「桒子(桑子)-kuwako-」-Bombyx mandarina- | ーとんとん機音日記ー

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山間部の限界集落に移り住んで、
“養蚕・糸とり・機織り”

手織りの草木染め紬を織っている・・・。
染織作家の"機織り工房"の日記

蚕(家蚕)は、野生種のクワコを馴化(家畜化)したものだと謂われている。
クワコの学名は、Bombyx mandarinaで、最近のカイコとクワコに関する研究では、カイコの家畜化が少数の個体から、あるいは一か所で行われたのではないことを示唆する結果が得られたとされているから、原初の絹利用について、幅広い地域を想定する必要があるのかもしれない。
また、クワコの繭の形は、丸みを帯びた葉巻状の・・・ちょうどフットボールのような形の黄色い繭をつくる。

日本には、大陸種のクワコと交雑したクワコ、そして、日本種のクワコの二種類のクワコがいる。

『韓非子』に「鱣は蛇に似たり、蚕は蠋に似たり」という一節がある。
「鱣」とは、潜竜魚と呼ばれるチョウザメだろうか?或いはウナギか?定かではない。
そして、「蚕は蠋に似たり」の「蠋」は、通説では、イモムシや青虫の事とされているが、わたしは、根拠はないが「蠋」は、クワコの事ではないだろうかと密かに思っている。
また、「蠋」の異体字に「蜀」があることから、三星堆文化の「蜀の禹王」のことを想起させる。


養蚕を営む、わたしの感覚からすれば、桑畑で桑子の姿を見つけると、今年も、又会えたという感じで、うれしくなります。
うちの蚕たちよりは、少し早く孵ったようで、だいたい3齢くらいかな。
万葉集に、「中々二 人跡不在者 桑子尓毛 成益物乎 玉之緒許」と詠まれた「桑子」。
最近、博物館関係の資料のデジタル化によって、素晴らしいことができるようになってきた。
例えば、国宝の元暦校本万葉集(通称:古河本)の内容を、誰でも簡単に確認することが出来るようになっている。従来では、このような貴重本や希少本を実見して確認する作業は、そうそう気軽に出来ないことだったけれど、今日では、デジタル化史料のかたちの、鮮明な画像で、それを行うことが出来る。
さっそく、元暦校本万葉集 巻第十二から、原典では「桑子」がどのように表記されていたのかについて確認してみたら、異体字の桑、すなわち「桒」字で注釈が付記され、原文には余り目にしない桑の異体字が記されていた。


「だから、どうだ。」というように、直接的に何かにつながる事ではないけれど、このことは記憶にとどめておきたいと思う。

・・・季節はずれの台風がなくなってよかったなと一安心しながら。

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