肺癌治療はゲフィチニブ(イレッサ)の登場によって劇的に変わった。
服用薬で、副作用も比較的少なく治療成績が良いというのは患者さんのQOLの面から言えば非常にメリットである。

ザーコリ(クリゾチニブ)はそんなイレッサの弟分的な薬剤である。

癌の増殖機序はどのようなものがあるだろうか?
分子レベルだと様々なものが発見されている。

癌とは細胞の異常な増殖である。
イレッサは上皮成長因子受容体(EGFR)という受容体が働く事によって細胞が増殖する事から、それを抑える事で細胞増殖抑止、つまりは抗癌作用を示す薬剤である。
実際の臨床ではふつうのEGFRを抑制しただけでは効果は乏しく、変異のあるEGFRを抑制する事で非常に抗癌作用を持つ。

今回のザーコリは染色体の異常により、ALK融合タンパクの2量体ができる事が細胞の増殖に働き、癌化するという細胞増殖の機序を抑止するものである。

ALK融合タンパクの2量体のチロシンキナーゼ活性(ざっくりと言えば、シグナルを下流に伝える流れ)を抑える事により、ALK融合タンパクの2量体の働きを無効化するのである。

このようにメカニズムが分かってから、そのメカニズムに対してピンポイントで効く薬剤を分子標的薬と言い、今後ますます増えていく薬剤の一つである。

この分子標的薬の良いところは重大な副作用が少ないところである。
ALKという訳のわからないものを抑制しちゃっていいの?という考えもあるが、ALKノックアウトマウスというALKが全く存在しないマウスを遺伝子操作にて作っても子孫を残す事が出来るし、いたって元気だという。
つまり、分子レベルのごくごく小さなところをがっちり抑制しても、それほど影響はないという事である。

ところで、このザーコリ。ALK融合タンパクの2量体を邪魔する薬剤なのであるから、まず、ALK融合タンパクの2量体が存在しなくてはならない。
そのため、まずはそれがあるかどうかを検査する事になる。
しかし、ALK融合タンパクの2量体が存在するのは肺癌患者のわずか5%だという。

検査の結果ALK(+)であれば、ザーコリの恩恵にあやかれるが、ほとんどの肺癌患者さんはALK(‐)である。
したがって、ザーコリを使える患者さんはごくまれである。

ザーコリが使える患者さんはごくわずかであるため、臨床試験では外国人と混ざっての試験であった。
その結果、アジア人の方がよく著効したデータが得られた。
しかし、これは注射の抗がん剤のように /体表面積(m2)にて体表面積を考慮して、体格の大きなヒトはそれだけ多くの抗がん剤を・・という事をせず、みな一律250㎎×2回であったため、体の小さなアジア人が体の割には多くの薬剤を服用したからではないかという事が挙げられる。

副作用としては、抗癌剤に特徴的な悪心、下痢、嘔吐、便秘、末梢性浮腫などがある一方、目新しい副作用としては、視力障害が約半数の患者さんで出現した。

この視力障害というのは“光がチカチカする”といった症状が多いようで、細かく記載すると、ザーコリによる視覚障害は複視、光視症、霧視、視野欠損、視力障害、硝子体浮遊物が挙げられる。

ザーコリはCYP3A4により代謝されるため、薬剤においてはケトコナゾール(CYP3A4阻害薬)やリファンピシン(CYP3A4誘導薬)の併用に注意すべきであるし、食物では、グレープフルーツやグレープフルーツジュースの併用に注意すべきである。

