと思います。オーサーと戦った後ぐらいを設定しています。地獄行き決定のはずのアッシュに同情した閻魔大王が彼の望みを叶えようとある約束をするが、肝心のアッシュはそれが何か分かっていない。。。というかなりふざけた設定です。細かいことは気になさらずにお付き合いいただければ幸いです。

 

 

〜アッシュが英二の高校時代にタイムワープ?〜

「俺が叶えたかった望み」

 

 第一話:地獄の主が俺に下した判決

 

 

 

「アッシュ・リンクスが倒れたぞ。腹部を刺されている!」

 

「こっちの少年も酷い出血だ!あぁ。。。彼はすでに死亡している」

 

「救急車を早く、こっちへ!」

 

パトカーのサイレン音と警察官達の叫び声が俺の頭に響いてくる。

 

(うるせぇな。。。)

 

身動きひとつできない俺はストレッチャーに乗せられ、救急車の中に押し込まれた。体はずしりと重く、凍えそうなほど寒い。しだいに眠気が襲ってきた。バタンと救急車の扉が閉まる音で、わずかに俺の意識が浮上した。

 

(そうか、俺はオーサーと。。。)

 

地下鉄で奴の罠にかかり、いく人もの敵と戦いながらとうとう勝利し、俺は瀕死の大怪我を負ったのだ。腹を思い切り深く刺されたし相当の血が流れていた。ひょっとして俺はこのまま死ぬかもしれない。 今頃、車両の中から多数の死体が発見されて大騒ぎになっているいるだろう。全て俺が倒した連中だ。

 

 

オーサーの罠にはめられたとはいえ、結果として大勢の人間を殺めてしまった。必死に逃げ惑う顔、何が何でも俺を仕留めようとする顔、恐怖にかられた顔、死を覚悟した諦めの顔、涙と血で汚れた顔。。。色々な顔が俺を追いかけてくる。

 

 

(死神が俺をあの世に連れ去って、きっと俺は地獄に行くだろうな。。。)

 

自分のしたことを思うと当然そうなるだろうと思った。

笑っちまうほど散々な人生だった。腹黒い大人達に利用され犯され、俺を恐れる連中には恨まれ裏切られ、まともな生活なんて送れやしなかった。

 

 

(まともな生活って。。。?)

 

ぼんやりと俺の頭に黒髪の友人の顔が浮かんだ。何がまともかなんて俺には分からないが、あいつのそばに居た時だけは不思議と安心できたことを思い出す。無意識のうちに、あいつみたいになりたいと思っていたのかもしれない。

 

 

(今頃あいつ、どうしているだろう。無茶していないだろうか。。。)

 

 

ヒュウっと喉の奥から声がでた。無意識のうちに俺はあいつを求めるように自分の手を伸ばしていた。そうは言っても体はほとんど動かないので指先が少し動いただけだった。

 

 

「エ。。。イ。。。」

 

 

最後まで言葉は続かなかった。酸素マスクをかぶされたからだ。

 

 

(英二。。。英二。。。ありがとう。。。おまえと会えて俺は。。。)

 

 

再びぼんやりと意識が薄くなってきた。”アッシュ!” と微笑むあいつの笑顔が見えた気がした。

 

 

 

 

***

 

 

 

どれぐらい時間が経っただろうか、喉の不快感で俺はとうとう目を覚ました。

 

 

「ン。。。」

 

 

目を開いた時、俺の周りはなぜかぼんやりと不明瞭だった。白い煙か霧のようなものがあたりにたちこめられている。匂いはないので火事ではないようだ。

 

 

(ここはどこだ。。。? 俺は助かったのか。。。?)

 

 

俺は自分の下腹部に目を向ける。おなじみのTシャツとジーンズ姿だったことに違和感を感じながらも、恐る恐るTシャツをめくってみた。

 

 

「な。。。!!」

 

 

声がでないほどの衝撃が俺を襲った。なぜならそこには包帯もガーゼもなく、何の傷もなかったからだ。

 

 

「ない。。。傷が無くなっている!確かに刺されたはずなのに」

 

 

もう一度確認のためにペタペタと触ってみたが、痛みもない。

 

 

「。。。。」

 

 

恐ろしくなり、俺はキョロキョロと周りを確認した。近くには誰もいなかった。

 

 

てっきりタコ坊主が俺を捉えて整形手術でも受けさせたのかと思ったが、ここは病院でもヤツの屋敷でもなさそうだ。俺以外の人間らしき姿もなければ、ベッドや机もない。生活感のあるものは何もなかった。

 

 

ゆっくりと立ち上がって足元をみると、なんとあるはずの地面がなく、スカスカに透けているではないか。そして白い霧の下には地上らしき山や海、森などが見えている。

 

 

目をこらしながら俺は上を見上げた。すると、わずかに青い空らしきものが見える。なんと俺は雲の中に立っているらしい。

 

 

(ここは雲の中。。。? これは夢なのか。。。?)

