ライオンズ投手たちのVertical Spray Chart : 2010 - 2012 | Peanuts & Crackerjack

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Dedicated to the Saitama Seibu Lions organization and its players, baseball itself, and those who want to know what counts most in a given situation you are in and to make right decisions in a confident manner everytime. May the 'dose of luck' be with you!




使用している用語についての詳細はこちら → 【 用語集 ( Acronyms, Abbreviations & Jargons ) 】


【 はじめに① - 出典について(再掲) 】


このエントリーを作成するにあたって、Dan Lependorf による

Visualization: Vertical spray chart
Vertical Spray Chart for Batters
Vertical Spray Chart for Pitchers

これらの素晴らしい記事に、またそれを可能にした素晴らしい発想と創作
最大級の賛辞と敬意と、そして感謝とを示させていただきます。

このエントリーを楽しんでいただけましたら、是非上記のリンクから飛んで
Dan の素晴らしい記事にも触れていただけると幸いです。


【 はじめに② - お願い 】


このエントリーは以前のエントリー、
ライオンズ打者たちのVertical Spray Chart : 2010 - 2012 に引き続き

ライオンズの選手たちの残した成績について、主にその特長、素晴らしさ
このDan のスプレーチャートを使って“視覚的に”観ていくことを目的としております。

今回、投手の成績をチャートで表すにあたって
どうしてもライオンズの長年の課題である救援陣の成績の悪さも目につくことと思いますが

どうかこのチャートを根拠資料として選手個人への非難を、
嘲笑を罵倒をすることはしないでいただければと思います。

皆さまの愛するチームにも、必ずと言っていいほど
高く期待を一身に集めながらもなかなか結果に結びつかず、
長年にわたって思うように成績を残せず低迷し続ける選手たち
複数在籍していることと思います。

ライオンズのリリーフ陣について言うならば、
そういったなかなか安定して合格点以上の素晴らしい成績を残すことができず
本来ならばじっくりファームで調整を続けなかなか一軍での登板機会のない選手たちが

チームの構成上、主に“他に人がいない”という消極的な理由
無理やり数多く登板し、更に成績を悪化させるという悪循環にはまっているだけですから

本来全体としての“救援陣”の成績の低迷は選手個々人のどうこうできる“責任”範囲ではなく

またそのブルペン陣の成績の低迷があるシーズンの、ある範囲の時期だけならば
現場指揮官である渡辺監督を始めとした首脳陣がその起用方法を工夫していくことで
なんとかうまくやりくりし“全体として”合格点の成績にまとめあげることも可能で
つまりそれは監督を始めとした首脳陣の責任の範囲だと観ることができますが

これだけ長年にわたって、同じように救援陣の成績の物足りなさが目立ち
その整備が大きな課題として真っ先に上り続けるのであれば

それはもはや現場指揮官の首脳陣の手に負える範囲ではなく
ズバリ全体として圧倒的に力不足-つまり“相手攻撃陣を抑えていく力”の総量が足りていないだけと言え

それを現場の首脳陣や選手たちの“過度な”頑張りで、犠牲の上で奇跡的に改善していこうとすることは
例えるならば物量で圧倒的に勝っているアメリカ合衆国に対し気合いで、根性で、
そして“一点突破”でしゃにむに挑んでいった大日本帝国と同じ過ちを、失敗を繰り返すこととなり
一向に成績が改善されず、ますますじり貧となり成績は悪化の一歩をたどるのみとなることでしょう。

ですから、問題の改善策としては何度も述べてきた通りではありますが
ライオンズのフロントオフィス、つまり編成陣がじゅうぶんな補強をすること“だけ”と言え

逆にいえばここ数年にわたって改善されないリリーフ陣の成績の責任は
他の誰でもなく、フロントオフィス(編成陣)にあるということになります。

どうしても個人を糾弾し、責任の所在を明確にしたいのであれば
それは選手たち個々人をでもなく、また渡辺久信監督を始めとした首脳陣をでもなく

(選手や首脳陣は名前がハッキリ出ていますので同じように敢えて名前を明記しますが)
昨年までの球団本部長、前田康介氏および今シーズンからその職を引き継いだ鈴木葉留彦氏といった
チームのフロントオフィス(編成陣)のトップをこそ責任追及の対象としていってほしいというのが
私からのお願いとなります。


---以上、いつものことながら前置きが長くなり恐縮ですが
もし上述の趣旨をご理解いただけましたら是非是非、選手たち個々人を、そして
渡辺監督を始めとした首脳陣たちを非難し罵倒し、嘲笑することは止めていただければ幸いです。


