現在、僕らは日本人から、いくつかのトラブル案件を依頼されている。
その際、面倒なのがワイロの必要性を納得してもらうことだ。
トラブルの一例を挙げよう。
10年ほど前、日本人(Sさん)がバリ人(仮名:ワヤン)の名義で土地を買った。
Sさんとワヤンは、彼が研修生として来日し、Sさんの会社で働いていたという関係である。
Sさんは異国に単身で来たワヤンをかわいがり、仕事以外でもよく面倒を見たそうだ。
やがてワヤンは日本人の女性と結婚し、子どもが生まれ、
数年後に家族とともにバリ島に帰国した。
その後、Sさんは何度かバリ島に行くうちに慣れ、彼のすすめで土地を買った。
それから10数年、ワヤンは土地を売りたいと言い出した。
Sさんは、自分がお金を払い購入したもので、税金も払い続けてきたし、
契約書に自分たちの名前もあるから安心していた。
なにより、ワヤンを信用していたが、ここにきてトラブルになっている。
嫌な話だが、現実だ。
なぜ、トラブルになっているのか。
その理由は、契約書が完璧でないからである。
Sさんはワヤンを完全に信用していたから、契約書のチェックが甘かった。
とはいえ、Sさんは会社経営者だから、いくらワヤンを信用していても
それなりには契約書に目を通してはいた。
例えば、契約書には「お金はSさんが払っている」ことが記載されている。
しかし、不動産の権利についてまでは触れていないし、全額かどうかも明確ではない。
この場合、裁判になれば、たぶん日本人は負ける。
Sさんは当初、裁判を前提に僕らに依頼してきた。
確かに、一見勝てそうな案件だと僕も思うが、現実は違う。
さて、この場合の解決は、前回の記事にある「村社会と神様」作戦しかない。
しかし、これがそう簡単ではない。
裁判ならある程度弁護士に任せることができるが、この作戦は手間がかかる上に、正解がない。
さらに、冒頭で触れた「ワイロや口利き費用の必要性を納得してもらう」のが大変だ。
トラブルに遭った人は、疑心暗鬼になっているから余計にそうだ。
でも、いくら僕らでも、そうは都合よく彼の出身村に知り合いがいるわけじゃないし、
となると、人のつながりをたどっていくしかない。
その過程で、お金がかかるのだ。
日本人は、そうした類のお金が好きじゃない。
僕だってそうだ。
でも、バリ人は違う。
そういう折り合いの中でトラブルを回避してきた歴史がある。
それを日本人に理解してもらうのは難しい。
僕らも、言われた通り裁判をするのがラクだし、それなら領収書が揃い
妙な勘ぐりも受けずに済む。
とはいえ、さすがに良心が痛むし、負けが分かっている裁判を勧めるほど、
倫理観は欠如してはいない。
でも、こうしたイロハを理解してもらえると、嬉しいのだが。。
バリ島の不動産トラブル③「トラブルの具体例」
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