ブレス if -XXX-Ⅹ vol.31『ネクタイ』 | ラテックスは妄想中

ラテックスは妄想中

暴走ギミな妄想をチラカスBananaです。
甘味世界を目指し オリジナル小説書いてます。
腐 要素 多くなってきちゃいました。苦手な方ご注意ください。



『彼』目線

 ひとつ前の話 ⇒ vol.29

━─━─━─━─━─




朝の通勤ラッシュ


道行く通行人 


目の前を流れる車のドライバー



人の目が 四方にある状況で


首のタイ 引っ張られ


「彼」の方へ 引き寄せられたから



反射的に手のひらで


近付く「彼」の顔面を掴んだ




「…技を掛けるな 何もしねぇよ」



不機嫌気味な口調で 『俺』を引く力


若干弛み 胸元の「彼」の手が


グッと上に上げられ


タイを結び終えた事を 知らせる



「彼」の顔面押さえてた 手を外せば



「アイアンクロ―くらうなんざ 中坊以来だぞ」



据えた視線に見つめられ つい



『…ごめん だって こんな公共の場で』



「彼」の視線から逃げるように


大通りの車に 目を向ける



マンションの地下駐車場で


「彼」に噛まれた唇


巻き込む様にくいしばって



信号が変わり


流れの途切れた大通りへと 


車を進める



 この道は知ってる



「彼」の社は ツーブロック先



見覚えのある風景に


徐々に解ける緊張



少しキツイ 首に手をやり


「彼」の締めたタイを 緩める


その時の触感で


見ていないタイのフォーム確認して



『…ちゃんと結べてるじゃん』



そう呟けば



「あ… 俺の事 馬鹿にしてる?」




ナビシートの「彼」が


 聞こえてるぞ…と突っ込んで来た



朝から何度も ドキドキさせられた「彼」に



『…若干…』


仕返し気分込めて ふざける




もう 然程ない 「彼」の社までのドライブ



何て言って別れよう…



「彼」が降りる瞬間 シミュレーション始めれば



運転中の『俺』の左手


「彼」がハンドルから剥がす様に手に取り


ナビシートの方へ 導いた



『…何してんの?』



危ないなぁ…と注意する『俺』には答えず


『俺』の腕時計を 外しはじめる



『…ちょっとぉ 何してんの?』



片手で握るハンドル


直進する車を 少しふらつかせ


慌てて 運転に集中する






手首の内側


「彼」の息が掛かったと思った


次の瞬間


 ズキッと痛み


思わず 息が止まる




『俺』が カレに残すマーキング痕


「彼」は 『俺』の手首に印した



思わぬ痛みに


自然と潤む視界



「彼」に見られない様


車道を向いたまま 唇を噛めば




「時間 見る度にさぁ 俺を想ってよ」



そう言って 外した時計 着け直す「彼」



…ずるい 怒れないじゃん



別れ際 気のきいたセリフ考えてた『俺』は


「彼」の先手に 何も言えず



ただ 前を向いて 運転を続けた




「…そのネクタイも よく似合うよ」



『俺』の事見てる「彼」の視線


そんなコメント無くても気付いてる事


少し頷く反応で 返す






「…じゃぁ ありがとう 気を付けて」


建物の正面は避け


客用の駐車場の入り口付近に 停車し


「彼」を降ろす



ドアが閉まれば 発進しようと待つ『俺』に


焦らす様に 降り立ったままの姿勢で


動かない「彼」



『…何してんの?』


運転席から 覗くように 様子見れば




「お?…やっと俺を見たね」



いつもの 爽やかな笑顔の「彼」が


「いってらっしゃい」と


車のドアを 閉めた






―――――――――



Next ⇒ vol.35