 

 

非現実的な光景に絶句していた俺の背後から、やや掠れた野太い声が聞こえてきた。

 

 

「。。。やっと目が覚めたか、アッシュ・リンクス」

 

 

 

突然名前を呼ばれて、俺はバッと背後を振り返った。人のいる気配などしなかったはずなのに。

 

 

「だ、誰だ!」

 

 

目の前に現れたのは俺の2ー3倍の大きさはあろう大男だ。顔は全体的に赤く、大きな鼻に顎には長い髭がある。ギョロリと大きな瞳が俺を睨みつけていた。異国風の白い衣装をまとい、頭には何やらみたことのない帽子をかぶっていた。

 

 

「でけぇ。。。」

 

(なんだこいつ!人間じゃないのか?それになぜ俺の名前を知っている?)

 

 

そいつの真っ赤な顔と何かに怒っているような表情をみていると、昔、英二が俺に見せてくれた日本を紹介する本の中に『天狗』という空想上の生き物に少し似ていると思った。だがそいつはそこまで鼻はでかくないし、確か羽が生えていて空が飛べたはずだ。こいつは何とも言いようのない威圧感がある。

 

 

 

「。。。。。」

 

 

呆気にとられつつもアッシュが男をジロジロと観察していたら、そいつはゴホンと咳払いをした。

 

 

「私は閻魔大王じゃ。」

 

 

「エンマ。。。ダイオウ? 何者だ、あんた?」

 

 

男はニヤッと笑った後、ブツブツと呟きだした。

 

 

「驚いたか? 本来おまえの国は私の管轄じゃないから本来私の仕事ではないから、おまえが私を知らないのも無理はない。。。だが先日わしは西洋神と飲み比べ競争をして負けちまってのぉ。。。厄介な仕事をわしに押し付けてきおった。。。全くもう。。。」

 

 

 

「。。。何言ってんの、おっさん」

 

 

俺の言葉にそいつの顔はもっと真っ赤になった。今にも顔から湯気がでそうだ。

 

 

「お、おっさん? なんと無礼な! このわしに向かって!すぐさまおまえを地獄に落としてやる!」

 

 

 

「あんた、地獄の管理人?」

 

 

 

「まぁ。。。そんなもんじゃ。私は地獄の主じゃ。お前の魂を裁くのがわしの仕事じゃ。だが、お主はかなり”特別”じゃのう。。。そうとうな罪を犯しているが。。。幼少時代に悲惨な経験をしているのぉ。これは裁くのが難しい。。。

 

 

さっきからほとんど確信していたが、俺は聞かずにはいられなかった。

 

 

「。。。俺は死んだのか?」

 

 

男は丸い眼鏡を取り出してかけ、何やら筆で書き込まれたノートのようなものをペラペラとめくり、あるところで手を止めて何かを読み始めた。ブツブツと言っているので何を話しているのか分からなかったが。

 

 

「。。。まだ裁きの途中じゃ。おまえをどの段階の地獄に落とすかどうかわしが決めるまで、おまえは完全に死んではおらぬ。ふーむ、どうしたものか。難しい案件じゃ。。。おまえ、罪の数は多いくせに幼少期にとんでもない目にあっておるな。。。西洋神め、面倒になってわしに押し付けよって。。。」

 

 

歯ぎしりをして、男は忌々しそうに眉間にしわを寄せた。

 

 

「ははは、どうせ俺は地獄送りなんだから西洋神だろうが東洋神だろうが、一緒じゃねぇか。。。」

 

 

俺の文句に男は俺に目をくれずノートを見たまま答えた。

 

 

「どんな人間だろうが、裁きは平等に扱わないと他の神々から色々と言われるからな。。。罪は罪として償わねばならぬ、だが殺人鬼と言われたお前を作った周りの大人も相当な罪じゃ。そこは憂慮しなければならぬ。。。。ふーむ。何とも裁くのが難しい例じゃな。。。」

 

 

「地獄送り決定の俺に情けをかけてくれるっての?」

 

 

閻魔大王は手のひら同士を合わせ、何やら呪文のようなものを唱えた。そして手を離しすと男の手の平の間から水晶玉のようなものが現れた。そしてその玉の中に映像のようなものがプロジェクターのように映りだした。

 

 

思わず俺はその玉を覗き込んだ。とうのもそこにはそしてそこにはなんと赤ん坊の俺の姿が映っていたからだ。

 

 

(これはガキの頃の俺か。。。?)

