第一華
第二華
第三華




ちょっと早く着いちゃったかな。
でも、貴音さんのことだからなんとなく早く来てくれる気がするんだよね。
今日は前にラーメンを一緒に食べると約束した当日。
貴音さんを待たせちゃいけないと思って1時間前に待ち合わせ場所に到着。

「今のうちに心を落ち着けておかないと……」

ラーメンを食べる楽しみもある。
あれだけおいしいラーメンをもう一度食べれるという幸福感。
それだけじゃなくて、それを貴音さんと一緒に食べれるんだ。
そう思うだけ僕の鼓動は早くなる。

「早く着いたのはいいけど、落ち着くどころか余計緊張してきちゃったよ。」

片思いなのはわかってる。でも今日は止まらない想いを伝えようと覚悟もしてきた。
その覚悟が仇となったのか、高鳴る鼓動は早さを増すばかり。

「秋月涼、待ち合わせの時間には少し早すぎるのではありませんか。」
「それは貴音さんも同じじゃないですか。」

声が聞こえてきたほうを振り返る僕の鼓動が一瞬止まったかのように思えた。
そこにいたのはやっぱり貴音さんで、思っていたとおり早く来てくれた。
それも30分も早く。

「なんとなく、貴音さんラーメンを食べに行くってことで早く来るんじゃないかなと思って。」
「ふふっ、おいしいらぁめんと聞けば誰しも心躍るものです。」
「貴音さんらしいですね。」

満面の笑顔に僕も思わず頬が緩んでしまう。
自分の好きなものを食べにいけるとわかっている日なら僕も心躍る……かな。
まだ食べてもいないのにこんなにうきうきしている貴音さん、可愛いな。
普段はすごくミステリアスな雰囲気で綺麗な印象だったけど、今日はその印象とは違う貴音さんに見える。

「秋月涼、道案内よろしく頼みますよ。」
「任せてください。それでは行きましょうか。」

貴音さんのラーメンに対する熱い思いを聞きながら、目的地へと向かって歩く。
ラーメンの話をしているときの貴音さんすごく生き生きしていてとても魅力的だ。
僕はそんな貴音さんに惹かれているんだなって思える。

「ここが、目的地のらぁめん屋ですか。」
「はい、早速並びましょうか。」
「なんと、外にメニューがあるのですね。」
「並んでる間に注文を取りに来るので何を食べるか決めておいてくださいね。」

貴音さんは真剣にメニューを見つめている。
僕は前来た時に迷って選ばなかったほうを食べる。

「私も決まりました。」
「楽しみですね。」
「えぇ、この待つ時間さえもらぁめんを食べる楽しみの一つになるのです。」

本当にラーメンを食べるのが楽しみなんだな。
こんなに喜んでもらえれば僕も嬉しいな。

「なんと、このようならぁめんを見るのは初めてです。」
「さあ、熱々のうちに食べましょう。」
「そうですね。いただきます。」

僕が半分食べた頃に貴音さんはすでに替え玉2つ目を注文しているなんて……
でも、それだけ気に入ったってことだよね。




「秋月涼、本日はこのような素晴らしいらぁめんとの出会いをありがとうございます。」
「僕も貴音さんに喜んでもらえただけで嬉しいです。」
「新たならぁめんとの出会い、まさに至高と言えるでしょう。」

本当に気に入ってもらえてよかった。
あちこち食べ探した甲斐があったよ。

「それでは、本日はこの辺で。」
「あ、貴音さん。」
「なんでしょう。」

ど、どうしよう。ま、まだ心の準備できてないのに呼び止めちゃった……
でも、これがチャンスかもしれない。
お、男ならここでいかずにいついくんだ。



「貴音さん、僕……」
「秋月涼?どうしたのですか。」
「貴音さんのことが好きです。これからも一緒に色んなお店を僕と一緒に食べに行きませんか?」




~最終華~へ続く