「 あっつぅ…… 」
蝉の鳴き声がする
夏を感じる サウンド
結構好きだ
今だけの楽しみ
好きなモノは 色々ある
夏休み と聞いて
思い浮かぶ 田舎の家
畳の部屋
外との仕切りのない 縁側
土の庭
大きな木に 蝉の抜け殻
室内を通り抜ける
冷たくはないけど
心地いい 風
…風鈴の音…
スイカ
カブトムシ
虫かご
蝉の声
「 …おい… 」
ん？ …今のは人の声…
床の上に転がっている
僕の恋人が
転がったまま 声を掛けてきた
「 …殺す気か… 」
ん？そんなに いい仕事しました？ 僕♡
汗だくで 転がる恋人
夏にクーラー無しで 愛を深める行為
それを望んだのは あなた
…なのに 体力的にも 暑さにも
平気なのは 僕の方
転がる 恋人に近付く
汗で額に髪の毛が張り付いてる
大好きな顔を 見下ろす
「 圧が暑い 」
恋人の手が 僕の顔面を押す
…その手首を掴み
手の平に 舌を這わす
…汗の味がする…
思わず顔が歪む しょっぱい
「 …なんて顔してんの 」
そう言って 僕の下で くすくす笑う
その表情 好きなんだ
「 …ねぇ… 」
僕の誘いに 表情が変わる
「 無理 無理 もう無理 無理だって 」
何回 無理って言うつもり…
「 しぃ――― 」
そう言って 唇を重ねる
「 ん…むぅ…むりだょ…… 」
僕はクーラーのリモコンを手に取り
起動させる
「 …それは反則 」
反則って何それ？
僕は恋人の耳元で囁く
…想像して
夏休みって聞いて
思い浮かぶ 田舎の家
畳の部屋
………
暗示をかける
人工的な風を
心地いいものに
感じさせるよう
………
…風鈴の音
…蝉の声
「 …ん…… 」
恋人の吐息
これが今は
一番 好き……
――――――
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