イレッサ同様、間質性肺炎についての注意も必要であり、服薬指導時には「咳が出だしたらほおっておかないように」といったような指導が必要である。

一般名はビキサロマーであり、現存の塩酸セベラマーと同様の薬剤である。
よって、透析中の慢性腎不全患者における高リン血症に適応のある薬剤である。

キックリン。名前の由来は“リンに効く”から来ているようだ。

現在、高リン血症治療薬としては主に3つのタイプが使われている。
どれも作用機序としては、食事中のリンを吸着する薬剤である。

一つは長く使用されてきた炭酸カルシウム製剤である。カルタンなどの製品が有名だ。
炭酸カルシウム製剤はカルシウムとリンの愛称が良い事を逆手に取った薬剤だ。
カルシウムとリンは胃の中で結合すると不溶性のリン酸カルシウムとなる。
不溶性となるため、吸収されず糞便中に出される。
ただし、不溶性のリン酸カルシウムが形成されるには胃内が酸性に保たれている事が必要であり、PPIやHRAなどの併用で効果が減弱したり、用法が食直後だったりする。
さらに、炭酸カルシウム製剤は成分中にカルシウムを含有しているため、血中カルシウム値を上昇させてしまう。

そこで、カルシウムの代わりに別の金属を!と考えだされたのが炭酸ランタンである。
ホスレノールチュアブルなどが有名である。
炭酸ランタンだと、胃内のpHも気にする必要がなく、カルシウムも含有していないので血中のカルシウム濃度も上昇させる事はない。
まさに、完璧な高リン治療薬なのだが、ただ一つ懸念がある。

それは、まだよくわかっていない金属という事である。
ランタンって。どんな元素記号なのかもわからない・・・。
それにより、未だわかっていない副作用などが現れる事を懸念される先生方もいる。

3つ目は塩酸セベラマーであり、これはリンを不溶性の物質に変えるというよりは、網のような構造をしたポリマーでリンを絡めて糞便中に出すという発想の薬剤である。
カルシウムを含まないため、血中のカルシウム濃度も上昇させない。

この塩酸セベラマーの最大の欠点といえば、便秘の副作用である。
ポリマーであるため、膨張し便通が悪くなるのである。
さらに、塩酸セベラマーでは大きなポリマーのところどころでCl-イオンが付着しているため、Cl-を吸収しすぎると、過塩素血症性の代謝性アシドーシスが起こる可能性がある。

今回のキックリンでは
まず、塩酸セベラマーに比べて水を含んでの膨張率が少ないという事がより優れたところである。これにより、腹部膨満感や便秘が軽減された。

ポリマー系の高リン治療薬ではこれは非常に大きいと思う。

これは、塩酸セベラマーに比べてビキサロマーは網目が細かい構造になっており、水の浸透が少ない。そのため、膨張が少ない構造となっている。

さらに、ビキサロマーは構造内にCL-イオンが無いため、過塩素血症性の代謝性アシドーシスの懸念も少ない。

ポリマー系の高リン治療薬ではたくさん服用しなくてはならない事がネックである。
このキックリンカプセルも1号カプセル(1.5cm×6㎜)を1回に2カプセル服用する用法である。

カプセルはやや大きなカプセルである。カプセルが大きくて飲みづらい患者さんは脱カプセルしたいところだが、脱カプセルすると嫌な臭いがするようで脱カプセルは禁止のようだ。
嚥下に難ありの患者さんはこのキックリンは適さない事になる

塩酸セベラマーにて便秘がひどい方にはキックリンへの変更で幾分か緩和されるかもしれない。

カリメートから新たな剤形が生まれた。

カリメートは腎不全に伴う高カリウム血症を是正する薬剤であり、主に食事中のカリウムをイオン交換樹脂であるカリメートが自信の保持しているカルシウムと食事中のカリウムを交換し、糞便中に出すという機序である。

イオン交換樹脂であるために、水にはほとんど溶けない。

そのため、ざらざらとした服用感となり、この手の薬剤は服用感の改善が求められている。

今回発売されたカリメート経口液は初の液剤となる。

液剤といっても、感じとしてはジャムのようなものである。

腎不全の患者さんは水分制限があるため、それらを考慮し、なるべく水分量が少ないようにジャム上になっている。

味はというと、ほのかに甘い。 何味、というものがなく、継続的に服用しなくてはならない患者さんに対して、飽きのこないような工夫がされている。

腎不全の患者さんは水分制限をはじめ、便秘になりやすい状態であり、便秘が起きている患者さんも多い。さらに輪を掛けて、このカリメートも便秘の副作用を持つ。


カリメートはカリウムを保持した後は糞便中に流れて、体外に排出される。
便秘があると、カリウムが再吸収され、カリメートの効果が十分発揮されない可能性がある。
カリメート服用中は便通コントロールが良好である事は必要であるが、腎不全患者さんだと、なかなか便秘も解消されない方もいるのも事実である。

