第一華
第二華
第三華
第四華




精一杯の想いを伝えた。
もっとちゃんとしたのを考えていたはずなのに、今出てきた言葉は違った。

「秋月涼、その想いはとても嬉しく思います。」
「貴音さん……」
「ですが……今の私ではあなたの想いに答えることは出来ません。」

そ、そうだよね。まだ会って過ごした時間も短いのに……
急すぎだったかな。でも、後悔はない。

「ありがとうございます。貴音さん。」
「また、食事には誘ってもらって構いません。一人で食べるより、誰かと食べる食事のほうが美味です。」
「はい、おいしいお店を見つけたらまた連絡しますね。」
「期待していますよ。秋月涼。」

諦めはつかないけど、諦められないならまた挑戦すればいいよね。
時間が経てば思いは変わるかもしれない。もっと僕が貴音さんに相応しい男になっているかもしれない。

「きゅ、急に呼び止めてすいませんでした。」
「確かに驚きはしました。こんな私でも好いてくれる人がいるという事実に嬉しさを感じました。」
「貴音さん?」
「しかし、私たちはまだアイドルという身。お互いの大事な時期となるこの時を駄目にしてしまうかもしれません。」

そうだよね。もし、付き合い始めたとしても周りにしれたら僕も貴音さんも……
うん、やっぱり早すぎたんだ。これが若さなのかな。

「ですから、時間が経てばお互い成長するでしょう。その時に私に好意を抱いているのであれば……」
「もう一度、貴音さんのところに想いを伝えにいきましょう。」
「ふふっ、その気持ちいつまで続くか楽しみにしてましょう。」

諦める必要はないんだ。
僕自身が自身を貫いて生きていけばいいんだ。
よーし!気合入ったぞ!

「それでは、私はこの辺で。次会うときはステージかはたまた新たならぁめんを食べるときか。」
「どちらであっても楽しみにしてますね。」
「私も期待していますよ。」

僕は貴音さんが見えなくなるまでその後姿を目で追っていた。
追いつかなくちゃ、まずはあそこに。
追い越さなくちゃ、より輝くために。




「ふぅ、愛ちゃん絵理ちゃんお疲れ様。」
「今日の涼さんすっごい気合入ってますね!」
「涼さん、何かあった?」
「うん、でも内緒♪」

これは僕と貴音さんだけの秘密。
いつの日か、同じ舞台に立つんだ。
その時を信じて今は頑張るしかない。

「えー!?涼さん教えてくださいよー!」
「いくら愛ちゃんのお願いでもだーめ。」
「ぶー!涼さんのけちんぼ!」
「ははっ、いつか話せるときが来たら教えてあげてもいいよ。」
「涼さん約束ですよ!」

いつになるかわからないけどね。
来るといいな。その時が……


これは未熟な僕が抱いた、高嶺の華への想い。
憧れの人がいつの日か想いに変わっていた、淡く切ない思い出。



~Fin~
第一華
第二華
第三華




ちょっと早く着いちゃったかな。
でも、貴音さんのことだからなんとなく早く来てくれる気がするんだよね。
今日は前にラーメンを一緒に食べると約束した当日。
貴音さんを待たせちゃいけないと思って1時間前に待ち合わせ場所に到着。

「今のうちに心を落ち着けておかないと……」

ラーメンを食べる楽しみもある。
あれだけおいしいラーメンをもう一度食べれるという幸福感。
それだけじゃなくて、それを貴音さんと一緒に食べれるんだ。
そう思うだけ僕の鼓動は早くなる。

「早く着いたのはいいけど、落ち着くどころか余計緊張してきちゃったよ。」

片思いなのはわかってる。でも今日は止まらない想いを伝えようと覚悟もしてきた。
その覚悟が仇となったのか、高鳴る鼓動は早さを増すばかり。

「秋月涼、待ち合わせの時間には少し早すぎるのではありませんか。」
「それは貴音さんも同じじゃないですか。」

声が聞こえてきたほうを振り返る僕の鼓動が一瞬止まったかのように思えた。
そこにいたのはやっぱり貴音さんで、思っていたとおり早く来てくれた。
それも30分も早く。

「なんとなく、貴音さんラーメンを食べに行くってことで早く来るんじゃないかなと思って。」
「ふふっ、おいしいらぁめんと聞けば誰しも心躍るものです。」
「貴音さんらしいですね。」

満面の笑顔に僕も思わず頬が緩んでしまう。
自分の好きなものを食べにいけるとわかっている日なら僕も心躍る……かな。
まだ食べてもいないのにこんなにうきうきしている貴音さん、可愛いな。
普段はすごくミステリアスな雰囲気で綺麗な印象だったけど、今日はその印象とは違う貴音さんに見える。

「秋月涼、道案内よろしく頼みますよ。」
「任せてください。それでは行きましょうか。」

貴音さんのラーメンに対する熱い思いを聞きながら、目的地へと向かって歩く。
ラーメンの話をしているときの貴音さんすごく生き生きしていてとても魅力的だ。
僕はそんな貴音さんに惹かれているんだなって思える。

