んん~いい朝だ。
天気もばっちりだし、よかった。
さあ、布団から出て準備しなきゃ。

「今日も楽しみだなー。」

今日は絵理ちゃんデート。
この前は僕の行きたいところばかりだったし、今日は絵理ちゃんの行きたいところだね。
待ち合わせまではたっぷり時間あるし、しっかり準備できるね。



そろそろ、出発しよう。
今から出れば30分前くらいには到着できるね。
行くまでに何があるかわからないから早めに行かないと。

「まだ、絵理ちゃんはいないね。」

予定通り30分前に到着。
うん、この待ってる時間もどきどきする。

「涼さん?待った?」
「ううん、そんなことないよ……って絵理ちゃんもずいぶん来るの早いみたいだけど。」

まだ約束まで20分もあるよ。
もしかして、この前のデートで僕が早く待ってたから絵理ちゃんも早く来てくれたのかな。

「うん、この前涼さん早かったから。今日は私がって思ったんだけど。」
「そうだったんだ。でも、気にすることなんてなかったのに。」

絵理ちゃんは優しいな。
この前はたまたまで次から早く来るかわからないのに。

「涼さん、今日は荷物持ちお願いね?」
「う、うん。任せてよ!」

に、荷物ってなんだろう。
うぅーすごい重たいものばかりだったらどうしようー。
絵理ちゃんに連れられて着いたのは、電気街。
さすが絵理ちゃんと言うべきか。

「涼さん、こっち。」
「ま、待ってよー。」

普段のゆったりした絵理ちゃんと違って、すっごい機敏だなー。
こういう絵理ちゃんも新鮮で可愛いなー。

「ふぅ、たくさん買っちゃった?」
「僕はついていくのがやっとだよー。」
「次は、あっち。」
「絵理ちゃん、待ってよー。」

と、次はどんなPCパーツ屋さん。
と思ったらカラオケ?

「少し、歌っていかない?」
「うん、いいね。」

カラオケかー。
普段レッスンで歌うのとは違ってなんか新鮮な気分だなー。
いい機会だし、普段聞く好きな曲とか歌おう。

「涼さん、さすが?」
「そんなことないよ。次は絵理ちゃんの番だね。」
「歌うの初めてだから自信ない?」



Endless Time 意識から迷いから
目を覚ませ 儚き世界
くり返す いつの日も 迷宮のリグレット



「どっかで聞いたことあるなー。絵理ちゃんこれ何の曲?」
「水瓶座時代っていうゲームの歌。」
「あぁ、たまにCMでやってたね。」

結構歌ったなー。
たまには、こういうのもいいかも。

「もう、こんな時間?」
「そうだね。そろそろ暗くなるし、帰ろうか。」
「うん、荷物持ちさんよろしく?」
「任せて。」

雑談しながら帰路につく。
次のデートも楽しみだな。
いつまでも、こうやって絵理ちゃんと過ごしていきたいな。

「涼さん?」
「え?あぁごめん。聞いてなかった。」
「浮気?」
「ち、違うよー!?」
「じゃあ、何?」
「えっとね。」

うー恥ずかしいよー。
でも、言わないと絵理ちゃん納得してくれないだろうし。

「その、ずっと絵理ちゃんとこうやって過ごしたいなーってね。」

絵理ちゃんは何も言わずに僕の腕に抱きついてきた。
恥ずかしいのはお互い様のようだね。
この最高に幸せなときが本当にいつまでも続くといいな。
今日は涼さんとデート。
涼さんが一人で街を歩くって言ったからついていくことにした。
10分前到着……ちょっと早過ぎた?

「絵理ちゃん、おはよう。ずいぶん早かったね。」
「え?涼さん?」

10分前に到着したのに……涼さん早すぎ?
それだけ、楽しみだった?

「涼さんこそ、早すぎ?」
「そ、そうかな。絵理ちゃん待たせちゃ悪いなと思って早めに来たんだ。」

照れ隠しかな、頭かいて涼さんなんか可愛い。
いつから、待ってたのかな?
でも、嬉しい。楽しみにしてくれてた。

「それじゃ、行こうか。」
「うん、涼さんまずどこに行くの?」

涼さんの行きたい場所に行ってみたい。
涼さん、普段どんなところに行くんだろう。

「ペット……ショップ?」
「絵理ちゃん苦手だったりする?」
「ううん、でも自分一人なら来ない?」

涼さん、ペット好きなのかな。
私はパソコンがあるから、あまりペットを飼うって考えがなかった。

「絵理ちゃん、見てみて。この猫可愛いよ。」
「でも、寝てる?」
「そうみたいだね。でも可愛いなー。」

涼さんは猫好き?
やっぱり、犬はしつけとか大変?

「この犬も可愛いよー。」
「わんわん!」
「ひぅっ!?」

いきなり吼えられたからびっくりした。
もっと、静かなペットのほうがいい?
でも、涼さんすごく楽しそう。
動物好きなんだ。

「涼さん、ペット飼うの?」
「うーん、飼いたいなとは思うんだけど。」
「けど?」
「ほら、仕事であまり家にいれないときもあるしね。たまにこうやって見に来るんだ。」

そうなんだ、確かにレッスンと仕事で家にいないことも多い?
構ってあげなきゃペットもかわいそう。

「ごめんね絵理ちゃん。僕のわがままに付き合ってくれて。」
「そんなことない?動物可愛かった。」
「良かった。そうだ、一緒に行きたいお店があるんだ。喜んでもらえるといいんだけど。」

一緒に行きたい?どんなお店だろう。
でも、涼さんのことだからきっと素敵なお店?