当ブログにおいても、ケイキサレートドライシロップについて言及した。
ケイキサレートは下痢の副作用が起こるため、その点は逆手にとれるかもしれない。

カリメート、アーガメイト、ケイキサレートと継続的に服用しなくてはならない薬剤である。服用時の不快感はなるべく軽減できるように我々薬剤師も妙案をしぼり出さなくてはならない。

一般名はモガムリズマブであり、CCR4のモノクローナル抗体である。

語尾が -zumab(ズマブ)となっているので、完全ではないが、ほぼヒト抗体である。

CCR4とは白血球遊走に関与するケモカイン受容体の一つであり、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)において、約90%の症例で発現している事が報告されている。

つまり、CCR4はATLの独立した予後不良因子である事がわかっており、ATL細胞に発現するCCR4にモガムリズマブが結合する事により、NK細胞等のエフェクター細胞がATL細胞を傷害するメカニズムとなっている。

抗がん剤は正常細胞とがん細胞の違いを見つけ、正常細胞は安全だが、がん細胞は死滅するというメカニズムは基本の流れである。

しかし、モガムリズマブとポテリジオ。
なんとも関連性の無い名前である。

それには、協和発酵キリンが誇る高い技術がこの薬剤には込められているためである。

その技術というのはポテリジェントというものであり、
抗体のFc領域における糖鎖内のフコースを低下する事により、、ADCC活性(抗体依存性細胞障害活性)が100倍以上も増強される技術である。
Fc領域のフコースを低下させる事で、エフェクター細胞(NK細胞、単球等)の親和性が増すためではないか?と考えられている。
Shinkawa T,et al. J Biol Chem. 2003;278:3466-3473

非常に、センセーショナルな技術であると思う。
これから中心となりつつある抗体薬の効果が100倍も上がる技術である。汎用性は非常に大きい。

このポテリジェントを世界で初めて用いて作られた薬という事でポテリジオ注という名前がついた。


抗体薬といえば、副作用は少ない薬剤であるが、ただ一つ気を付けなければならないものがある。それは、投与時に起きるインフュージョンリアクションである。

ポテリジオは注射における反応として薬8割の方が出ている。

抗体としても完全ヒト型ではないために、インフュージョンリアクションは出やすい抗体薬であると考える。

頻度としてはリツキシマブの同程度の発現率であるため、リツキシマブ同様に、抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛薬、副腎皮質ステロイドの前投薬が必要となる可能性がある。



一般名はアトバコンであり、ニューモシスチス肺炎の治療薬である。

現在の薬剤ではニューモシスチス肺炎に適応がある薬剤はST合剤であるバクタ、ペンタミジンであるベナンバックスとがある。

ニューモシスチス肺炎は治療というよりは免疫低下者に対して予防的に投与される事がほとんどである。

ST合剤がファーストチョイスとして使用され、ST合剤にてアレルギーが出た例だと、ベナンバックス(吸入など)に切り替えというのが現在の流れである。

今回のサムチレール内用液はこれらに加えて新たな薬剤が加わった事になる。

適応はニューモシスチス肺炎、ニューモシスチス肺炎の発症抑制である。

サムチレールはバクタの使用が困難な場合に使用しなければならない。
なぜなら、効果の面でバクタと比較した時にバクタの方が効果が高かった結果を得た。

そのため、バクタより先んじて使う事はできない。
あくまで、バクタのセカンドである。

用法において注意点がある。

用法は<ニューモシスチス肺炎の治療>と<ニューモシスチス肺炎の発症抑制>と二つある。

ニューモシスチス肺炎の治療は
通常、成人には1回5mL(アトバコンとして750mg)を1日2回21日間、食後に経口投与する。
とあり、1日2回投与であるが、

ニューモシスチス肺炎の発症抑制で使用する場合は
通常、成人には1回10mL(アトバコンとして1500mg)を1日1回、食後に経口投与する。
とあり、1日1回投与である。
しかし、1日の投与量は1500㎎と同じである。


