main view「後堂翔」
この部屋最後の大扉が自動で開いた。
どうやらゲーム開始のようだ。
律子、そして千早が何も言わず部屋を後にする。
「僕たちも行こうか。」
「そうしましょう。」
真の問いかけにあずさが言葉で返事をする。
残りの4人も無言でうなずき、一斉に動き出した。
「やよい、私たちも行きましょう。」
「うん、レストルーム目指して頑張ろうね。」
それを見てやよいと伊織も動き出す。
目的は安全に休息できる場所、レストルームの発見のようだ。
「あふぅ、美希も早く探してぐっすり寝たいの。」
美希はこのゲームの趣旨を理解しているのか?
それとも勝利条件が待ってるだけで達成されるのか?
俺とは違う、何か別の条件なのか。
今残されたのは俺と小鳥さんと社長だ。
「全員無事に脱出できるといいですね。」
「ええ、そうね。」
「それじゃ我々も行こうか。」
全員無事……か。
叶わないと知りつつ何気ない気持ちで言ってしまった。
俺が無事に帰る、それは誰も生きてはいないってことだから。
大扉を通過し、直線の通路が奥までのびている。
そして一番奥に見えるはのぼり階段である。
そこまでは小鳥さんと社長と一緒に歩く。
お互い何も言わず、ただひたすらに。
階段は中ほどで一度折り返すように続いた。
比較的浅い地下のようだった。
階段をのぼりきると右、左、そして正面に通路が現れる。
地下より幾分かましな作りではあるが、相変わらずコンクリートの壁に床と天井である。
「それじゃ、これで。」
俺は迷わず左の通路に向かった。
特に意味はない。なんとなく左がいいと感じた。
「うむ、後堂君も音無君も気をつけるんだ。」
社長は、そう言って反対の右の道を進んで行ったようだ。
そして、小鳥さんは俺たちを交互に見て正面の道を寂しく進んで行った。
「しかし、7日後まで過ごすのには食事や休息は欠かせないな。」
長丁場になるのはすでにわかっている。
ならば、最初にすべきことは安全な場所を発見すること。
つまりはレストルームを探すことである。
ここに食料などがある。
最初に探しておいて損はないだろう。
しかし、このレストルームを探すのは骨の折れる作業であった。
通路には一定の間隔で扉があり、その部屋一つ一つを探索していかなければならない。
レストルーム以外にもデータルームにトラップルームがある。
部屋の構造がわからない以上一つずつ虱潰しに探していかなければならなかった。
「くそっ、思った以上に大変だな。」
最初からあまり物がない部屋ならさらっと見るだけで済む。
しかし、頻繁にダンボールや木箱などが置いてある部屋が存在する。
中身を確認することが体力を奪い、疲れがたまってきた。
「早くレストルームを見つけて、ゆっくり休みたいな。」
15ほど部屋を探し終え、時間を確認する。
開始からもう4時間ほど経過していた。
再び歩き出すと通路の先に右へ続く通路が見える。
直線にも同じように通路があり、部屋の扉も見えている。
「さて、どっちへ行くべきか。」
そんなことを考えていた矢先に突如どこかで大きな音が鳴る。
それは右に曲がる通路から響いてきたような気がする。
「な、なんの音だ。」
大きな音、何かが爆発したような音に近かった。
行くか行かないか。
迷いはしたものの、何が起きたのか知っておきたい。
その気持ちが強く、右の通路を進むことを決める。
部屋はあったが、それより何が起きたのか。
(あれだけ、大きな音がしたんだ。見ればわかるくらいの変化があるだろう。)
急ぎ足で進んでいくと十字路にぶつかり、左の通路から見知った顔が現れた。
「亜美、真美。何があったんだ。」
「あ、兄ちゃん!」
「真美たちもわからないの。」
「真たちはどうしたんだ?」
一緒に行動しているはずの4人が見えない。
何故二人で行動しているのか。
「僕たちはいますよ。」
通路から残りの4人も顔を出した。
どうやら無事だったらしい。
「プロデューサーこそ、何故ここに?」
「こっちのほうで大きな音がしたんだが何か知らないか?」
「私たちもそれを調べに戻ってきたんです。」
どうやら真たちも音を聞いたらしい。
つまり、このあたりで何か起きたのは間違いなさそうだな。
「キャー!」
悲鳴が聞こえる。
この声は……律子か?
「行くぞ!」
「あ、兄ちゃん待ってよ!」
俺は急ぎで声の聞こえたほうへ向かう。
その後を追うように真たちもついてくる。
そして、ついに何かが起きた場所を見つける。
いや、正確にはその部屋の前で崩れ落ち何かを見つめる律子を見つけた。
「律子!どうした!」
律子の返事はない。
放心状態のようだ。
自分の目で確認するしかないか。
「律子、一体何g」
俺は律子が見つめる方向を見て言葉を失った。
おそらく部屋だったのだろう。
黒くこげた壁、扉は吹き飛び床に転がっている。
それでもなお通路側の壁は損傷が激しく崩れている。
そして、ところどころ見える赤黒い血の跡。
何かの血の跡が見えたのだ。
もうすでに、惨劇のゲームが始まっていた……
続く
この部屋最後の大扉が自動で開いた。
どうやらゲーム開始のようだ。
律子、そして千早が何も言わず部屋を後にする。
「僕たちも行こうか。」
「そうしましょう。」
真の問いかけにあずさが言葉で返事をする。
残りの4人も無言でうなずき、一斉に動き出した。
「やよい、私たちも行きましょう。」
「うん、レストルーム目指して頑張ろうね。」
それを見てやよいと伊織も動き出す。
目的は安全に休息できる場所、レストルームの発見のようだ。
「あふぅ、美希も早く探してぐっすり寝たいの。」
美希はこのゲームの趣旨を理解しているのか?