 

 

赤ん坊と共にスラリとした金髪の女性の後ろ姿が映っていた。俺は自分の母親だと確信した。その女性は俺の父親と喧嘩をし、他の男とケープ・コッドを去っていった。何とも苦々しい想いで俺は水晶玉を睨みつけていた。

 

 

どうやらこの映像は俺のこれまでの人生ダイジェストをまとめたようなものだった。

 

しばらくグリフやジェニファなどに保護されていたようだが、やがてグリフがベトナムへ行き、ジェニファも俺の父親からあまり俺に関わるなと言われたようで距離をあけるようになった。

 

 

この後の展開を思うと、俺は次第に気分が悪くなっていった。

そして正直思い出したくもない暗黒の幼少時代を見せられ、俺は盛大に舌打ちをした後、思わず目を背けた。

 

 

「。。。。チッ」

 

 

閻魔大王がちらりと俺に視線を向けたが、俺は完全に無視していた。俺が見ないからか、映像は突然音声付きになった。

 

時が過ぎ、ある人物が俺に話しかける映像に切り替わった時、俺は思わず水晶玉に再び目を向けた。

 

 

「英二!」

 

 

ずっと会いたかった親友の声だった。不思議なもので、英二の声は誰よりも透き通っていて優しさと慈愛に満ちているように聞こえてきた。

 

 

俺の瞳が大きく見開いたことを閻魔大王は見逃さなかった。俺は水晶玉に映る英二に夢中で、あいつが危ない目にあった時は怒りに震え、あいつが俺を守ろうと必死になっている姿をみた時は俺は何ともいえない幸福感を味わっていた。

 

 

閻魔大王は興味深く俺の姿を見ているなど全く気にならなかった。もっと英二の姿が見たいと思うだけだった。

 

 

さらに映像は進み、オーサー戦で俺が負傷したところでようやく終了した。腕組みしながら閻魔大王はブツブツと何かひとりごとをつぶやいている。

 

 

 

「ふーむ。アッシュよ、おまえはこの世にまだ心残りがあるようじゃのう。。。」

 

 

俺は内心ドキリとした。もし英二に何か悪影響があるのならたまったもんじゃないと思ったからだ。

 

 

「はぁ? 何をわけ分からないことを言ってやがる。。。俺を地獄に送るんだろう?さっさとしやがれ!」

 

 

血相が変わった俺の姿を見て、閻魔大王は深いため息をついた。

 

 

「わしに嘘をついても無駄じゃ。。。おぬしの心はこの優しい青年に向けられておるのう。。。アッシュよ、地獄送りになる前に。。。最後に叶えたい望みはあるか?」

 

 

 

「望みを言えば叶えてくれるのかよ?じゃぁ、今すぐバナナフィッシュをこの世から消し去って、殺された俺の兄さんや仲間たち。。。ショーター達を助けろ! そしてディノ・ゴルツィネと俺を犯した連中どもをぶっ殺してくれ!」

 

 

英二のことが隠せないと気づいた俺は頭に血がのぼりそうになった。少しでも閻魔大王の気をそらそうと、必死だった。だが閻魔は首を左右にふった。

 

 

「物質や人命の存在に関する望みは叶えられない。余計にややこしくなるだけじゃ」

 

 

「はぁ、?なんだよ、それ!あんた地獄の管理人なんだろう?俺のことを同情するんだったら、それぐらい叶えろよ!」

 

 

「うぅむ、おぬしは強い復讐心を抱きすぎているようじゃな。そうしないと生きれなかったということか。。。残念だがそれはできぬ」

 

 

「チッ。。。じゃぁ、もう何もねぇよ!」

 

 

俺はじろりと閻魔大王を睨みつけて足元の雲を蹴飛ばしたが、ふわふわと白い靄が移動しただけだった。

 

 

「まぁ、そうカッカするな、ふーむ。」

 

閻魔大王は映像を逆戻しし始めた。そしてある箇所で止めた。それは俺がオーサーと決着をつける少し前の映像だった。英二と喧嘩して仲直りしたり、俺がピザ屋の店員に変装してイベやマックスの前に現れたり、仲間達とハロウィンパーティーをしたりとほろ苦くも楽しいひとときだった。

 

 

「ほう。。。。これなら何とかなりそうじゃ。それを叶えてやろう。もう一度下界に魂を送り込んでやる。」

 

 

閻魔大王はある場面で映像を止めた。俺が覗き込もうとするとスッと水晶玉が消えた。文句を言おうとすると、閻魔大王は立ち上がり、両手をあげて呪文を唱え出した。するとびゅうびゅうと風が強く舞い上がり、俺の足元にあった雲が薄くなっていく。どうやら今から俺は送り出されるらしい。

 

 

突然の展開に俺は少々面食らった。まだ聞きたいことが山ほどある。

 

 

「おい、俺はどうなるんだ? 地獄行きじゃないのかよ? それって生き返るってことか?」

 

 

「似ているがちょっと違うぞ。おまえに情けをかけてやるとはいったが、詳しく言っては面白くないじゃろう?判決は”保留”じゃ!お前の望みを叶えるまでの所業を見させてもらう。その後ここへもう一度戻ってきてもらう。その時に正式な裁きを受けてもらうぞ。」

 

 

閻魔大王はふざけてウインクをするが、俺は全く笑えなかった。

 

 

「。。。俺は何を望んだんだよ?」

 

 

「なんじゃ、覚えておらんのか? まぁいい。自分で思い出せ。あー、それから、いつまでもおまえがこっちに帰ってこないとまた西洋神に文句言われるから、半年以内にお前の望みが叶わなかったら強制的にこっちに戻ってきてもらうからな」