「ここなんだけど。」

ちょっとお洒落なレストラン。
涼さん、色んなお店知ってるんだ。
私、あまり家でないから電気の街以外は詳しくない。

「ふふっ。」
「ど、どうかした?急に笑ったりして。」
「ううん、涼さん入ろう?」

涼さんとのデート楽しい。
世間話してお料理食べるだけ。
でも、すごい時間が経つの早い。

「今日は楽しかった。涼さんありがとう。」
「喜んでもらえてよかった。今度は絵理ちゃんが行きたいところ行こうね。」
「うん。」

とっても楽しい休日。
また、涼さんとデートするのが楽しみ。
次行くときは涼さんに荷物持ってもらおう。
今のうちによさそうなもの探してみよう。
main view「後堂翔」


この部屋最後の大扉が自動で開いた。
どうやらゲーム開始のようだ。
律子、そして千早が何も言わず部屋を後にする。

「僕たちも行こうか。」
「そうしましょう。」

真の問いかけにあずさが言葉で返事をする。
残りの4人も無言でうなずき、一斉に動き出した。

「やよい、私たちも行きましょう。」
「うん、レストルーム目指して頑張ろうね。」

それを見てやよいと伊織も動き出す。
目的は安全に休息できる場所、レストルームの発見のようだ。

「あふぅ、美希も早く探してぐっすり寝たいの。」

美希はこのゲームの趣旨を理解しているのか?
それとも勝利条件が待ってるだけで達成されるのか?
俺とは違う、何か別の条件なのか。
今残されたのは俺と小鳥さんと社長だ。

「全員無事に脱出できるといいですね。」
「ええ、そうね。」
「それじゃ我々も行こうか。」

全員無事……か。
叶わないと知りつつ何気ない気持ちで言ってしまった。
俺が無事に帰る、それは誰も生きてはいないってことだから。



大扉を通過し、直線の通路が奥までのびている。
そして一番奥に見えるはのぼり階段である。
そこまでは小鳥さんと社長と一緒に歩く。
お互い何も言わず、ただひたすらに。

階段は中ほどで一度折り返すように続いた。
比較的浅い地下のようだった。
階段をのぼりきると右、左、そして正面に通路が現れる。
地下より幾分かましな作りではあるが、相変わらずコンクリートの壁に床と天井である。

「それじゃ、これで。」

俺は迷わず左の通路に向かった。
特に意味はない。なんとなく左がいいと感じた。

「うむ、後堂君も音無君も気をつけるんだ。」

社長は、そう言って反対の右の道を進んで行ったようだ。
そして、小鳥さんは俺たちを交互に見て正面の道を寂しく進んで行った。

「しかし、7日後まで過ごすのには食事や休息は欠かせないな。」

長丁場になるのはすでにわかっている。
ならば、最初にすべきことは安全な場所を発見すること。
つまりはレストルームを探すことである。
ここに食料などがある。
最初に探しておいて損はないだろう。

しかし、このレストルームを探すのは骨の折れる作業であった。
通路には一定の間隔で扉があり、その部屋一つ一つを探索していかなければならない。
レストルーム以外にもデータルームにトラップルームがある。
部屋の構造がわからない以上一つずつ虱潰しに探していかなければならなかった。

「くそっ、思った以上に大変だな。」

最初からあまり物がない部屋ならさらっと見るだけで済む。
しかし、頻繁にダンボールや木箱などが置いてある部屋が存在する。
中身を確認することが体力を奪い、疲れがたまってきた。

「早くレストルームを見つけて、ゆっくり休みたいな。」

15ほど部屋を探し終え、時間を確認する。
開始からもう4時間ほど経過していた。
再び歩き出すと通路の先に右へ続く通路が見える。
直線にも同じように通路があり、部屋の扉も見えている。

「さて、どっちへ行くべきか。」

そんなことを考えていた矢先に突如どこかで大きな音が鳴る。
それは右に曲がる通路から響いてきたような気がする。

「な、なんの音だ。」

大きな音、何かが爆発したような音に近かった。
行くか行かないか。
迷いはしたものの、何が起きたのか知っておきたい。
その気持ちが強く、右の通路を進むことを決める。
部屋はあったが、それより何が起きたのか。

(あれだけ、大きな音がしたんだ。見ればわかるくらいの変化があるだろう。)

急ぎ足で進んでいくと十字路にぶつかり、左の通路から見知った顔が現れた。

「亜美、真美。何があったんだ。」
「あ、兄ちゃん!」
「真美たちもわからないの。」
「真たちはどうしたんだ?」

一緒に行動しているはずの4人が見えない。
何故二人で行動しているのか。

「僕たちはいますよ。」

通路から残りの4人も顔を出した。
どうやら無事だったらしい。

「プロデューサーこそ、何故ここに?」
「こっちのほうで大きな音がしたんだが何か知らないか?」
「私たちもそれを調べに戻ってきたんです。」

どうやら真たちも音を聞いたらしい。
つまり、このあたりで何か起きたのは間違いなさそうだな。

「キャー!」

悲鳴が聞こえる。
この声は……律子か?

「行くぞ!」
「あ、兄ちゃん待ってよ!」

俺は急ぎで声の聞こえたほうへ向かう。
その後を追うように真たちもついてくる。
そして、ついに何かが起きた場所を見つける。
いや、正確にはその部屋の前で崩れ落ち何かを見つめる律子を見つけた。

「律子!どうした!」

律子の返事はない。
放心状態のようだ。
自分の目で確認するしかないか。

「律子、一体何g」

俺は律子が見つめる方向を見て言葉を失った。
おそらく部屋だったのだろう。
黒くこげた壁、扉は吹き飛び床に転がっている。
それでもなお通路側の壁は損傷が激しく崩れている。


そして、ところどころ見える赤黒い血の跡。
何かの血の跡が見えたのだ。
もうすでに、惨劇のゲームが始まっていた……



続く