勝敗を超えて | Peanuts & Crackerjack

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$ピーナッツとクラッカージャック-BS20100423

はじめに、今日のゲームは
ライオンズ攻撃陣にしごとをさせなかった
バファローズ先発、金子投手の素晴らしい投球に
最大限の拍手を贈るべきゲームでした。

こんなゲームでは少ないチャンスの場面を
クリーンアップ・ヒッターが一振りで活かし
得点を奪うことが求められるものですが

そんな8回のいわゆる "money time"
サラリーを稼ぎ損ねたクリさん、剛也さんと

逆に素晴らしいピッチングで
自分の "money time" に変えてしまった
金子投手という結果に終わってしまいました。

終盤までとても緊張感あふれる
手に汗握る素晴らしいゲームでした。

ただ、やはり私が気にかかるのはワクさんですね。

もちろん

立ち上がりの納得できない投球の中
剛也さんのエラーなどもありながら
自らの暴投による1点だけで切り抜けたこと、

そしてその後徐々に修正しつつ
1人のランナーも許さずイニングを消化し続けた
5回までの素晴らしいピッチング、

そして6回、7回といずれも
得点圏にランナーを背負いながら
高い集中力で無失点で切り抜けた素晴らしい投球、


いずれも文句ない素晴らしい投球の連続でした。

しかし、8回に北川選手の犠牲フライで
ゲームの勝敗という面では“大きな価値”のある
1点を失った後のワクさんの投球を観る限りは

やはりワクさんの投球は
どうしても勝利に“固執”しすぎている、

そしてそれがライオンズを背負って立つ
大黒柱としてのワクさんにとっては

もう一段成長していくために
乗り越えていかなくてはならない大きな壁になっている、

そうひしひしと感じます。

ワクさんの投球のモチベーションは今その大部分が
チームの“勝利”にあると思います。

もちろんそれは普通の投手なら、そしてまた
例えば岸さんや帆足さんと言ったエースではないけれども
チームの軸を支える投手であっても

求められる最高のところはそこでじゅうぶん、
いや十二分なのだと思いいます。

ただ、ワクさんは今すでに
そんな“一流”ピッチャーに求められることは
どれだけ調子が悪くともなんとかコンスタントにこなせる、

そんな投球を可能にしてきています。

今日でも並の投手であれば
2回以降にあれだけ修正してくることも不可能で
早いイニングで早期降板となったことでしょうし

一流の投手でも
もっと早い段階で追加点を奪われ

8回の段階ではもはやマウンドにはおらず
リリーフ陣に後を託していたことでしょう。

今日、ゲーム後のインタヴューで金子投手が
「わたしが対戦しているのはライオンズ打線ですから」と
こうおっしゃっていましたが

逆に、おそらくワクさんが対戦していたのは
バファローズ打線“だけ”ではなくもちろん
金子投手とも対戦していたのではないかと思います。

チームの勝利のために、先取点は与えてはならない。
チームの勝利のために、相手の金子投手が素晴らしい投球で
味方攻撃陣を0点に抑えているため
これ以上の失点は1点も許されない。

こんな勝利への“固執”が過剰になりすぎて
集中力がオーバーヒートになってしまい

かえって“与えてはならない”と強く思っている
先取点を自らの暴投で相手に与えてしまったり

“1点も許してはならない”と強く思っている
追加点を終盤に奪われてしまった後に集中力が切れ

伏兵と目される前田選手に
自らでさえ“まぐれ”と称するグランド・スラムを浴び

あっけなく、それこそ人が変わったように
大量失点を喫してしまうのでしょう。

もちろんワクさんでなければ、
まずここまでゲームを作りなおかつ
マウンドにい続けることはできなかったでしょうし

ここまで苦労して苦労してギリギリのところで
緊張の糸を目一杯伸ばしに伸ばして耐えてきたからこそ

その糸が一旦切れてしまうと
その後はいわゆる“ごまかし”がきかずに
その問題点が白日のもとに晒されることになってしまう、

つまりは既にワクさんは押しも押されもせぬ
素晴らしい“一流”ピッチャーであることは明白なのですが

それが“超一流”を目指すにはまだまだ
乗り越えなくてはならない大きな壁が
目の前にどんと立ちはだかっているということ。

それは、何度も言いますように

“ワクさん、野球、楽しんでますか?”