【 本章 】


まずは下の今シーズンここまでのライオンズの投手たちのチャートをご覧ください。

$Peanuts & Crackerjack-verticalspraychart_pitcher20120603

誤解を恐れずにバッサリ簡単に観方を説明するならば

今シーズン昨日までの段階で、ライオンズの各投手たちが相手打者たちに平均どれだけの角度で打球を打ち上げられているかを
チャートの角度で示すと共に

それ以外、つまりフィールド内に飛んだ打球を除いた
本塁打(※厳密にいえばこれは上と重複していますが)・三振・四死球といった
100%純粋に投手が責任を持つ成績を防御率に似せて表したFIPという指標
チャートの原点から伸びるそれぞれの線の長さで示したものとなります。

ただし、NPBでは hit f/x は導入されておらず
(※MLBでは導入はされていますがそのデータは公開されておらず利用できないそうです)、

打者が平均して打球をどんな角度で打ち上げたかの正確なデータはとることができないため
かわりに投手ごとの全被打球のうちグラウンドボールとフライボールの比率
三角関数を用いて角度に変換し、それでもって代用しております。

(※犠打成功分、そしてラインドライヴの打球については計算から除いておりますが
  犠打失敗分のフライボール・グラウンドボールについてはそれぞれ含んでいます。

  また、フライボールの中にはインフィールド・フライボールに加えもちろん本塁打・犠飛も含んでいます)

また、チャートの各線の長さは本来フィールド内に飛んだ打球をまったく無視するのではなく
本来はそれらの打球をも計算の中に入れたtERAやSIERAが最適なのでしょうが

残念ながらNPBの統計におけるそれらの指標の算出方法もわかりませんので
FIP(※ただし、これも定数はMLB版の3.12で固定にしております)を選びました。

このように、正確なデータとは到底言えず指標も代用品ばかりで
更に打者がもっとも結果を残しやすいラインドライヴの比率も残念ながら角度データからは省いてはいますが
(もっとも、どこまでいっても100%正確なチャートなんて、特に二次元的に表示することなど不可能ではありますが)

チャートを見る限り、非常にうまく投手ごとの特長を表しているのではないでしょうか。

ということで、続いて統一球導入元年の2011年シーズンのデータおよび2010年シーズンのデータを用いて
それぞれ2011年と2010年のライオンズ投手たちの Vertical Spray Chart を観ていただきたいと思います。

Peanuts & Crackerjack-verticalspraychart_pitcher2011

Peanuts & Crackerjack-verticalspraychart_pitcher2010

まず興味をひかれるのは、統一球導入前の2010年シーズンにおいては
グラウンドボールに比べフライボールの数が多くなればなるほど全体的にFIPの値は悪化していっており、
つまりはFIPの成績を左右するのは主に本塁打の多さによるものだったと言えますが

統一球導入後のここまで2シーズンを見る限りでは
2010年シーズンにみられたその傾向がなくなり

数多くフライボールを打ち返されても、本塁打になる確率が減少した影響で
西口さんのように優秀なFIPの成績を残すことが可能になると共に

数多くグラウンドボールを打たせる投手たちであっても
四死球を数多く奪われればこれまでに比べFIPの値が相対的に高くなることも多くなる、

こういった統一球導入前後での変化ですね。

そして、選手ごとの特長を観ていきますと

今シーズンはホークスに移籍しましたが
やはり帆足投手のグラウンドボール・ピッチャーぶりは一目瞭然

速球と数種類のスプリッターを投球の軸にしており
本来同じようにグラウンドボール・ピッチャーを目指すべき平野さん
過去2シーズンどちらかといえば数多くフライボールを打ち返されており

それが影響してかFIPも非常に物足りなく、また先発ローテーション枠をがっちりと
掴み続けるだけの成績を、評価を得ることに失敗し続けてきたのですが

今シーズンはわずかに未だ1登板だけではありますが
非常に典型的なグラウンドボール・ピッチャーの投球を魅せてくれFIPも優秀ですから
今後この傾向を継続していけるかが今後の平野さんの活躍のカギになりそうですね。

逆に大石さんの今シーズンのフライボール打球の多さは心配
今後彼がいつ、どのようにこれを修正してくるかも注目していきたいポイントです。

また、対戦打者数も消化イニング数も少ないリリーフ投手たちの起用判断について観ると

実は20112年ここまで、そして2011年シーズン共にFIPが最も優秀だったのは星野さんですが
やはり早い段階から打球が集中して安打・長打となり、失点を集中して重ね早めに防御率を悪化させる

BABIPが統計的に落ち着くまで数多く登板機会を獲得することができずじまい、ということもあり
リリーフ陣の投手の起用方法、そして彼らが素晴らしい成績を残すことは
ほんとうに難しいものだなあと改めて実感させられるものですね。

他にもいろいろと各選手ごとの特長やその進化・変化を観ることができますが
今日はとりあえずこのあたりで一旦終了としたいと思います。

今後もライオンズ投手たちの打球傾向にみられる特長を
興味深く、そして楽しく追い続けていければと思います。