 

 

「はぁ?強引だな?たった半年で何ができるんだよ。もし望みが叶わなかったら?そもそも俺は何をしにどこへ行く。。。」

 

 

言いかけた俺の言葉が途切れた。俺の足元にあった雲が晴れ、俺の体は重力で地上に向かって落ちていく。

 

 

 

「うわぁぁあ!おい、このまま落ちたらまた死ぬぞ?」

 

 

大絶叫する俺を雲上の閻魔大王はフォッフォッと笑いながら見送っていた。

 

 

「その時は、おまえがどう変化したかを見てわしが判断しよう。。。。おぬしの望みが叶うといいな」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ーーーボフッ!! 俺の体は白いマットの上に落ちていた。すぐに自分の体を確認するが、どこも怪我はしていなかった。

 

 

(。。。ここはどこだ?)

 

 

陸上競技のグラウンドのような場所で、俺は競技用の大きなマットの上に落ちたようだ。

俺は思わず空を見上げた。

 

 

(くそ、閻魔大王め!)

 

 

 

その時、上からクスクスと笑う声が聞こえてきた。

 

 

 

「君、大丈夫? 今日はいい天気だし、空も綺麗だよね?」

 

 

どこかで聞いたことのある懐かしい笑い声に、俺はハッとなって振り返った。

 

 

 

「おまえ。。。。」

 

 

目の前にいるのは俺が会いたいと思っていた親友が立っていた。だが俺の知っているあいつとは少し違う。もともと童顔だが、髪が少し長いせいか2−3年さらに若く見える。肌はもっと日焼けしていて、小柄ながらも運動選手らしく手足によく筋肉がついていた。

 

 

大きな瞳に人懐っこい笑顔を俺に向けていた。

 

 

「君、見かけない顔だけど、誰だい?陸上に興味があるの?」

 

 

「。。。あんたは。。。?」

 

 

「あ、英語じゃないと伝わらないよね。。。」

 

 

目の前の少年は俺の知っているあいつよりもずっと下手くそな発音の英語で話し始めた。

 

 

「僕は、奥村英二。陸上部員で棒高跳びをしています。君は留学生?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*続*

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。 アッシュ、誕生日おめでとう!!英二にお祝いされるお話を創作したかったのですが、お盆なもので色々と忙しく。。。(汗)帰省中に続きを創作できればいいな。

 

アッシュと閻魔大王が会話するだなんてふざけてますよね。ちょっとお茶目な閻魔大王にしたくて、半分ギャグみたいは話になっちゃいました。

 

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皆さま、こんにちは!らぶばなですほっこり。ついさっき、頭がカッとなって一話読み切りの短いお話を書き上げましたウインク。前回がちょっとシリアスになったので今回はその反動でややコメディ?な感じのお話ですラブラブ。軽い気持ちでお読みくださいませ。。。

 

アッシュが一人悶々としておりますので、カッコよくて頭の良い彼が好きな方にはあまりオススメできません(笑)お付き合いいただければ幸いです。

 

 

「秘密のガールフレンド」

 

59丁目のアパートでは、いつものようにボーンズとコングが英二のもとを訪れていた。彼らには”英二の護衛と暇つぶしの相手”をボスから任されている。

 

大抵彼らはスナックや漫画、ゲームなどを持ち込み、英二に飲み物をいれてもらってダラダラと過ごすことが多い。リビングで雑談したり、昼寝したりと気ままに過ごす。

 

英二も一人でいるよりは、彼らと話したり時々ゲームをしたりする方が楽しいと思っている。今日は英二愛読書の漫画本を差し入れてもらったので彼はご機嫌だった。だがボーンズは少々不機嫌だった。

 

 

 

「まったく。。。あのドアマンめ、俺のことをいつも怪しい目でジロジロみやがって。。。」

 

 

ブツブツと文句を言うボーンズに、コングがわざとからかい口調で言う。

 

 

「それはおまえの存在自体が怪しいからだろう?そんな”歯なし”が高級マンションに出入りしてたら俺だって怪しむぜ」

 

 

歯のほとんどない口を大きく開けながら、ボーンズはコングに対して反論した。

 

 

「なんだって? おまえのそのでかい図体の方がよっぽど怪しいだろう?」

 

 

「俺は”運転手兼ボスのボディーガード”だって伝えてあるからな。お前よりよっぽどマシだ」

 

 

自信満々に答えるコングに対して、ボーンズは悔しそうにああだこうだと言い返している。

 

くだらない話をしている二人を先ほどから英二はチラチラと見ていた。漫画本をローテーブルに置き、彼は自分の部屋に戻って何かを手にとって戻ってきた。

 

 

 

「ねぇ、二人とも。ちょっといい?」

 

 

「ん?なんだ英二?」

 

「ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど。。。」

 

 

英二はそういってガサゴソと紙袋を取り出した。そこにはかなり明るいピンク色のキャップとパーカーが入っていた。

 

 

「え、おまえ。。。ソレ着るの?」

 

