幼い頃、「ムーミン」が好きだった。
岸田今日子がムーミン・トロール役を演じていた頃の、あの「ムーミン」。

特に、スナフキンに憧れた。
彼は穏やかで飄として、かつ、冷静で的確で、何よりも憧れの旅人だった。

そんな事を思い出しながら、改めてムーミンを渉猟してみると、この齢だから故か、ムーミン・トロールやスナフキンとは違う、気になるキャラクターが二人いた。

ご存知「ムーミンパパ」と、スナフキンの父親「ヨクサル」である。

【ムーミンパパ】

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若い頃、仲間達と様々な冒険を体験する。
大の冒険好きで、ムーミン谷で起こる沢山の驚くべき出来事や事件は、いつどこにでも駆け付けて目撃したいと思っている。

家族の幸せのためなら何でもしたいと思っている一方で、何か新しいことに挑戦したいという願望も強い。
ムーミン谷に落ち着いた今でも時々冒険家の血が騒ぎ、ふらりと家を出て行ったり、いらない冒険に巻き込まれたりする。

哲学的な思考を好み、ムーミン家の主人であることを誇りに思っている。
広い分野に亘る豊富な知識を基に、皆にアドバイスや助言をするのが大好き。
また、秘密事を好むが、時々誤って秘密を漏らしてしまったりもする。

若かりし頃の冒険の回顧録を執筆している。
若い頃に経験した、幾つかの素晴らしい冒険を思い出しては皆に話し、そして、筆を執り書き記す。
ムーミンパパにとって書くことは、とても大切なことである。

夢想家で、ウイスキーを嗜み、怪しげな友達と集まったり、人生についての自らの思索を日記に書き記したりもする。
海を心から愛するムーミンパパは、自らが熟練の船乗りかつ漁師であると信じている。

【ヨクサル】

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ムーミンパパの友人の一人で「海のオーケストラ号」で共に冒険をした仲間であり、優しく親しみ易い性格。

全てのことは自然に任せ、ありのままの姿であることが一番だと考えており、友人のフレドリクソンは、彼について「『生きている』そのことを大切にし、生きていることに満足している」と理解している。

ヨクサルが最も嫌うのは、何かを禁止する立札や、規則、公園の番人等で、ありのままの姿を損なう物事である。

彼の性格はスナフキンにも遺伝しているが、思慮深いスナフキンに対し、ヨクサルはありのままの姿を尊ぶ故、物事を深く考えない。
スナフキンが「自由・旅人」とイメージされるのに対し、ヨクサルには、より茫洋とした「自然・無為」というキーワードが思い浮かぶ。

ちなみに、スナフキンはミムラ夫人との間に授かった子であり、ミムラ夫人との関係は、所謂「不倫」なのだそうだ。
このことからも、彼の規則を嫌う「ありのままの姿を貫き通す」性格が窺える。

自身が大人になった今、夫として、また父としてムーミンパパに共感する部分が多々あり、一方、ヨクサルの束縛に捉われない生き様にも惚れてしまう。

いずれにしても、憧れの父親二人である。

ムーミンの作者トーベ・ヤンソンは、ムーミンパパを「大人の男の人のダメなところを凝縮したような人物」と評している。

ダメな大人で良いのなら、私でもおそらく「ムーミンパパ」には近付けそうな気がする。
でも、「ヨクサル」はちょっと遠いな…