こんにちは。
今回は『胚盤胞胚のグレード』について書こうと思います。
体外受精をこれから受ける患者さんには次のように説明しています。
私たちの考える理想のIVFは…
卵胞12個くらい発育し
卵子を10個採取し
8個受精し…
元気の良い胚盤胞が3個育って、凍結出来た
というのを目指しています…と
凍結融解胚移植が3回出来ますね。
40歳未満の凍結胚移植妊娠率は約50%ですので、計算上は上手くいくはずです…
まず皆さんが驚かれるのが…
『10個採取出来ても3個しか育たないのですか』
これはあくまでも標準例で
1個しか採取できなくてもその1個が元気に育つ場合もありますし
逆に15個も取れたのに胚盤胞まで育たず凍結出来ないこともあります
このことに関してはまた次に書きたいと思います
胚盤胞胚のグレードには…
① 発育の状態(胚盤胞腔の広がり具合)により 1~6
② 胎児になる部分(ICMといいます)の細胞数により A~C (細胞数 多A→普通B→少C)
③ 胎盤になる部分(TEといいます)の細胞数により A~C (細胞数 多A→普通B→少C)
①の1~2に関しては初期の胚盤胞でまだ②ICMと③TEに分かれていないので
初期胚盤胞「Bl1」「Bl2」と表現します。
3以上の胚盤胞には「3AB」「4BB」などと
「①②③」の順に並んでいきます。
「3BB」以上が良好胚盤胞と呼ばれています。
例えば「4AB」とか「5BB」とか
読んでるうちにってなりませんか
そして当院ではエンブリオスコープが入っていますのでAIによるスコアもついてきます。
このスコアは上記のABCに加えて発育のスピードも加味されます。
同じ「4BB」でも何時間で育ってきたかで、スコア9の場合もあればスコア5の場合もありますしスコアがつかない場合もあります。
確かにグレードやスコアが高い方が妊娠率も高いですが、育たないこともあります。
逆にグレードが低くてもちゃんと妊娠出産へ至ることもあります。
あくまで目安なのであまり気にしないでいただきたいです
当院では細胞の一部が変性してきたり、退化してきた場合は凍結や融解には向かないのでその場合は凍結しません。
胚の凍結保存が出来たということは移植可能な胚に育ったと思ってくださいね
私も長らく胚培養士をしていますが、胚の生命力には神秘の力を感じます…