「たまにピンクのシャツ着てたけど、これはちょっとどうみても女物だぜ?」

 

 

「僕のじゃないよ。ちょっとしたプレゼントっていうか。。。」

 

 

「まさかボスにじゃないだろうな?」

 

「あはは、違うよ。さすがにアッシュが着るには小さいだろう?」

 

 

「「。。。!?」」

 

ボーンズとコングは顔を見合わせた。

 

 

***

 

 

 

一週間後、エレベーターホールの前でクリスに変装したアッシュは、同フロアに住む主婦と顔を合わせた。セレブな一般人のフリをしている彼は、もちろん愛想よく挨拶をした。

 

「こんにちは」

 

「あら。。。こんにちは、クリス。今からおでかけ?」

 

「えぇ、図書館まで。学校の課題を提出しないといけないので。」

 

「まぁ、うちの子もあなたを見習ってもっと勉強してもらいたいものだわ。。。

 

 

そういったあと、主婦は何かを思い出したようだ。

 

 

「あ、そうそう。あなたのところの英二だけど。。。」

 

 

「。。。英二が何か?」

 

 

英二と言われてドキリとした。彼のことになると、どうも調子が狂ってしまう。

 

 

「あの子、最近とっても幸せそうね。やっぱりガールフレンドができたからかしら?」

 

 

最初、アッシュは自分の聞き違いかと思った。英二とガールフレンドという組み合わせがどうにも非現実的に思えたからだ。

 

 

「。。。え? いま、何て?」

 

 

「あら、違うのかしら? 髪の長い女の子と一緒に居たから。。。色違いの同じ服を着ていたし、とっても仲良さそうだからデートしていたのかなと思ったのだけど。。。」

 

 

「はぁ。。。」

 

 

本当に英二なのだろうかとアッシュは違和感を感じていた。

 

 

その後、エレベーターを降りるまでその主婦とどんな言葉を交わしたかアッシュはハッキリと覚えていない。本当に図書館に行くつもりだったが、全く違う方向に向かって彼は歩いていた。

 

 

(あのピュアな英二にガールフレンド? ジャストフレンドしかいないって言ってたじゃないか。。。いや、英二だって男だから彼女ぐらいできても当然だけど。。。。)

 

 

なぜか考えれば考えるほど、胸のあたりがムカムカする。時間が経つにつれ、アッシュはフツフツと怒りに近い感情が押し寄せてきた。

 

 

(一緒に暮らしているのに何で隠していたんだよ。。。俺が必死に戦っているのになんでお前は女と遊んでいるんだよ。。。)

 

 

英二に対するマイナスの感情が自分を支配していることに気づき、アッシュはピタリと歩みを止めた。自分の思考がおかしいことに気がついたのだ。

 

 

(いや、俺が怒るのは。。。。それは違うだろう。。。まるでガールフレンドに嫉妬しているみたいじゃないか。。。)

 

 

冷静になろうとアッシュはふぅっとため息をついた。

 

 

(どうしたんだよ、俺。。。)

 

 

英二から置いてけぼりをくらったような、遠くへ行ってしまったような、話してもらえなかったのが寂しいような気がしてしまう。自分でも訳が分からずアッシュは混乱していた。

 

 

「クソっ!」

 

 

思わず道端に落ちていた空き缶をアッシュは蹴飛ばした。缶は軽快にカンカラ音を立てて転がっていった。中身のない自分の心のようだなとアッシュは思いながらアパートを離れていった。

 

 

 

 

***

 

 

 

その夜、アッシュはアパートに戻らなかった。翌朝戻ってきた彼の姿を見た英二はホッと胸をなで下ろしていた。英二を随分心配させてしまったことをアッシュは申し訳なく思ったが、「忙しくて」と適当に言い訳をしておいた。

 

 

アッシュの機嫌が悪いことを敏感に察知した英二はそれ以上余計なことは言わなかった。

 

 

噂のことが気になって気になって、アッシュは仕方がなかった。それなら直接英二に聞けば良いのに、なぜかそれは出来なかった。決定的な言葉を本人から聞かされるのが怖いからだ。特に変わった様子はなさそうだ。アッシュに対する態度も今までと同じ。誠実で優しく、アッシュの心を癒してくれる。

 

 

(この笑顔が他の誰かに向けられるとしたら。。。?)

 

(英二からの”特別扱い”を受ける人物が他にいるとしたら。。。?)

