「 くっつくな… 」
夏が苦手な 僕の恋人は
そう言って
うちわで 僕を叩く
「 暑っ苦しいわ 」
少し汗をかくと
上着を脱ぎ
インナー姿で
肌を晒す
…そんな格好して
我慢させるのって…
クーラーのリモコンを
僕が手に取ると
「 あっ馬鹿 夏の醍醐味
台無しにすんな 」
そう言って
うちわで 僕を叩く
バタバタと
「 暑い 暑い 」
と 言いつつ仰ぐ うちわ
それが 好きらしい
僕は恋人を
斜め後ろから見る
襟足(えりあし)の後れ毛が
うちわの風に煽(あお)られ
ふわふわと 揺れている
じゃれつく 猫の様に
そこに触れる と
「 なに? 止めろや くすぐったい 」
…と言いつつ
うちわで 扇がれる
「 暑いの忘れちゃう様な事
やんない? 」
そう言うと
うちわの バタバタが 止まる
どうやら これも 好きらしい
――――――
暑中お見舞い 申し上げます