田舎での営業
…とはいえ
こんなにゆるい経営方針で
大丈夫なのか?
と 一瞬
他人事ながらに心配しつつ
「…えぇ…っとぉ…」
と 困ってしまっていること
前面にアピレば
「もうすぐ バイトの子が来ると思うんで」
あぁ…なんだ
ちゃんと 雇ってる人が来るんだ
と
まるっきり一人で
来客があったらどうしよう
って不安が払拭できたので
「…わかりました 気を付けて」
と 言わざるを得ないくらい
店員の申し出は
決定事項とばかり
準備が進んでて
今からピクニックか?
って感じの作りをした
バスケットかごを両手に
いつでも出られる
スタンバイ体制だったのだからして
昼時だもんなぁ…
と
サービスで出されてたパンが
焼き立てだった理由
今更のように気付きつつ
再び席につけば
「…ありがとう では」
そういうと
得体のしれない客である僕を残し
店の主が退出してしまって
途端に
のんびりと
くつろげる空間だった
店内の空気が
急に
よそよそしく
僕に対して
人見知りになったような
いたたまれない空間になってしまって
僕は意識的に
今座っている場所から
一歩も動けなくなって
テーブルの上に置かれた
おかわり自由の珈琲を
ひとまず
カップに注ぎ始めれば
店員が出て行った扉が
静かに開いたから
ドキッと
まさかお客が来たのか?
と
こぼしそうになった珈琲
慌てて
注ぐのを中断し
扉の方に目を向ければ
…彼は…その…
店員が言った“バイトの子”なのか?
それとも…客?
と 判断しかねて
ぽかんと見つめていれば
入ってきた彼の方が
ぺこりと頭を下げたから
…あぁ…バイトの方か…と
ほっと息を吐いて
手に持ってたポットを
そっとテーブルに戻し
入ってきたバイト君の様子
見るともなく 目で追えば
…年のころは…20代前半か?
ひょっとしたら高校生かも?
いや この時間は学校か…
等と
僕のいる位置が
店内の奥だから
カウンターのある入り口付近は
遠く
はっきり見えてた訳ではない
けど
エプロンをつけたり
カウンターの周辺を掃除したり
…って動きは
確認できてなかったので
え?あれ?
やっぱり客の方だった?
と 店内の入って左側の席は
僕の位置から見えないから
そっちの方に居るのだろうか?
と 座ったまま
体を傾け
店員が留守な事
一声かけとこうか…と窺えば
その左側の奥は物置だったのか
さっき入ってきた彼が
何やら段ボールの箱
両手持ちで
抱えて現れた
つづく