 

 

 

悶々としてしまう気持ちを落ち着かせようとアッシュは普段吸わないタバコをくわえた。眉間に思い切り深い皺を寄せ、貧乏揺すりをしているボスが実は新聞を上下逆に持っていることに子分は気づいていたが、そのことを突っ込むことなど出来なかった。

 

 

 

「なぁ。。。今日のボス、めちゃくちゃ機嫌悪くないか?」

 

 

「あぁ、まるで寝起きの時みたいだな。。。俺らのシマでなんかトラブルあったっけ?」

 

アパートに来ていた子分たちは、ヒソヒソ声でボスを観察していた。そんなボーンズとコングにアッシュが低い声で話しかけた。

 

 

「オイ」

 

 

二人は震え上がりながら、何とか返事をし、ソファから立ち上がった。

 

「ヒィッ、は。。。はい!」

 

 

なぜかアッシュは視線を外し、ボソッと二人に尋ねた。

 

 

「。。。最近の英二の様子はどうだ?」

 

 

ボーンズは顎を指で触りながら、日中の英二の様子を思い出していた。

 

 

「英二すか? えぇと。。。いつもどおりですよ」

 

 

 

「本当か? 浮ついた感じとか、何か秘密を隠していそうな様子はなかったか?」

 

 

「んん。。。。そういえば、最近やたら外出したがりますけどね」

 

 

アッシュの声が一段と低くなった。

 

「どこへ?」

 

 

 

「ひっ。。。か、買い物ですよ。服屋とか、食いもんの店とか。。。」

 

 

「もっと具体的に言え!」

 

 

ドンっと床を蹴りながら睨みつけてきたボスの圧に耐えきれず、ボーンズは「ひぇぇ」と体を震え上がった。

 

怯えるボーンズの代わりにコングが慌ててフォローする。

 

「NYの人気店について調べてましたね。ちょっとオシャレな服屋とか土産店とか、女子受けの良さそうなスイーツ店とか。。。あいつ、そんなの興味なさそうだったのに、この所そういうのを検索して俺たちに連れて行ってくれと頼むんですよ」

 

 

 

「。。。。チッ」

 

 

(デートの下調べなのか? )

 

 

当然目立つのが嫌なアッシュはそういう類の店には行きたがらない。NYに来てからすぐに様々な事件に巻き込まれた英二は観光らしい観光などしていないはずだ。興味を持つのは構わないが、それがデートのためだと思うと無性に腹がたってくる。

 

 

「ボス? あいつなんかヤバイ状態なんですか?」

 

 

コングの問いかけはアッシュには届いておらず、彼はボソリと呟いた。

 

 

 

「おまえらのいない隙に女とコッソリ出かけてるってことか。。。まぁ、邪魔されたくないだろうし。。。」

 

 

勝手にそう判断したアッシュは、もっと大事なことに気がついた。

 

 

(オイオイ。。。勝手に外出してもし敵にバレて、襲われたらどうするんだ? 英二の女も殺されるかもしれないぞ?)

 

 

考えただけで血の気が引き、さっと顔色が青くなった。さっきから赤くなったり青くなったりするボスを見て、子分たちは心配そうに少し離れたところから声をかけてきた。

 

 

 

「ボス? 大丈夫すか?」

 

 

 

「。。。何でもない。いいか、あいつを訪れてくる人物がいたら俺に報告しろ!」

 

 

 

訳がわからないものの、二人は威勢良く返事をした。

 

 

「「ハイ!」」

 

 

 

 

***

 

 

 

それから数日の間、子分達に英二の様子を見張らせていたが、特に怪しい人物がアパートを訪れることはなかった。まして女性が訪れてくることもない。

 

 

 

やはり何かの勘違いなのかと思いはじめた頃、アッシュは再び衝撃を受けることになる。

 

 

「クリス、いま学校の帰りかい?」

 

 

ドアマンがアッシュに話しかけてきた。

 

 

「えぇ。これから家庭教師とオンライン授業なんです」

 

 

「そうか、君は本当に真面目だね。あ、そうそう。。。君のところの英二だが。。。」

 

 

「あいつが何か?」

 

 

ドアマンは自分のことのように嬉しそうにニコニコ微笑みながら答えた。

 

 

「さっき可愛らしい雰囲気の女の子と外出していったよ。デートかな?」

 

 

その言葉にアッシュは再び衝撃を受ける。

 

 

「どちらへ行きました?」

 

 

少々険しい表情になったクリスことアッシュに驚きながらもドアマンは外を指差した。

 

 

「えっと。。。地下鉄の方に向かって歩いって行ったけど。。。」

 

 

アッシュはダッシュでその方向に向かった。

  

 

「あれ? 確か彼。。。この後授業があるって言ってたような。。。」

 

 

ドアマンは首を傾げながら、アッシュの背中を見送った。

 

 

 

***

 

 

 

はぁはぁと息を切らしながら、アッシュは表通りを走っていた。何人かと肩がぶつかってしまったが、謝っている余裕もなかった。

 

 

(どこだ?英二とその女!)

 

 

必死に英二らしき人物を追いかける。

 

「いた! あれだ」

 

 

地下鉄の階段を降りようとする二人を発見した。

 

 

「待て!」

 

慌てて追いかけるが、声をかけようとしてやめた。

 

 

それより二人を観察しようと、ギリギリ見えるか見えないかの距離を保ちながら尾行することにした。幸か不幸かこういうことには慣れている。

 

 

(どんな女だ? あいつにふさわしいかどうか見極めてやる!)