「ここが、目的地のらぁめん屋ですか。」
「はい、早速並びましょうか。」
「なんと、外にメニューがあるのですね。」
「並んでる間に注文を取りに来るので何を食べるか決めておいてくださいね。」

貴音さんは真剣にメニューを見つめている。
僕は前来た時に迷って選ばなかったほうを食べる。

「私も決まりました。」
「楽しみですね。」
「えぇ、この待つ時間さえもらぁめんを食べる楽しみの一つになるのです。」

本当にラーメンを食べるのが楽しみなんだな。
こんなに喜んでもらえれば僕も嬉しいな。

「なんと、このようならぁめんを見るのは初めてです。」
「さあ、熱々のうちに食べましょう。」
「そうですね。いただきます。」

僕が半分食べた頃に貴音さんはすでに替え玉2つ目を注文しているなんて……
でも、それだけ気に入ったってことだよね。




「秋月涼、本日はこのような素晴らしいらぁめんとの出会いをありがとうございます。」
「僕も貴音さんに喜んでもらえただけで嬉しいです。」
「新たならぁめんとの出会い、まさに至高と言えるでしょう。」

本当に気に入ってもらえてよかった。
あちこち食べ探した甲斐があったよ。

「それでは、本日はこの辺で。」
「あ、貴音さん。」
「なんでしょう。」

ど、どうしよう。ま、まだ心の準備できてないのに呼び止めちゃった……
でも、これがチャンスかもしれない。
お、男ならここでいかずにいついくんだ。



「貴音さん、僕……」
「秋月涼?どうしたのですか。」
「貴音さんのことが好きです。これからも一緒に色んなお店を僕と一緒に食べに行きませんか?」




~最終華~へ続く
第一華
第二華



このお店もおいしいな。味噌ラーメンのお店だけど、この味なら味噌が苦手な人でも食べれそうだ。
でも、貴音さんは豚骨ラーメンが好きだから豚骨ラーメンがおいしいお店を見つけておきたいな。
あれから、貴音さんと行くためのラーメンのお店を探して歩いている。

「うーん、どのお店もおいしいけど貴音さんがすごく喜んでくれそうなお店が見つからないな。」

たぶん貴音さんならどのお店に連れて行っても喜んでくれるとは思う。
でも、僕としてはそうじゃなくて貴音さんが何度も足を運んでくれそうなお店を見つけたい。
今日は九州ラーメンのお店を探してるんだけど、確かこの辺だったような。

「あ、あったあった。うわぁ結構並んでるなー。」

それくらいおいしい店なんだろうな。よし、並ぼう。
並んでる間は今まで食べてきたお店の情報を整理しよう。
こう見るともう10店舗も食べてるんだ。
貴音さんへの想い、募るばかりだな。

「お客さん注文決まってますか。」
「はい、ぼんしゃんの全部乗せで。」
「ぼんしゃん全部乗せね。」

事前に調べておいたんだ。こってりとクリーミーなとんこつ味って書いてあった。
これなら貴音さんも喜んでくれるはず。

「はい、ぼんしゃん全部乗せになります。」

写真では見たけど、実物はすごい迫力だ。
そして、何よりラーメンの上に乗っている具も綺麗に配置されていて食欲をそそる。

「いただきます。」

まずはスープから一口。
濃厚なのにしつこくなく、口の中で広がっていくこの感じ。

「すごくおいしい。」

次は麺を。
細めの真っ直ぐな麺なのに、スープとよく絡み合って絶妙なハーモニー。
これなら、貴音さんもすごく喜んでくれる。
というより、僕自身がこのお店の大ファンになってしまった。
柔らかいチャーシュー、味がよく染みた味卵、明太子がいいアクセントになっていてキクラゲもこりこりしていて最高。
そして何より角肉がとてもおいしい。

「すいません、替え玉お願いします。」
「はいよー!」

あまりのおいしさに替え玉を注文してしまう。
今度貴音さんと来るときは別のものを食べてみよう。

「ご馳走様でした。」

行列の出来る理由がわかる。それほどまでにおいしい。
そして、行列が出来ているのにそんなに長い時間待ったという気もしない。

「あんなにおいしいラーメンは初めてかもしれない。」

他の店が決しておいしくないわけではないのに。
何かわからないあの店だけの味に魅了されてしまったよ。
貴音さんに胸を張ってオススメできる店を見つけたぞ!



To:貴音さん
Title:今度のオフでラーメン食べに行きませんか。
本文
おいしいラーメンのお店を見つけたので、この前のお礼を兼ねてご一緒にいかがですか。
お返事待っています。



これでいいかな。いい返事もらえるといいな。
まだ、一緒に行けるって決まったわけじゃないけどどきどきしてきた。
早く返事来ないかな。
あ、返ってきた。


From:貴音さん
Title:Re:今度のオフでラーメン食べに行きませんか。
本文
なんと、それは真興味があります。
是非行きましょう。

>おいしいラーメンのお店を見つけたので、この前のお礼を兼ねてご一緒にいかがですか。
>お返事待っています。



やった、OKもらえた。
よ、よし!ちゃんと貴音さんをエスコートするぞ!



第四華 ~へ続く



※本編に書いてあるお店は実在します。興味ある方は↓のリンクよりHPをご確認ください。
九州じゃんがら