August 16, 2011 Eagles at Lions | Peanuts & Crackerjack

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$ピーナッツとクラッカージャック-20110816


 ★Tips 1 : 今日のワクさん、ストライク率は約61.3%、大きく2/3を下回る物足りない成績でした。

         25度の打者との勝負のうち2ボールまでいったのがのべ10度、
         3ボールまでいったのがのべ7度、そして四球2で1ボール以内での勝負が60%。

         私は今日のワクさんの投球を見ながら
         田澤投手がRed Soxに入団した当時の首脳陣との間のやりとりを思い出していました。

         日本でのアマチュア時代、ランナーがいなくともセット(stretch)で投げるスタイルで
         投球バランスや制球を安定させ、さらには投げる時のクセを出しにくくするという
         “明らかな結果”を導き出してきた田澤投手、

         MLBでも当然そのスタイルを継続しようとしますが
         Red Sox首脳陣の反応は“いや、シンプルにワインドアップで投げよう”というものでした。

         (※詳細はこちらのコラムを参照してください)      

         Red Sox首脳陣の思想としては、多少のクセや制球を気にするよりも
         投手として最優先におくべき事項は、まずはシンプルに
         田澤投手の最高のスピードとスピンを持つ投球を打者に向かって
         どんどんと投げ込むことである、ということなのでしょうが

         同じように私がここ数年ずっとワクさんの投球について思うことは

         今日も80球を超えてきた5回2アウト満塁、一打同点&逆転の場面
         Garcia選手に対してその日最速の146km/hを続けて2球投げれるのであれば
 
         “シンプルに最初から自分のベストの球速とスピンを持つ速球を投げよう”

         ということ。

         ワクさんの投球スタイルの変遷を私なりに大雑把にまとめるならば

         2008年シーズンまでは多彩な変化球を操っていわゆる“かわす”投球でしたが
         2008年ポストシーズンをひとつのきっかけとして速球とフォークを軸に
         三振を数多く奪いながらイニングを重ねていく
         いわゆる本格派エースの投球へ大きくそのスタイルが変わりつつありました。

         ただ、その投球が最も素晴らしい結果をもたらした2009年シーズンでも
         完全に本格派エースの投球へと脱皮したのではなく

         ①普段はワクさんの持つ最高の速球をどんどん投げるのではなく
          制球を重視した“抑えた”速球と数多くの球種を駆使し
          球数をかけながらある意味“かわす”投球をしていきながら


         ②中盤~終盤の一打同点、逆転などのここぞの場面では一転、本格派エースに変身し
          最高の速球をゾーンに投げ込み、フォークを交えながら三振を奪い
          その危機を乗り越え抑えていく


         こういった2パターンの投球をびっくりするほど“器用に”使い分ける投球をずっと続けていきます。

         なぜワクさんが②の本格派エースの投球へと完全に移行できなかったかと言えば

         彼はリリーフ陣に弱みを抱えるライオンズというチームのエースとして
         どんな時も完投を求められ、そこで必ず勝つことが求められたため

         序盤~中盤、球数を多く費やし数多く出塁を許しランナーを背負う投球をし
         結局1ゲーム、150球以上を投げたとしてもいいから力を温存し

         9イニングを投げるわけですから終盤のランナーを背負った重要な局面で
         これまで以上の最高の投球を魅せ、完投しながら勝利を積み重ねていかなくてはならない、

         これこそ“ライオンズのエース”として一番に求められる投球だと
         ワクさんが判断したからだろうと見て取れますね。

         これはある意味ワクさんだからできたと言える“非常に器用な”投球であり
         それをやってのけるワクさんの技術はまさに職人の芸術的精巧さを連想させる、
         ほんとうに感嘆すべきものでもあることも確かなのですが

         それは残念ながらほんの小さな環境の変化によって大きく左右される
         いわばかなり脆い繊細な技術であって“器用貧乏”に陥る危険性も高く

         2010年以降徐々にフォークが決め球としてなかなか利用できなくなり
         またチェンジアップもなかなか思うように操れなくなると

         今シーズンのように結局はスライダー系の投球に頼るようになり

         ②の本格派エースの投球はなかなか継続できないのはもちろんのこと
         ①の投球も多彩な球種がなかなか操れないとなればかなり困難になることも
         残念ながら明らかだと言えましょう。