サムチレールの半減期は60時間程度であるので、1日1回で十分である。
1日2回の投与方法はサムチレール開発の歴史的な流れからであり、薬物動態学的な用法は1日1回である。

治療の用法と予防の用法で異なるのはこういう理由であるようだ。

とはいえ、このサムチレール内用液。
かなり鮮やかな絵の具のような黄色をしている。

おおよそ口に入れるのを躊躇うくらいの発色のよい黄色である。

出来る事なら、封を切ったら見ないで飲むことをお薦めする。

さらに飲んだら、すぐに口を空けて他の人に見せないようにする事が必要になる。

薬価は1包あたり1679円とだいぶお高い。
バクタでもベナンバックスでもダメという方に処方される薬剤であると考える。
一般名はリバーロキサバンであり、作用機序は血液凝固カスケードの一つである活性型Ⅹ因子(Ⅹa)を阻害する事によって、血栓や塞栓の予防をする薬剤である。

適応は“非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制”
である。これはやや狭い適応のように思えるが、基本的に心房細動患者では心臓で血栓ができやすい。心臓でできた血栓はサイズが大きいために脳を始め各種臓器に飛んだ時には重篤な塞栓症を引き起こす。
そのため、心房細動があるような患者さんでは血栓ができにくいように予防的に抗凝固薬を服用する。

今まで、長い間、抗凝固薬の中心はワーファリンであった。
しかし、プラザキサの登場を皮切りに様々な抗凝固薬が登場しつつある。

イグザレルト錠もその一つという事になる。

ここで凝固系カスケードをおさらいしたい。
ⅦaにTF(組織因子)が付くとⅧa,Ⅸaが活性化、するとⅤa,Ⅹaが活性化し、トロンビンが活性化し、フィブリンが生成される。
(当ブログ、リコモジュリン参照)

プラザキサは直接トロンビン阻害薬であるのに対して、イグザレルトはⅩaを阻害する事で凝固系を抑制する。

Ⅹa阻害といえば、リクシアナ錠がある。
リクシアナ錠は現在“下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制”の適応であるが、いずれ心房細動による血栓塞栓予防の適応を取る予定であるという。

つまり、ワーファリンに代わる薬剤として、現在発売のプラザキサカプセル、今回発売になるイグザレルト錠、そしていずれ適応を取る予定のリクシアナ錠があるという事である。

これは薬剤の歴史の上では大きな転機であると思う。

プラザキサを始め、トロンビン直接阻害、Ⅹa阻害薬に関しては懸念される事が一つある。
それはワーファリンと異なりPT-INRのような効果副作用の指標が無い事である。

そのことに関連してか、プラザキサに関しても関連性の否定できない出血性副作用による死亡例が出現し、安全性情報が出た。

よって、イグザレルト錠も慎重に使用される例が多いかもしれない。

薬剤師としては、出血症状や出血症状に対する対処をしっかりと服薬指導する事が求められる。

一般名はアジルサルタンであり、久しぶりにnewARBの登場である。

アンジオテンシンⅡレセプターのAT1レセプターに高親和性のARBである。

私も含めて、ここ最近ARBと称してこの辺のアンギオテンシン系の知識がおざなりになっていらっしゃる先生のためにもこの辺をおさらいしたい。

まず、アンジオテンシノーゲンという前駆物質がレニンの作用によって、アンジオテンシンⅠになる。アンジオテンシンⅠではまだ昇圧効果を示さない。
アンジオテンシンⅠからアンジオテンシン変換酵素(ACE)またはキマーゼ、カテプシンGによってアンジオテンシンⅡとなる。
このアンジオテンシンⅡは昇圧効果を示す物質である。
このアンジオテンシンⅡには二つのレセプターがある。
アンジオテンシンⅡタイプ1受容体とアンジオテンシンⅡタイプ2受容体である。
それぞれAT1受容体、AT2受容体と訳す。
この時にアンジオテンシンⅡのⅡが消えるため、AT1やらAT2がアンジオテンシンⅠやらアンジオテンシンⅡなどと混合した経験は皆様もお持ちではないだろうか?