それとも勝利条件が待ってるだけで達成されるのか?
俺とは違う、何か別の条件なのか。
今残されたのは俺と小鳥さんと社長だ。
「全員無事に脱出できるといいですね。」
「ええ、そうね。」
「それじゃ我々も行こうか。」
全員無事……か。
叶わないと知りつつ何気ない気持ちで言ってしまった。
俺が無事に帰る、それは誰も生きてはいないってことだから。
大扉を通過し、直線の通路が奥までのびている。
そして一番奥に見えるはのぼり階段である。
そこまでは小鳥さんと社長と一緒に歩く。
お互い何も言わず、ただひたすらに。
階段は中ほどで一度折り返すように続いた。
比較的浅い地下のようだった。
階段をのぼりきると右、左、そして正面に通路が現れる。
地下より幾分かましな作りではあるが、相変わらずコンクリートの壁に床と天井である。
「それじゃ、これで。」
俺は迷わず左の通路に向かった。
特に意味はない。なんとなく左がいいと感じた。
「うむ、後堂君も音無君も気をつけるんだ。」
社長は、そう言って反対の右の道を進んで行ったようだ。
そして、小鳥さんは俺たちを交互に見て正面の道を寂しく進んで行った。
「しかし、7日後まで過ごすのには食事や休息は欠かせないな。」
長丁場になるのはすでにわかっている。
ならば、最初にすべきことは安全な場所を発見すること。
つまりはレストルームを探すことである。
ここに食料などがある。
最初に探しておいて損はないだろう。
しかし、このレストルームを探すのは骨の折れる作業であった。
通路には一定の間隔で扉があり、その部屋一つ一つを探索していかなければならない。
レストルーム以外にもデータルームにトラップルームがある。
部屋の構造がわからない以上一つずつ虱潰しに探していかなければならなかった。
「くそっ、思った以上に大変だな。」
最初からあまり物がない部屋ならさらっと見るだけで済む。
しかし、頻繁にダンボールや木箱などが置いてある部屋が存在する。
中身を確認することが体力を奪い、疲れがたまってきた。
「早くレストルームを見つけて、ゆっくり休みたいな。」
15ほど部屋を探し終え、時間を確認する。
開始からもう4時間ほど経過していた。
再び歩き出すと通路の先に右へ続く通路が見える。
直線にも同じように通路があり、部屋の扉も見えている。
「さて、どっちへ行くべきか。」
そんなことを考えていた矢先に突如どこかで大きな音が鳴る。
それは右に曲がる通路から響いてきたような気がする。
「な、なんの音だ。」
大きな音、何かが爆発したような音に近かった。
行くか行かないか。
迷いはしたものの、何が起きたのか知っておきたい。
その気持ちが強く、右の通路を進むことを決める。
部屋はあったが、それより何が起きたのか。
(あれだけ、大きな音がしたんだ。見ればわかるくらいの変化があるだろう。)
急ぎ足で進んでいくと十字路にぶつかり、左の通路から見知った顔が現れた。
「亜美、真美。何があったんだ。」
「あ、兄ちゃん!」
「真美たちもわからないの。」
「真たちはどうしたんだ?」
一緒に行動しているはずの4人が見えない。
何故二人で行動しているのか。
「僕たちはいますよ。」
通路から残りの4人も顔を出した。
どうやら無事だったらしい。
「プロデューサーこそ、何故ここに?」
「こっちのほうで大きな音がしたんだが何か知らないか?」
「私たちもそれを調べに戻ってきたんです。」
どうやら真たちも音を聞いたらしい。
つまり、このあたりで何か起きたのは間違いなさそうだな。
「キャー!」
悲鳴が聞こえる。
この声は……律子か?
「行くぞ!」
「あ、兄ちゃん待ってよ!」
俺は急ぎで声の聞こえたほうへ向かう。
その後を追うように真たちもついてくる。
そして、ついに何かが起きた場所を見つける。
いや、正確にはその部屋の前で崩れ落ち何かを見つめる律子を見つけた。
「律子!どうした!」
律子の返事はない。
放心状態のようだ。
自分の目で確認するしかないか。
「律子、一体何g」
俺は律子が見つめる方向を見て言葉を失った。
おそらく部屋だったのだろう。
黒くこげた壁、扉は吹き飛び床に転がっている。
それでもなお通路側の壁は損傷が激しく崩れている。
そして、ところどころ見える赤黒い血の跡。
何かの血の跡が見えたのだ。
もうすでに、惨劇のゲームが始まっていた……
続く