         今日もフォークを数多く利用し、それがある程度思うように制球できていたものの
         本格派エースとしての投球の証である三振がわずかに2個のみと物足りなかったのは
         やはり速球が効果的ではなかったことにその原因を求められるもの。

         さて、ここまで苦しいシーズンを過ごしているワクさんですが
         今後彼がライオンズの“本格派”エースとして素晴らしい成績を残すためには

         1.首脳陣ときちんと話し合い、どんな展開のゲームでも
           (100球とは言わないまでも)例えば120球前後になってくるならば

           どんなにそれが終盤の一打同点・逆転の重要な局面であっても
           容赦なくマウンドから降ろす、というメッセージをきっちりと首脳陣がワクさんに伝え、

           それをシーズン終盤の順位が決まってくるここぞのゲームでない限り
           首脳陣が淡々と、粛々と実行すること

         2.ワクさん自身が器用貧乏な投球から脱却し、常に本格派エースの投球を
           ゲーム序盤からどんどん展開していくこと


         この2つが今後必要になってくるでしょうね。

         勝利を求めすぎるがあまりに、ゲーム終盤の重要な局面から
         繊細に緻密に逆算していくのではなく

         エースたるワクさんだからこそ、後あとを考えすぎることなく
         今自分が対面している一人ひとりの打者に自分の持てる最高の投球を投げこんでいく、
         つまり"Seize the day, Seize the moment"
         “今を生きる”投球が何より重要ですね。
                    
         渡辺監督が口を酸っぱくして言っている“ストライク・ゾーンで勝負すること”
         これはリリーフ陣だけを対象としたメッセージというわけではなく

         実は監督はエースたるワクさんにこそ
         最も理解し、実践してほしいと切に願っていることでしょうね。

 ★Tips 2 : 今日のライオンズ攻撃陣は得点圏にランナーを置いての打席は計7度、
         その内訳は 1-6(うち併殺打1)、犠飛1で得点圏に残塁3、得点2。

         今日は10安打・1死球で出塁は11、その全11人のランナーの行方は
         残塁6、併殺打による二塁封殺1で得点4という結果でした。

         今日はイーグルス攻撃陣の奪った22の出塁(プラス失策による出塁2)に比べれば
         ライオンズ攻撃陣の奪うことのできた出塁は半数にも満たないものとなり

         これではどれだけ終盤まで“ひとにぎりの運”のおかげで
         イーグルス攻撃陣が数多くの残塁を喫し、思うように得点を挙げることができなくとも

         結局は終盤にライオンズ救援陣が大量失点を喫し、
         敗戦を喫するのはある意味当然ですね。

 ★Tips 3 : こういった先発投手が数多くの出塁(5イニングで11個)を許しながらも
         残塁8、牽制刺1で何とか大量失点をせずにきたゲームを勝っていくためには

         救援陣がその後の出塁をもなかなか許さないような
         打者を圧倒するような素晴らしい投球をすることが求められますが

         その可能性の最も高いミンチェさんが緊急登板回避し、そして牧田さんも
         彼が毎年数多くのセーヴを記録し続けている百戦錬磨のクローザーなら
         今日のような場面もいつも以上の最大限の集中力で向かっていき、
         抑えることも可能だったでしょうが

         残念ながらクローザーとしての経験が浅く
         それを肌で感じることも難しかったのでしょう、
         あれよあれよという間に数多くの出塁を許し大量失点を喫することになります。

         この2試合の敗戦は牧田さんにとって非常に大きな経験となったことと思います。

         反省すべきところは反省すべきでしょうが
         もともと今日の敗戦はエースが11個の出塁を許しつつ5回でマウンドを降り
         その後も数多くの出塁を許し続けたライオンズのディフェンス全体の問題なのですから

         自分の投球を疑うことだけは決してしないでほしいですね。