100分の講義
終了のブザー音
講堂内に響き
あぁ…もうそんな時間?
と
ほぼほぼ
後半は雑談になってた
僕たちは
一応
教壇に目を向け
教授の周囲に集まった
人の和を
眺める
この教授は
そもそも授業が100分は長すぎる
と
毎回
後半の20分は
授業内容と関係のない
趣味の話を
マイクなしではじめる
その為
興味ある生徒が
席移動して
前に集まり
なんとなく
マイクなしでも
聞き取れる位置の席が
即座に埋まるのだが
日に日に
マイクなしのクールダウンで
教授を囲む輪が
大きくなりつつあるの
目に見えて
本編の授業より
面白がられてる様子
アリアリで
そろそろ
2部構成で
授業になりそう
とか
座ったままの蚊帳の外な
僕たちも
興味なくはない
前方の様子を噂する
そもそも
ちょっと変わった
この講師は
医者だった経歴から
医療関連の講義内容だけど
古典が好きで
当時の人々の恋愛を
現代語訳で解説したり
食文化の研究も
趣味でやってるとかで
先輩が言うには
昔のお菓子を再現し
食べた…とかで
今のご時世
それはうらやましいのか
微妙で
他人の手作りが食べられない
って感覚の人からすれば
断る勇気が必要なのでは?
と
気になったが
そういう方面の
ネガティブな話は
出てこないので
…おいしかったのかなぁ?
と
それはそれで
気になる訳で
と
以前
ドシモな古典の恋愛話の
現代語訳の時は
面白かったのか
数人の女子が
教授から離れず
ちょっと
異様な光景だったこと
思い出しつつ
今日も少し
そっち系の話題だったのか
ブザー音で
うやむやに
講義が終了した格好で
席を離れる準備をしつつ
女子特有の
キャッキャした声に
囲まれてる
教壇をもう一度
チラ見してから
「…教授だし
おじいさんだからって
ガードが下がってるんだろうけど…」
端から見れば
可愛い女の子たちに
慕われてる老人の様子は
ほほえましい
彼女たちにしろ
授業中だし
教育者と生徒だし
自分たちは集団だし…
って
安心感で
懐いてるようだけど
「悲しいかな
幾つになっても
それ系の欲求は消えないし
支配されるのが雄なんだよねぇ」
つい
いいなぁ…って羨望も
無きにしも非ず
なものの
エムに気を付けてって
意味も込め
爺さんがモテてる風に見える
現実
受け入れがたいと
雄の生体を口にすれば
「…知ってるわよ」
しれっと
エムが僕の発言に
応えながら
「…あれはね
“ガールズトーク”な訳
盛り上がるに決まってるじゃない」
と 僕の羨望
真っ向から突っついて
「逆にあなたが知らなさすぎ」
と切り捨てた
つづく