AT1受容体は血管収縮に働き、血圧を上昇させる。さらに心肥大も引き起こす。
いわば、作用してもらっては困るアンジオテンシンⅡ受容体だ。
AT2の方は血管を拡張させ、血圧が下降する。さらに心肥大も抑制する働きをする。
いわば、作用した方がいいアンジオテンシンⅡ受容体だ。

つまり、アンジオテンシンⅡ受容体ブロッカー(ARB)としてはこのAT1受容体を選択的に阻害した方がより良く恩恵を受けられるという事になる。


このAT1親和性はIC50という数値で比べる事ができる。
IC50は受容体半分を阻害するのにどれくらいの濃度が必要かを示したものであり、低い方がその受容体に対して親和性が高いという事になる。
バルサルタン(44.9)、テルミサルタン(5.1)、オルメサルタン(6.7)であるのに対して、
アジルサルタンでは(2.6)という数字を出している。

さらに、AT1受容体に結合後、数回洗浄した試験でも他のARBに比べて、AT1受容体阻害率が変わらないデータを得られ、
つまりは少量でずっとくっ付いているのがアジルサルタンであるという事になる。

この事は効果を期待できるのと同時に副作用の低血圧が出た時には遷延する可能性もあるという事である。
このアジルサルタン(アジルバ錠)においては初期からの高用量は避けるべきであると考える。

アジルバ錠は1日1回が用法の薬剤である。

しかし、半減期は12-13時間とやや1日持ちそうにない半減期である。
これはアジルサルタンが脂溶性が高く、体内に保持されるためであるのと、先ほど示したように受容体結合が非常に強固であるためであろうと思う。


アジルバ錠のこのがっちりと長く効く降圧効果は長期に服用する必要のあるARBのような薬剤にはアドヒアランスがやや悪く、毎日ではなく、飛び飛びにしか服用しない患者さんにおいては飲んでいない日も比較的効果があるのかもしれない。
誤解の無いように付け足すが、アジルバ錠は毎日服用すべき薬剤である事は間違いない。

懸念すべきところとしては、extreme-dipper型と言われる夜間に血圧が下がる患者さんにおいてはこのアジルバ錠という薬剤の特徴上慎重に投与される事が良いように思う。

武田薬品工業から発売されるアジルバ錠は同社のブロプレス錠の後継薬となる薬剤である。



ロタウイルスに対する経口ワクチンである。

ロタウイルスは2層のタンパク質に覆われた2本鎖RNAウイルスである。
下痢症、嘔吐症の原因として知られる。
特に小児は重篤な下痢を起こしやすく、罹患患者の10%は入院となる。

よって、ワクチンにより免疫を獲得する必要がある。

ワクチンのタイプとしては生ワクチンであり、毒性は取り除いているが、摂取後増殖することが不活化ワクチンと異なるところである。

ロタウイルスは実に100以上の血清タイプがある。よってそのどのタイプに対して免疫を獲得するかが問題となる。

ロタウイルスの抗原は外層表面(P型)、外層表面突起タンパク(G型)にて分類される。
ロタウイルス血清型の世界分布としてはP型で分類すると、P8型がほとんどであり、
G型で分類するとG1、G2、G3、G4、G8、G9で占められる。

2011年7月に発売となったロタリックス内用液はこのP8型を使って製造された生ワクチンである。
今回のロタテックはこのP8型に加え、G1、G2、G3、G4の5つの血清型で製造された生ワクチンであるため、より広範囲にロタウイルスの免疫を獲得できるというわけである。

