福島じゃアクアマリンも再開したのに、関東のクセに祭りを自粛で中止。意味わからん。

北上川にはきっと、今年たくさんの灯籠が流れるのに。

祭りのあと、盆にも花火はきっと上がるのに。

小さい頃から、日本の夏祭りは先祖と死者の供養であると、教えられなくとも染み着いていたから。

あぁ、この辺ではお祭りって意味が違うんだなと、寂しくなったり。

栃木の震災被害が割と大きかった場所から、イケメンな友達が遊びに来てた。

人見知りで、優しくて、寂しがりな、かわいいかわいい大事な友達。

おばあちゃんの病気や、自分の病気に負けまいと、必死に生きてる大事な友達。

彼の気晴らしになれればと、事あるごとに呼び出して遊んでもらってる。

人混み嫌いな子だけど、賑やかな祭りに連れ出したかった。

笑顔に囲まれると人は自然と笑顔になれるから。

子供も大人もニコニコ日焼けしてる場所に連れ出したかったのにな。

親戚までもが福島の野菜を怖がってるのが酷く悲しかった。

国内産より行ったこともない海外産を選んだ叔母に初めて声を荒げた。

あんなもん煮れば大丈夫じゃないか。むしろ今出荷されてるやつの方が厳しくチェックされてるやつだから大丈夫に決まってるじゃないか。

乳幼児がいるわけでもないのに。

なんなんだよもう。

線香花火、買ってこよう。

日曜日の夜にでも、たくさんの人へ供養の花火をあげよう。

みんな対岸の火事なクセにいつまで被害者ぶってるんだよ。
ごめんねきんばあちゃん。

今日で最期のお別れになるのに、帰らなくてごめん。

でもよっちは我が儘で甘えただから、倒れたって聞いてから一週間もたってないのに、ばあちゃんが死んだなんてまだ信じられてないんだよ。

だから、お棺に入っちゃうばあちゃんを見たくないんだよ。

死ぬほど薄情だけど、予定通りライブに行ってくるよ。

ライブが惜しいのかと言われれば、それもないとは言い切れないんだよ。

だけどね、それよりも、ばあちゃんが大好きだった姉ちゃんが、両親やよっちの前で泣くまいと気丈に振る舞う姿を見たくないんだよ。

告別式も火葬も出られずに月曜日の昼には実家を後にするのに、私はきっと丸一日泣きはらして、腫れた目で仕事に戻って、そんな姿は両親に心配かけるだけなんだよ。

腫れた顔で月曜日に笑って仕事なんか出来るほど、よっちは大人じゃないんだよ。

まだまだ、甘えっこで、ごんぼほりな末っ子なんだよ。

私が帰っても、周りに心配かけるだけで、本当に何も出来ないんだよ。

だからね、きんばあちゃん。

よっちは今日はライブに行って、笑って一週間を過ごすんだ。

そしたら来週の日曜日、きんばあちゃんに会いに行くからね。

ごめんねって、言いに行くからね。

ごめんね。ごめんね。

ありがとう。

先に逝ったばあちゃんと、10年ぶりに姉妹でお茶っこしててね。

ばあちゃんに、久しぶりにきなこもち作ってあげて。

ばあちゃんは、甘くて甘くて、ちょっとしょっぱいきんばあちゃんのきなこもち、少し誇らしげに、孫のうちらに食べさせてくれたんだよ。

「ばあちゃんのお姉ちゃんが作ったきなこもちはおいしいでしょ」って顔して。

おっとりしててしっかり者だった、きんばあちゃん。

ムーミンに出てくるミーみたいなおだんご頭が似合ってた、きんばあちゃん。

大好きだよ。

お休みね。

でもね、きんばあちゃん。ヒドい我が儘だけどね、

やっすもよっこもよっちも、もう一度だけ、きんばあちゃんのきなこもちが食べたかったよ。
きんばあちゃん、再来週会いに行くからね。

それまでには起きて、ちゃんとムーミン谷のミーみたいなおだんご結んで、待っててね。

今週行かない私は悪い子だね。

再来週なら、ばあちゃん、起きててくれるかな?

再来週にはお家に帰ろうね。

病院なんて、殺風景な所出てさ。

畑行かなきゃだよ。

姉ちゃんがばあちゃんのきなこもち食べたがってるよ。

私だって食べたいよ。

だから、再来週会いに行くから、起きてきなこもち用意しててね。

あの絵本に出てきそうな林の中のちっちゃなぽかぽかのお家に遊びに行くからね。