 

 

二人は楽しそうに会話している。仲が良さそうだ。何かで盛り上がって英二はガールフレンドの肩に腕を回した。

 

 

(あのシャイなオニイチャンがそんなことするだなんて。。。。なんかダメージくらった気分だぜ)

 

 

(日本のアニメショップ? ということはこの二人はアニメ好きなのか。。。チッ、共通の趣味があるとは。。。)

 

 

さすがにアッシュが店に入るとバレてしまう。そこで、店の向かいにあるカフェから二人を観察することにした。

 

 

「ねぇ。。。みて。あの人モデルかな?めちゃくちゃカッコいいんだけど。。。」

 

「でも、何やってるのかしら。。。?」

 

ヒソヒソと女性客がアッシュのことを噂していた。オペラグラスを出して向かいの店を観察する超絶イケメンにカフェの店内は少々ざわついていたが、アッシュはそれを気にする余裕などなかった。

 

 

残念ながら英二の隣にいる女は深くキャップをかぶっているので顔はよく見えない。だがかなりのスレンダーボディで英二とほぼ同じくらいの身長だ。長い髪を後ろで束ねている。服装はピンクのパーカーにジーンズとかなりカジュアルだった。

 

 

英二は彼女へのプレゼントを選んでいるのか、女物の化粧ポーチやTシャツなどを選んでは隣にいる彼女に確認するように見せていた。

 

 

(なんだよ、あれ。。。。ベタ惚れじゃねーか)

 

 

そして、それから自分用のシャツやお揃いのマグカップを選びはじめた。心底嬉しそうな英二の顔をみていると、何だか自分のしていることが虚しくなってきた。

 

 

(あいつが幸せなら俺はそれで構わない。。。今度子分たちにデートの邪魔しないように二人をガードするよう言いつけるか。。。)

 

 

 

いつか英二がアパートを出ると言い出すかもしれない。そのことを思うと胸がチクチクと痛む。だがそれは自分の勝手な想いであって、英二の幸せを邪魔することはしたくなかった。何度も”日本に帰れ”と言ってきただけに、”ずっとそばにいてくれ”ということなどは出来なかった。

 

 

「帰ろう。。。」

 

 

虚しさが背後から襲ってくるが、アッシュはノロノロと立ち上がり、通りを歩き始めた。空は曇っていてまるで自分の心を表しているかのようだった。

 

 

英二のいないアパートに帰るのが虚しい。これほど気が乗らないことはなかった。

 

 

(せめてお祝いの言葉をかけないと。。。親友として。。。。)

 

 

 

英二は一人で戻ってきた。

 

 

「あれ、アッシュ?帰ってたの? 。。。あ、一人で外出してたんじゃないよ?」

 

 

「知ってる」

 

 

「??。。。そう?」

 

 

「英二。。。おめでとう」

 

 

「おめでとう。。。? あぁ!! ありがとう!!僕は最高に幸せだよ!」

 

 

英二は満面の笑顔で微笑んだ。 アッシュの表情がなぜか疲れきっておらず、冴えない笑顔なのが気になったものの、英二は自分の喜びを素直に表現した。

 

 

ひまわりのような笑顔を眩しいと感じながらも、これは自分のものではないのだとアッシュは自分に言い聞かせていた。

 

 

「はい!これ」

 

 

英二は紙袋をアッシュに押し付けてきた。

 

 

「これって。。。」

 

 

さきほど英二が買い物をしていた店のロゴマークが印字されていた。

 

 

 

不思議に思いながらも中を開けると、モスグリーン色のTシャツが入っていた。広げると、どうみても英二が着るにしては大きい。

 

 

「これは?」

 

 

「へへっ、可愛いだろう? ノリノリくんの新作Tシャツだよ。君がこういうの着ないの知ってるから、できるだけシンプルなものにしたよ。バックプリントになってるけど、これぐらいなら大丈夫だろう?」

 

 

 

「え。。。俺? ガールフレンドじゃなくて?」

 

 

「は? ガールフレンドって何? 君の為に買ってきたんだよ。とってもレアな限定ノリノリ君グッズを売ってる店があるんだよ。ずっと行ってみたかったんだー」

 

 

「なんだよそれ。。。」

 

ヘナヘナと力なくアッシュは床に座り込んでしまった。

 

 

「アッシュ? そんなに嫌だった? 僕もTシャツ買ったんだけどなぁ。。。ピンクかわいいだろ?」

 

 

「自分用に。。。ピンクのシャツか。。。。」

 

 

(そうだ、英二のセンスってそんなだった。。。いや、でも一緒に女といるのをみたぞ?)