ロタリックスとの比較を述べるとデバイスの面ではロタリックスはチューブにキャップをかぶせ、回して中の栓を取るというやり方であり、折れた中栓がチューブ内に入ってしまい使えなくなるという問題があった。
ロタテックはねじ切りキャップで比較的に簡便に開封できるという点ではロタテックの方が使い勝手はよい。

用法での比較はロタリックスは2回接種でよいのに対して、ロタテックは3回接種が必要である。より高い予防効果を目指しての事かもしれないが、3回の接種は来院の煩わしさの面ではデメリットである。

ロタウイルスは下痢や嘔吐などの症状の他にロタウイルス脳症という神経系の疾患を引き起こす。
それに関連してか、ロタリックスの副反応には易刺激性(少しの刺激でも過敏になること)という副反応があった。易刺激性は赤ちゃんでは夜泣きが多くなるという事である。

ロタリックスという生ワクチンが病原性を示したという事は考えにくいため、この副反応は恐らくはロタリックスに対して抗体が形成され、それが神経に対しても障害を加えているのではないか?と推察される。
したがって、ロタウイルスの神経症状もこの抗体形成による自己神経障害が機序ではないかと考える。

その副反応がロタテックは国内における臨床試験においてはまだ出ていないという。
製造の元となったロタウイルスの型が違うために生まれた差か、はたまた未だ単に出ていないだけか分からないが、見守っていく必要があるだろう。

以前にアメリカにおいてロタシールドという同様のロタウイルス生ワクチンが発売された時にワクチン接種10054例に5例の腸重積患者が出現した。
その経緯もあり、接種不適当者には腸重積患者関係の記載がなされている。

このロタテックは直後に吐き出した場合でも再接種しないという事が注意するところでああり、糞便中に生ワクチンが出るために水平感染を防ぐためにも手洗いを十分にされたい。
一般名はガバペンチン エナカビルである。
レストレス(休めない)レッグス(足)症候群という
四肢に不快な感覚が出現し、下肢を動かしたくなる疾患の治療薬として発売された。

ガバペンチンといえば、ガバペン錠である。
てんかん治療薬としてはマイルドな薬剤で副作用の少ない薬剤であり、さらには神経因性疼痛に対して良く用いられる薬剤である。

ガバペンは吸収の際は小腸上皮に局在するトランスポーターを介した能動輸送によって吸収される。
よって、経口吸収時には吸収に個人差があり、また薬物吸収トランスポーターの飽和による臨床用量付近で飽和し、吸収が悪く、血中濃度の立ち上がりも悪いデメリットがあった。

レグナイトはガバペンをプロドラッグ化する事でガバペンとは異なるトランスポーター
それも、小腸大腸に多く存在するトランスポーターから吸収される。
さらに、pHに依存した受動拡散により吸収されるため、吸収が格段に良くなった。

これを例えるなら、今まで電波が入りにくかったマイナーな携帯会社から大手携帯会社に変更したところ、格段に電波が入るようになったという状態だろうか。

さらに徐放製剤にした事で薬効の持続時間を増した。

つまりは、
レグナイトはガバペンの吸収を良くし、作用時間を長くしたversion up 薬と言える。


この改良にて適応に上がったのがレストレスレッグス症候群である。
とくにこのレストレスレッグス症候群は足のむずむずによって夜眠れないというのがQOLを著しく低下させる。

レグナイトはこのレストレスレッグ症候群による不眠をターゲットにした薬剤なのである。

吸収を良くする事でレストレスレッグス症候群を改善するだけの血中濃度を確保する事ができた。
さらに、作用時間を長くする事で夜中に途中で切れるという事を防げる。

1日1回の用法でも半減期は5時間ほどしかない。
これは、夜間の症状に絞っているためである。
よって添付文書中に記載してある夕食後に投与というのは守る必要がある。
半減期5時間という事も考えて、途中で効果が消えてしまうような患者さんの場合は寝る前などに服用。朝に持越し効果などが起きてしまう患者さんには夕食よりやや前に服用してもらうなどの工夫が必要になってくると思う。