“楽しいなら、それをもっと表現してほしいな”


ということなんです。

ワクさんがライバルと目するダルビッシュ投手は
どんな状況でも“勝負の一瞬”を楽しむことができる
“超一流”のピッチャーです。

先日の試合でもありましたが

制球がまったく思うようにならず連打を浴びて
打者一巡で一気に5失点している最中も

そして早い回に5失点をしながらも
その後7回までマウンドにい続ける間も


どこかゲームの勝敗とは関係のないところで
相手バッターやランナーとの勝負をうれしそうに、
いきいきと楽しんでいる姿を魅せていました。

ダルビッシュ投手も、もちろんファイターズの
チームを支えて立つ大黒柱のエースです。

もちろん、その登板する試合は
勝って当然、負けることはまずなく、そして更には
序盤で大量失点でマウンドを降りることは許されない、

そんなワクさんと同じような
人ひとりでは支えきれないような大きな責任という
重圧がのしかかっていることは確かです。

ただ、ワクさんとダルビッシュ投手との違いは

その大きな責任、重圧をうまく受け流して
“楽しむ”姿勢を魅せることで
他のメンバーを安心させその信頼感のもとで
うまくその役割に“集中させ専念させる”ことで

そのベスト・パフォーマンスを
発揮することのできる“場”を提供できるのか、

それとも

その大きな責任、重圧を正直に双肩の上に背負い込み
まるでそのすべてを自分ひとりで背負い込むかのように
黙々と、孤独に、淡々となにか大きな苦しみを背負って
それをひとつひとつ切り抜けていくかのような姿勢で

その重苦しい投球を“見せる”ことで
他のメンバーもその重苦しさに巻き込まれ
失敗を許されないという思いを強くし
逆に萎縮したりオーバーヒートしてしまったりすることで

そのベスト・パフォーマンスを
発揮することが困難になる“場”を提供するのか、

こういったところになり

これが“一流”と“超一流”の
とても大きな差となるのではないかと思います。

今日も、どんな状況でも勝負の瞬間を楽しむ姿勢さえあれば
8回にゲームの勝敗という面から見て
“決定的に見える”1点を奪われたとしても

その後、急激に緊張の糸が切れたようになり
大量失点を喫することはなかったでしょう。

ワクさんがほんとうにチームのエースとして
その勝利を、順位を担う大黒柱になっていくならば

ゲームの勝敗に自らを“埋没させる”のではなく
むしろどんな状況でも変わることなく
自らが勝負の瞬間瞬間を楽しむ姿勢を“魅せ”

脇を固めるメンバーたちに
どんな時も安心感や信頼感を与え
その役割に安心して集中し専念してもらい
その持てる力を最大限発揮してもらい

そんなチームメイトたちの力でもって
もっと“肩の力を抜いて勝つ”姿を魅せてほしい、
そう思います。

勝ちたい、勝ちたいと強く思いすぎると
逆にその思いがオーバーヒートし
自らを“失敗できない”状況に自分自身で追い込み

かえって自分とチームメイトを萎縮させ
思いもよらないような一打、失点、敗戦を招きます。

いくら勝利を義務づけられたエースとはいえ
今日の金子投手のような投球を相手投手がすれば

打線の援護なしに自らの力だけで勝つことはムリ、

勝負は時の運とでも割り切って
勝負の瞬間瞬間をじゅうぶんに楽しみきって

あとは攻撃陣の奮起に勝敗を預けてしまいましょう。

そんな中で勝利できれば
攻撃陣や守備陣、リリーフ陣のおかげと讃え

残念ながら敗戦となってしまえば
今日は“ついてなかった”、でも、それでも
このゲーム、ほんとうに楽しかったと

いつもすべてに感謝し、こころから満足する。

逆説的で、なかなか踏ん切りがつきにくいものですが

こういった姿勢で投げ続けることでこそ
“超一流”の投手として毎年安定して
圧倒的に勝利を積み重ねることができるのでしょう。

最後に、もう一度。

“ワクさん、野球、楽しんでますか?”

“楽しいなら、それをもっと表現してほしいな。”




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