2021年5月7日 金曜日

 猫町俱楽部 宇野 重規 『民主主義とは何か』 読書会に参加。

 

 今回の課題本はこちら。

 

 

 政治学者宇野重規さんの「民主主義とは何か」。

 宇野重規さんは気鋭の政治学者として最近注目されています。

 私は宇野さんの名前は存じていましたが、今回この本を手に取ってみて宇野さんが1967年生まれ、すなわち私とは2歳年上なだけと言うことに気づきました。

 同世代だったのですね。

 それだけでなくこの方とも同じ年にお生まれでした。

 

小幡績「アフターバブル」その2

 

 経済学者の小幡績さんとも同い年です。

 

 私は1960年代後半から1970年代前半生まれの研究者に最近注目していますが、宇野さんもそうでした。

 この方も同様です。

 

平井書店 ブックトークVO.L12 「幸福の増税論」

 

 小田原にお住いの慶応義塾大学経済学部教授、井手英策さんで1972年生まれです。

 なお、井手さんは最近あまり話題に上らないようですが、FBを見るとそれなりに活動されています。今の政治状況では自分の理論を実現できる可能性がf低いと考えているようです。これから将来を担う学生や子供たちへの教育を重視する方向にシフトしているようです。

 

 他に注目している研究者には

 

 篠田英朗(1968年) 平和構築論

 細谷雄一(1971年) 国際政治論

 池内恵(1973年)  イスラーム政治思想

 亀田俊和(1973年) 南北朝史研究者

 

 がいます。

 亀田俊和さんはツィッターで相互フォローしていますが、私の拙いコメントにRT、いいねをしてくださいます。井手さん同様に推しの研究者です。

 

 話を戻します。

 課題本は大変面白く、3日間で読み終えました。

 この本は参考文献が豊富で、これらを読むことでさらに理解が深まるはずです。 

 参考文献については別記事としました。

猫町俱楽部 宇野 重規 『民主主義とは何か』参考文献について

 

 読書メーターの書評です。

「猫町倶楽部5月の課題本。宇野重規先生は以前から知っていたが、私より二つ年上なだけだったと初めて気づいた。古代ギリシャから民主主義はどのような歩みをたどってきたか、簡単ではあるが見事にまとめられている。民主主義とは何か、学校教育でこの本を福徳本にして討論すると良いのではないか、と思うくらい。残念ながら今の日本の学校教育ではそれはまず不可能。ロバート・ダール、ハンナ・アーレントの思想を取り上げているのが新鮮。さて、猫町ではどういう議論になるだろうか。楽しみ。」

 

 宇野先生は本当にうまくまとめてくださったと思います。今の日本でこのような本が恐らくは学校教育で用いられていない、あるいは民主主義の歴史や意義がまともに教えられていないことは大変問題であると思います。「民主主義とは話し合い」、「民主主義とは多数決」、あるいは民主主義と関連の深い人権についても「人権とは思いやり」など安易な言葉で語られすぎています。1990年代までは新潟県巻町の原子力発電新設を住民投票で否決した例のように日本でも民主主義をバージョンアップする動きはありました。しかしその後のバックラッシュ(反動)により今や政治不信を超えた民主主義への不信が高まっているように感じます。

 

 民主主義も人間のやることですから間違いはあります。間違いはあって当たり前です。問題は間違いから学ばない事ではありますまいか。アメリカの2016年大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選したことによりアメリカの民主主義は死んだと言われました。しかし2020年のジョー・バイデン氏がトランプ氏を破って大統領に当選したことはアメリカの民主主義の再生への第一歩につながると思います。これはバイデン氏を支持する陣営がトランプ氏を当選させてしまった間違いから学んだことが大きいと思います。

 

 この「民主主義とは何か」も民主主義は素晴らしい歩みをしてきたのだ!と賛美はしていません。民主主義はジグザグ歩んできたことを語っています。それで良いと思います。

 

 この本は「はじめに」で読者にこのように問いかけます。

A1 「民主主義とは多数決だ。より多くの人々が賛成したのだから、反対した人も従ってもらう必要がある。」

A2 「民主主義の下、すべての人間は平等だ。多数派によって抑圧されないように、少数派の意見を尊重しなければならない。」

 