1日数回の服用にしなかったのは、成分はガバペンなので、眠気の副作用はあるためであると思う。

今回のレストレスレッグス症候群による不眠の適応はこの副作用も逆手に取った形となる。


ガバペンはてんかん治療においてはやや効果の面で弱い薬剤である。
レグナイトは吸収を改善した事により、効果の面での増強が見込める薬剤である。
レグナイトの適応がてんかん、神経因性疼痛などに広がった時は楽しみである。

一般名はデノスマブ
語尾が-umabなので、ヒト100%モノクローナル抗体という事になる。
単クローン抗体(モノクローナル抗体)の命名法は
マウス抗体: -omab(オマブ)
キメラ抗体: -ximab(キシマブ)
ほぼヒト抗体 : -zumab(ズマブ)
完全ヒト型: -umab (ウマブ)
というような命名法となっている。
新しいモノクローナル抗体製剤が出た時は参考にされたい。

骨は壊しては新しい骨を作る(リモデリング)を繰り返す事で強固な骨を保っている。

この骨のリモデリングに対して関与している物質がある。
RANKL(RANKリガンド)である。

RANKLは前駆細胞から破骨細胞へと分化させる物質である。
つまり、RANKLが増えると、破骨細胞が増え、骨の破壊が増す(骨吸収が促進)。

生体内にはオステオプロテゲリン(OPG)というデコイ受容体があり、このRANKLを捕獲する。それにより、破骨細胞の過剰な増加を抑制する。

デノスマブはこの機序を利用したモノクローナル抗体製剤なのである。

もともと、RANKLは捕獲される生体内の機序があるため、それを捕獲するモノクローナル抗体を投与しても生体内にそれほど悪影響がないと考えられる。

つまりは、デノスマブは破骨を促進するような病態である骨転移による骨病変や骨粗しょう症など(骨粗しょう症はまだ適応外)に対して、破骨を促進する物質であるRANKLを捕獲し作用しないようにする事で破骨を抑制する薬剤なのである。

現存のビスホスホネートの作用機序は破骨細胞のアポトーシスであるため、作用機序的に言えばビスホスホネートよりマイルドな作用機序という事になるだろう。
ランマーク皮下注もビスホスホネートも破骨細胞を抑制するという点では共通する。

という訳で、このランマーク皮下注と新薬の対抗馬は現在のところ、ゾメタ注であろう

ゾメタのようなビスホスホネート系薬剤といえば、顎骨壊死の副作用が懸念される。
ランマーク皮下注ではどうかというと、あいかわらず出現するようである。
やはり、顎骨壊死は破骨、形成の骨のリモデリングを止める事で骨粗鬆症のような脆弱な骨は防げるとしても、真に健康な強固な骨を作れない事に起因しているのではないかと推察される。

ランマークでは皮下注で用いる事ができ、点滴静脈で15分以上必要なゾメタと比べると投与の面ではランマーク皮下注が1歩リードしている。

効果の面でもランマーク VS ゾメタではランマークに軍配が上がったようであるが、それほど多きな差ではないという印象。

副作用としてはランマーク皮下注では低Caの副作用がゾメタよりも多い頻度で出現している。
これは効果の高さの裏返しという事であるとも言えるが、薬剤師としては4週1回の投与の薬剤であり、受診の間隔が空く可能性があるために患者さんには低カルシウムの初期症状である 手足のしびれ、知覚症状、嘔吐などをよく説明する必要がある。
予防として、カルシウム製剤やビタミンD製剤が処方されるかもしれない。

代謝排泄に関してはゾメタは腎排泄薬であり、腎機能によって投与量を調節する必要があった。ランマーク皮下注では腎機能低下(透析者も含む)例に対しても用量調節が必要ない。このあたりもランマークの利点である。

以前は天然の化合物がある特定の疾患に効く事からその病因の生理活性物質を解析・同定されてきた経緯があるが。近年の医学研究の進歩により、創薬よりも速く病因の生理活性物質が解析・同定されるようになり、その病因となる生理活性物質をピンポイントで抑制するようなモノクローナル抗体のような薬剤は今後の薬剤の主流となる。