改:第88話.新婚の部屋【連枝の行方.第二部①】 | 風月庵~着物でランチとワインと物語

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毎日着物で、ランチと色々なワインを楽しんでいます。イタリアワイン、サッカー、時代劇、武侠アクションが大好きです。佐藤健さんのファンで、恋はつづくよどこまでもの二次創作小説制作中。ペ・ヨンジュンさんの韓国ドラマ二次創作小説多々有り。お気軽にどうぞ。

第88話.新婚の部屋

【連枝の行方.第二部『世界は愛に満ちている』①】

別荘はこじんまりとした建物に見えたが、中は西洋式の広々とした空間が広がっていた。ヒョンスは荷物を置くと室内を見回し始めた。仕事柄どうも気になるらしい。
「ギョンヒ、休んでいていいぞ」
「邪魔じゃなかったら一緒にいていい?」
「あぁ、いいよ」
ギョンヒはヒョンスへ寄り添うと嬉しそうに歩き出した。

リビングには暖炉があり、オープンキッチンと合わせるとかなりの広さだ。吹き抜けの二階には二部屋ある。階段を登った二人は手前のドアを開けると、こっそりと中を覗(のぞ)き込んだ。

大きな窓の向こうには湖が広がり、壁際には真っ白なダブルベッドが置かれている。
「寝室だな」
「あ…うん」
「デカいベッドだなぁ」
ヒョンスは目を輝かせると子供の様に大の字になってひっくり返った。
「フカフカだぁ。ギョンヒ、お前も隣に寝ろよ」
グィと腰を抱かれ、倒れ込んだギョンヒは真っ赤になって起き上がった。
「ま、まだ向こうの部屋を見ていないわ」
「お前、何赤くなっているんだよ」
「早く起きて」
「分かった、分かったからそんなに引っ張るなって」

ギョンヒに急かされヒョンスは奥の部屋を開けた。
「屋根裏部屋だ」
「わぁ~」
二人は目を見張った。窓から柔らかな木漏れ日が差し込んでいる。壁紙も森と同化したように、小鳥や可愛らしい動物達が楽しそうに遊んでいる。
「可愛い」
「子供部屋だな」
二人は手を繋いだまま窓辺に立った。
「並木道も船着き場も見えるわ」
「あそこはバレーボール場じゃないか」
連なる道も見えるので、目的地までどう行けばよいか、ここから見ればとても良く分かる。子供たちにとっては正に冒険地図だ。ヒョンスはカメラを構えると写真を撮り始めた。壁、床、窓枠…天井へカメラを向けたヒョンスは楽しそうに呟(つぶや)いた。
「天窓があるぞ」

窓を挟んで両側にベッドが置かれ、その中間に小さな天窓が取り付けられている。朝昼晩、四季の移り変わりや天候と、どんなにたくさんの姿を見せてくれるのだろう。ヒョンスは静かにシャッターを切るとカメラを下ろした。
「この部屋を仕上げたのは、他の部屋とは違うインテリアデザイナーじゃないかな」
「女の人…」
「俺もそう思う」
ギョンヒは可愛らしいベッドカバーにそっと手を当てた。
「私、こっちの部屋に泊まりたい」
「向こうの方が広いぞ」
「ダメ?」
「お前がいいなら俺はいいけど」
「じゃあ、荷物を運ばないと」
「俺がやっておく。お前はキッチンでも見てこいよ」
「うん」
楽しそうなギョンヒが階段を降りると、ヒョンスは両側から二つのベッドをくっつけた。
「ヘヘ~これでよしと」
天窓はベッドの真上だ。ニンマリして見上げていると下からギョンヒの声が聞こえた。
「兄さん、ちょっと来て」
「あぁ、今行く」

急いで下りるとギョンヒは暖炉の前に立っていた。
「寒くなってきたから火を点けようと思うんだけど」
「薪(まき)を持って来よう」
裏庭に積まれた薪を二人で抱えながら、ヒョンスは煙突に気付いた。
「風呂はここだったんだ」
「水を汲んで沸かさないと」
「俺がやっておく」
「一人だと大変だわ」
「いいから、俺にも夫らしい事させろよ」
ヒョンスは胸を張った。
「暖炉に火を点けたら風呂を沸かすからな。その間に飯を作ってくれ」

暖炉に火が入り暖かくなるとギョンヒは夕飯を作り始めた。野菜のジョン(焼き物)や彩りの良いナムル、愛する人のために美味しいテンジャン(味噌)チゲを作ろう。

次回:第89話.愛の記憶

(風月)