 皆さんはどう思われるでしょうか。

 A1が正しいように思う人が多いかもしれません。

 でもAIでは多数派が多数決を制すれば例えばある人から正当な理由がなくても財産を無理やり取り上げることもできる、と言う事になりかねません。

 A2はA1により起こりうる「多数派の横暴」に歯止めをかけつつ、人はみな平等という原則の下に、一人一人の権利を守る、と言う事であると言えます。

 

 民主主義とはこのように様々な観点から考えられ、そして実践されなくてはならないものです。

 この「民主主義とは何か」は人類の民主主義の長い歩みを振り返りつつ、民主主義はどのように考えられてきたのか、そしてどのように実践されてきたのか、考える本なのです。

 

 読書会当日。

 20時30分開始。20時から受付開始。今回は待機時間中の懇談はなし。参加者は猫町ラウンジの情報では47人。

 私のルームは5人。4人が3年以上猫町に参加し続けているというベテランで男性。唯一の女性参加者の方はすこし萎縮していたようです。

 

 最初に自己紹介と参加理由を語り、その後ファシリの意向で読書会が進みます。今回のファシリの条件は最近選挙で何かの役に選ばれた人、と言う事でした。生徒会で役員に選ばれた人でも良い、と言う事だったのでアウトプットチームのサポーターであり、猫町参加歴9年のKさんがファシリ。余談ながら彼とは2015年以来顔見知りの関係です。

 

 最初に私が先ほど書いた「民主主義とは何か」の「はじめに」で宇野さんが問いかけられた3つの問いについて皆さんはどう思いますか、との一人の参加者の問いかけで本格的に読書会開始。

 この「はじめに」はとても大事な箇所なのですが、うっかり読み飛ばした人が多かったです。私も最初読み飛ばし、読書会当日になって最初だけ読み直してこの「はじめに」の問いかけがとても大事であることに気づいたクチです。

 前述以外の二つの問いかけについても書いておきます。

 

 B1「民主主義国家とは、公正な選挙が行われていることを意味する。選挙を通じて国民の代表者を選ぶのが民主主義だ」

 B2「「民主主義とは、自分たちの社会の課題を自分たち自身で解決していくことだ。選挙だけが民主主義ではない。」

 

 Ⅽ1.「民主主義とは国の制度のことだ。国民が主権者であり、その国民の意思を政治に適切に反映させる具体的な仕組みが民主主義だ」

 Ⅽ2「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会を作っていくための、終わることのない過程が民主主義だ。」

 

 このA,B,Cの3つの問いかけについては読者の皆さんも考えてみてください。

 

 上記の3つの問いかけに対してはどの質問にも1.2両方もっともだと思う、と言う回答する人が多かったです。

 サポのTさんは台湾のオードリー・タン氏の事に触れつつ、Ⅽ2「民主主義とは理念だ。平等な人々がともに生きていく社会を作っていくための、終わることのない過程が民主主義だ。」に共感していました。C1の制度の事ばかり考えているだけでなく、理念についても考えなくてはならない、と言う事です。これには多くの参加者が共感していました。

 

 そして著者が第1章 民主主義の「誕生」で古代ギリシャの民主主義を紹介していることに、猫町倶楽部の長編読書会でギリシャ神話の勉強をした経験のある参加者が驚いていました。私はこの長編読書会に出ていませんが、ホメロスの「オデュッセイア」にオデュッセウスを故国に送り返すべきか王が民会に賛否を問う場面があったはずです。他の参加者からもアンティゴネーなどにも民会の存在が示唆されていることが語られました。

 古代ギリシャではくじ引きによる公務への参加が民主主義と考えられ、選挙は貴族政治に近いと考えられていたことは私にも驚きでした。私はこの本では触れられていない、英米法の刑事裁判における陪審制はまさにくじ引きによる公務への参加と言う民主主義の一形態であることを補足しておきました。

 

 この後サポのTさんが「貴方の理想の投票率は何パーセントですか」と問いかけ。私は70パーセントぐらい、もう一人は80パーセントぐらい、後のふたりが百パーセントと答えました。

 Tさんは「百パーセントは独裁国家でしかありえない投票率。そして国内情勢が平和であれば投票率は低くなる。投票率が高い事が一概に良いとは言えないと思う。」これは盲点でした。政治的争点が少なければ人々が投票に行く動機は低くなります。だから投票率は低くなります。2020年の米大統領選でも投票率がかなり上がったことが知られていますが、これは明らかにアメリカの分断が進み、政治的争点が多くなったため投票に行く動機付けが高くなったからです。世の中が平穏であればよほどの政治マニアでもなければ投票に行く動機付けは低くなってしまいます。