 

 

「なぁ、おまえ。。。最近髪の長い女と一緒に出かけているだろう?近所の住民が目撃したって聞いたぞ?」

 

 

「え。。。やだなぁ。。。見られてたの? あれは女の子じゃないよ。」

 

 

「は?」

 

 

英二は携帯を出して、どこかに電話をかけ始めた。

 

 

「まだ近くにいる? ちょっとこっちまで来てよ」

 

 

「誰を呼び出してんだよ?」

 

 

「まぁまぁ。。。」

 

 

現れたのは、アッシュが目撃した髪の長い女だった。

 

 

「。。。。すみません。」

 

 

女は緊張しているのか、声が震えていた。どことなく声は掠れていた。

 

 

「すみません、ボスゥゥ!」

 

キャップを取ると、そこには泣きべそをかいたボーンズが立っていた。

 

 

 

***

 

 

 

腕組みをしたアッシュがボーンズをジロリと睨みつけた。ボーンズは萎縮してちぢこまっている。

 

 

「どういうことか、説明しろよ」

 

 

 

「まぁまぁ、アッシュ。怒らないの」

 

 

英二はのんびりとした声でボーンズをフォローする。

 

 

 

「僕がこの格好を提案したんだよ。ほら、見た目は女の子だろ?」

 

 

ひらひらと女物のキャップとパーカーをアッシュに見せた。

 

 

「これは妹へのお土産用に買ったんだ。あいつもノリノリのグッズを集めているからね。でもボーンズがドアマンに不審者扱いされるって聞いたから。。。これらを着れば女の子に見えるだろうから、ドアマンの警戒心も緩むかなと思って・・・」

 

 

「。。。。」

 

 

(それでみんな誤解したのか。。。)

 

 

 

「うちの妹さ、結構流行好きで僕がNYにいる間にあの店この店行ってきてくれって連絡してきたんだよ。それでボーンズにお願いして付いてきてもらったのさ」

 

 

「ボス、勝手なことをした俺が罰を受けるのは構いませんが、英二はどうしても妹さんとボスにお土産を買いたいと思ったんですよ。だから怒らないでやってください。。。」

 

 

 

「。。。。。チッ、そんな話聞いたら怒れねぇじゃないか」

 

 

「ボス!」

 

 

「アッシュ、ごめんね。勝手なことをして。あ、これも一緒に君と使いたくて」

 

 

取り出したのはお揃いのマグカップ。もちろん例の鳥のキャラクターだ。

 

 

何が可愛いのかさっぱりわからないが、英二とお揃いというだけでこのカップがどんな高級カップよりも価値のあるもののように思えてきた。

 

 

(謝ってからこんなもの出してくるなんてあざといだろう。。。)

 

 

呆れながらも、やはり正直言って嬉しさの方が優っていた。

 

 

「ふぅ。。。ばかばかしくてどうでも良くなったわ。。。ボーンズ、もういい。今日はもう帰れ」

 

 

アッシュは深いため息をついた。

 

 

 

「はいっ!ボス!」

 

 

怒られずにすんだボーンズはいそいそと帰っていった。

 

急にシーンと静かになったリビングにアッシュと英二は無言のままお互いの顔を見ていた。

 

 

 

(アッシュ、僕にガールフレンドができたって思ったのかな。。。)

 

 

(英二にガールフレンドは いなかった。。。。安心した。。。)

 

 

 

「あの。。。」

 

 

おずおずと英二はアッシュを見上げた。

 

 

「僕は今ガールフレンドを作ろうだなんて思ってないから。。。」

 

 

「そうかよ。。。」

 

 

「君のそばに居たいしね」

 

 

「。。。勝手にしろ。。。」

 

 

「うん、勝手にする。。。ちなみに晩御飯は納豆たまごご飯に納豆天ぷら、納豆汁だから。。。」

 

 

「はぁー?」

 

 

「あはは、冗談だよ!シャワーでも浴びてきたら?」

 

 

「チッ、冷や汗かいたからシャワー浴びてくる!」

 

 

そう言いながら、英二が買ってきたノリノリ君シャツを掴んでバスルームへと消えた。

 

 

「ふふ、可愛いじゃないか。僕にガールフレンドができたと勘違いしたんだな?。。。あれ?でもなんで怒ってんの?。。。うーん、オニイチャンを取られた気分になったんだな。。。可愛いやつめ。」

 

 

(まだまだガキだな。。。。)

 

 

口笛を吹きながら、可愛い”弟”の好物のエビとアボカドのサラダを作ってやろうと思いながら英二はキッチンへと向かった。

 

 

 

 

*終*

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました爆笑。 久しぶりのコメディ?話でした。ボーンズは英二とあまり身長変わらないイメージなんですけど、とにかく細いし髪も長い(三つ編み?)ので、帽子かぶってマスクでもかぶればギャルっぽく見えるかな。。。なんて思いましたイヒ

 

ショックを受けるアッシュはちょっとかわいそうでしたね。でもこの気持ちはなんなんだ?と揺れる彼が書きたくて。。。。決して恋愛ではないと思うけど、なんかオニイチャン、大人になっちゃったのね。いつまでもピュアでいて欲しかったし俺のそばにいてほしかったのに。。。と  ドキドキ独占欲まるだしな弟であってほしいドキドキ

 

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*アパートの住民から「英二がガールフレンドといるところを見た」と聞いたアッシュは衝撃を受け、その真相を確かめようとするが。。。
 
 
 
 
 
***
 

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