「食行身禄の里の養蚕」-朝靄と稚蚕と孵化- | ーとんとん機音日記ー

ーとんとん機音日記ー

山間部の限界集落に移り住んで、
“養蚕・糸とり・機織り”

手織りの草木染め紬を織っている・・・。
染織作家の"機織り工房"の日記




気温が上がり、雨が降り、温帯モンスーンの気配が濃くなる中で、
種は芽吹き、広葉樹の青葉は、ますます青さを増し、
植物たちは、何かに魅入られたように、天を仰ぎ、天を目指す。




なにかを、生命が予感して、もぞもぞ騒ぐ。

そういう日には、蚕も孵化することが、生理的に感じ取れる。

わたしは、ずっと蚕を飼ってきたようでもあるし、
或いは、初めて飼うような気もする。

きっと、これから幾度蚕を飼ったとしても、
その度ごとに、うれしいような、愛おしいような、
或いは不安で仕方ないような、
そんな気持ちで蚕の孵化を見守るのでしょう。




朝靄が巻き、過去も未来もさえぎられて、
ここでは、今という時しか見えない。
朝靄が巻き、空気をギュッと絞れば、
磐清水のような水滴が滲み出しそうになる、この場所で、
この場所だからこそ、できることに、
目を凝らし、耳を澄ます。
そういうことを、積み重ねよう。




食行身禄(みろくさん)の三女、伊藤一行(富士講七世)が、
「万法の衆生へ蚕の四ツの徳伝え別しては女人之、感得させんが為に和讃にして朝夕常に忘れることなく、天地の御徳を守り、自ずから其の心和らぎ、天心に赴く事を願うのみ。 食行三ノ娘 一行。」と記したことを、作業の最中に、時々ふと思い出すことがある。