 私は米国で2期8年で共和・民主党の二大政党が交互に政権に就いていること、それは恐らく有権者が特定の政党の政権が長期間政権に就くことを望ましくないと感じるか、あるいは長期政権への「飽き」が理由で反対派に投票し、結果として定期的な政権交代を実現しているからではないか、と私見を述べました。

 民主主義は権力の監視、と言う側面があります。だから権力者の任期を限り、時々選挙で交代させる事はとても大事だと思います。

 上記の私の推測はいささか不純かもしれないですが、投票せずに政権を追認するよりはましではないでしょうか。

  これについて「日本では「勝ち馬に乗る」という現象が良くあって、自民党の長期政権につながっている面がある。これも山本七平氏の言う「空気」の一種ではないか」と言う意見があり、賛同者も多かったです。

 この辺りの展開は読書会に参加し続ける人が多い猫町倶楽部らしいところです。

 

 この後私から民主党政権時代、年金政策などが迷走したため多くの国民が民主党に失望し、折角の民主党の政権交代の経験が生かされていない事、ファシリのKさんから小泉純一郎政権のように自由民主党長期政権下でも政権交代に一定の効果があったこと、しかし民主党の失敗の後、自民党の政権復帰でかつての疑似的な政権交代の機会も失われ、政治の閉塞状況につながっていることが語られました。

 参加者全員が政治について自分の考えを持っていました。猫町倶楽部の参加者には同じ傾向がみられます。政治の事については日常でも考えているが、話す機会がほとんどなくて、猫町俱楽部の読書会が貴重な話す場になっている、と言う声もあり。

 それも「空気」なのでしょう。

 

 サポのTさんから今の政治状況では次の衆議院選挙は面白くなりそう、と言う発言がありました。私は民主党政権の経験から(年金ではミスター年金ことN氏には苦労させられました。)あまり期待はしてないのですが、だからと言って投票に行かないのは現状追認になるからまずいのも事実です。

 

 ファシリのKさんから選挙に行くだけでなく、日常生活の中で、例えば会社、あるいは自治会などの場で民主主義の事を考えていく必要があるのではないか、と発言がありました。私は国会議員の事は皆さん良く知っているけど、自治体の議員についてはあまり皆さん知らないのではないか、議会だよりを見て議会での議員の質問を知ることから始めるのも良い、と意見を述べるとKさんからは地方議員に一部の支持者のために自治体に無理を言ってくる議員がいる、と言う実態が語られました。

 

 最後の方ではTさんかKさんかが「魅力的な政治家を選ぶことはとても大事」と言う平凡なもののとても大事な発言あり。

 これは私も痛感しています。今の政治家は与野党問わず目立ちたがり屋、あるいは特定の支持者しか支持しそうもないような人間的魅力がいまいちな政治家がほとんどです。

 私はこうなったのは自由民主党あるいは立憲民主党のような有力政党が選挙互助会になっており、組織政党である公明党、共産党はイデオロギー色が強すぎるために魅力的な政治家を出せないからかではないか、と思っています。賛同される方も多いと思います。とは言えではどうしたら良いのか、すぐには答えが出ない問題でもあります。考え続ければいつか答えが出るのでしょうか。

 

 この他にも様々な興味深い意見が出ましたが、書ききれないので割愛します。

 

 意見百出、今回も大いに盛り上がりました。

 タツヤさんこと山本多津也さん、今回も良い課題本を選んでくださいました。ありがとうございます。

 それにしても最近のタツヤさんの課題本の選び方はとても鋭いですね。

 サポーターの皆さん、参加者の皆さん今回もありがとうございました。

 

 この後懇親会へ。他のルームでの読書会での内容、それを踏まえ、さらに話は盛り上がりました。次回の選挙について期待をしている人も多かったです。これについては私も反省しないといけません。選挙以外のやり方が見つかると良いのですが。何とかしたいなあ。

 

 23時で一旦懇親会はお開きに。

 その後参加者の意向でラウンジナイトタイム延長。

 こちらはお酒、特に地元の銘酒の話で盛り上がりました。

 

 23時半で最終的に退出。

 今回も楽しかったです。

 

 大いに盛り上がったので5月30日日曜日の二回目の「民主主義とは何か」読書会にも参加します。

 今度はどのような展開になるのでしょうか。

 今から楽しみにしています。