僕にとって世界一周、最後のバス移動となるこの日。
僕はわざと感傷的になって過ごすつもりが、とある人がその雰囲気を吹っ飛ばした・・・。
セビーリャのバスターミナルで、声をかけてきたその人は日本人。
御歳65歳、来月から払った分の5倍以上の年金を受け取るリタイヤ世代だ。
「お年寄りの話はきちんと聞かないといけない」
と言われて育てられた僕は、大阪堺市在住のその人のマシンガントークを
今にも落ちそうなくらいに眠たい目をこすりながらも、3時間聞かせていただいた。
ただ、この人、旅のスタイルが普通ではなかった。
ヨーロッパ旅行の前は1年6ヵ月をかけて、日本全国3300の市区町村のスタンプを集める
国内旅行を車中泊にて決行したというツワモノ・・・。
エスティマのハイブリット車を改造し、電子レンジに冷蔵庫を備えつけ、
全ての島々までくまなく回ったという・・・。
初めは「口うるさいおっさんに絡まれたな・・・」と思っていた僕も、
いつしか、質問したり、大笑いをぶっこいていた・・・。
昭和の旅人であるこの関西人は、宿のネット予約は全くなし。
ホステリングワールドのネットワークのことを、なんと組合!と言ったり、
飛行機のチケットのことを、「帰国の切符はもう買ったの?」と言っていた!
さすがは昭和を生き抜いてきた世代だ!
地図も東京を旅した時に各国の政府観光局からタダでもらったスペイン全土の地図を持つのみ。
「これから宿を探すのが不安だよ~」なんて言っているのを聞いて、笑ってしまった。
ただ、面白いことに、「僕は日本語しか話せないんだよ」という関西人は、
きっちりと、電子辞書を持っていた。そして、住所さえ入力すれば
地図が出てくる世界の電子地図帳を持っているのだが、両方とも、
全く使いこなせていなかった!
正直、最後はかなり意気投合してしまい、年上には敬意を!、と育てられた僕も、
「そのモロッコで買った絨毯は絶対にぼられてますよ!」
と、言わなくてもいいことまで言ってしまったりもしたが、非常にマンペンライな人だった。
そして、これだけでは終わらなかった・・・。
途中で降りた65歳の大阪人に代わって、今度は札幌人が僕に話しかけてきた・・・。
これで最後のリスボンまでの道を感傷的気分に浸れると思った矢先の出来事である。
この人、御歳63歳のすでにリタイヤ組で新婚旅行含めて、リスボンは4回目という
これまた平成の旅人である僕よりも1枚も2枚も上手だった・・・・。
この人がすごかったのが、日本人にはあまり知られていないが、スペイン北部には
有名な巡礼路というのがあり、この人は昨年、36日間をかけて巡礼路を走破していた!
そして何と今年は、巡礼路の少し北にあるさらに険しい海岸沿いの別の巡礼路を
22日間かけて、走破したとのことだった・・・。2年連続の巡礼路なんて聞いたことがない・・・。
「なんでそんな2年連続でわざわざ巡礼路を歩くのですか?」と質問してみると、
「これは歩いてみないと分からないんだよね・・・」と言われた時には、
世界一周者である僕のプライドはズタボロにされたことは容易に想像できると思う。
この札幌の方は僕と同じ大学出身で約30年上の大先輩であった。
北海道の人はやけに魚介に関するトークに熱く、僕も非常に勉強になったが、
北海道の物産でも1級品のさらに上の特級品は東京築地に送られるらしく、
東京が一番うまいと言っていた・・・。ただし高いけどねとも。
ただ、笑えたのが昭和の旅人らしく、宿はもちろん予約しないということで、
今回唯一予約した宿は、なんと!日本からFAXを送信して予約していた!
ネット依存症の僕からすると、脳天カチ割りくらいの衝撃だった!
ただ、僕は心の底から嬉しかった!
日本で家族(妻や孫の世話)を残し、一人で元気に旅をするリタイヤ世代と触れ合えたこと!
しかも、平成の旅人の僕なんかよりも、根性があって、力強く、本当に活き活きしていたこと!
今、僕がこうやって豊かに世界一周ができるのもリタイヤ世代のがんばりの
おかげかもしれないが、尊敬を含めて、ライバル心が芽生えてきたのも事実だ。
今までは、17時の定時で仕事を切り上げ、アフター5を楽しむOLを人生のライバルとしてきたが、
今後は、年金受給5倍世代も僕の強烈なライバルとすることに決めた!
「俺らアラサー世代ももっと活き活きしていこ~ぜ~!」