うーん、プロデューサーの誕生日が近いな。
プレゼント用意しようと思うんだけど、何がいいんだろう。
そうだ、こういうときは。

ぷるるるるる……
がちゃっ

「もしもし?」
「あ、涼ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

やっぱりこういうときは男の子に聞くのに限るよね。

「僕にわかることだったら何でも聞いてください。」
「実は、プロデューサーの誕生日が近いんだけど。」
「もしかしてプレゼントに迷ってるとかですか?」
「さすが涼だね。男の人って何プレゼントすればいいかな?」

こういうとき男の知り合いいてよかったと思えるな。
うん、持つべきものは友達だね。

「色々あげましたけど、参考になりましたか?」
「うん、ありがとう涼。それじゃ、早速買いに行ってくるよ。」
「喜んでもらえるといいですね。」
「そうだね。それじゃまたね。」



ネクタイとか時計みたいな使えるもので一つ思い出したんだ。
プロデューサー安くてもいいから懐中時計欲しいって言ってたのを。
でも、懐中時計ってどこに売ってるんだろうか。

「真じゃない、こんなところでどうしたの?」
「あ、伊織。実はね……」

もう見つかっちゃたら隠しておけないよね。
僕は洗いざらい伊織に説明した。

「確かパパの知り合いに時計屋の人がいたはずね。」
「ほんと!?それって、どの辺にあるかな?」
「せっかくだから案内するわ。」

案内してもらえるってことで車に乗せてもらったんだけど。
こんなすごい車乗ってるだけで緊張しちゃうよー。

「いらっしゃい。おや、伊織ちゃんどうしたんだい?」
「友達が時計を探してるって言うから連れてきたの。」

うわー時計がたくさんある。

「そうかい。それでどんな時計を探してるのかな。」
「すいません、懐中時計ってありますか?」
「懐中時計ね。こっちだよ。」

案内されたところに色んなデザインの懐中時計があった。
シンプルなやつから、ちょっとおしゃれなデザインのものまで様々だ。
その中でシンプルだけどすごく惹かれた懐中時計があった。

「これにします!」
「これね。今出すからちょっと待っててね。」

気に入ってもらえるかはわからないけど、直感でこれって思った。

「お待たせ。もし、壊れたりしたらうちに持ってきたら修理もするからね。」
「ありがとうございます。伊織もありがとね。」
「どういたしまして。」(まあ、御代はあんたたちのラブラブっぷりで勘弁してあげるわ。)

よーし、後は自分でラッピングだ。
ピンクにしようと思ったけど、少し落ち着いたブルーのラッピング用紙にしよう。
やっぱり男の人にプレゼントだしね。
喜んでくれるかな……



「え!?明日仕事なんですか!」
「真すまない。ただ今日は休みだからそれで勘弁してくれ。」

朝急にプロデューサーから電話が来たと思ったら、誕生日仕事になっただなんて。

「じゃあ、今日たっぷり楽しみましょうね。」
「ほんとすまない。」
「いいんですよ。プロデューサーのせいじゃないんですから。」

あーでも、服とか何も用意してないよー!
とにかく、急がなきゃ!
服は仕方ないとしてプレゼントばっちり用意、いつもより少しだけおしゃれもした。
よし、出発!


「プロデューサー。」
「……お、おう。」
「へ、変ですか?」
「そんなことない、似合ってるよ。普段見ないから見惚れてただけさ。」

見惚れてただなんて恥ずかしいな。

「あ、プロデューサー。」
「どうした?」
「ちょっと早いですけど、お誕生日おめでとうございます。」

バックの中からプレゼントを取り出して手渡す。
喜んでもらえるかな……

「プレゼントか!ここであけるのもあれだし、喫茶店でも行こうか。」
「はい。」

プロデューサーが予想外の驚きしてたけど、そんなに驚かなくてもいいじゃないか。
僕ってそんなに女の子っぽく見られてないのかな……

「いらっしゃいませ。」

近くにあった喫茶店に入る。

「真は何飲む?」
「カフェオレにします。」

二人の飲みものを注文して、早速プロデューサーが綺麗にラッピングを開け始める。
なんか、こっちまでどきどきしちゃうな。

「こ、これ……懐中時計じゃないか。」
「はい、前にプロデューサーが欲しいって。」
「ありがとう!ずっと大事に使うよ!」

すごい喜んでる。
よかったー、気に入ってもらえて。



その日一日は僕もプロデューサーも笑顔いっぱいでとても楽しい一日になった。
プロデューサー、僕の誕生日期待してもいいですよね?
「プロデューサー、エリマキトカゲって見たことあるか?」
「俺は見たことないな。それがどうかしたのか?」
「自分も見たことないから見てみたいんだぞ。」



という響の願いで、いるかはわからないが動物園に来てみた。
一時期ブームになったとは聞いたことがあるが、果てしているのだろうか。
そうこう考えると響の目が輝き始める。

「プロデューサー!ライオンがいるぞ!」
「動物園だからな。ライオンがいない動物園はほとんどないと思うぞって響!」

あっちには象が、キリンが、とあちこち走り回っていってしまった。
多少すいてるとはいえ、この広い動物園ではぐれるとまずいな。

「響!落ち着けって。」
「ごめんだぞ。あんまりにも動物が多いからはしゃぎ過ぎたぞ。」

ぜぇぜぇ、響の体力はどこから出てくるんだ。
あれだけ走り回って息一つ切らしていないだと。

「プロデューサー、エリマキトカゲはどこにいるんだ?」
「そうだな、いるとしたら爬虫類の集まってそうなところだろうから……」

入園時にもらった地図を広げる。
んーと、今ここにいるから……

「響、こっちだ。」
「楽しみだぞ。」

目的地までにも色んな動物がいて、そのたびに響が立ち止まる。
何とか爬虫類館に到着。

「さて、いるかな。」

とりあえず、順番に見ていく。
見たことない爬虫類がこんなにもいるのか。
そう思うと世の中すごいなと思ってしまう。

「んー、エリマキトカゲいないのかな。」
「そうみたいだぞ。」

全部見終わったが残念ながらいないみたいだ。
いきなりすぎたから調べることもできなかったしな。

「仕方ないけど、帰るか。」
「いっぱい動物見れたからそれで満足できたぞ。」

満面の笑みを浮かべる響。
こうやって喜んでもらえるならまた誘ってやるか。



後にエリマキトカゲについて調べると、飼育に向かなかったりオーストラリアの保護などで見かけなくなったようだ。
これは響に言わないでおこう。言ったらこう返ってくるに決まってる。
プロデューサー!オーストラリアに行きたいぞ!ってな。
世間では温暖化どうのこうの言っているはずなんだが……
そんなことは微塵も感じさせない寒さ。
気温もそうだが特に風が冷たいんだよな。

「おはようございます。」

ふーやっぱり事務所は暖かいな。
ん?小鳥さんがいないのに事務所が暖かい?

「あ、プロデューサー。おはようございます。」
「真か、今日はオフなのにどうしたんだ?」
「外で走りこんでたんですけど、寒かったんで少し温まりに来ました。」

流石の真でも寒さには勝てないってことか。
真で無理なら俺はもっと無理だよな。

「プロデューサーとか骨ですから、僕より寒そうですね。」
「うん、はっきり言われるとそれはそれで心に刺さるな。」
「!?」
「どうした真。」

俺の後ろを見て真が固まった。
後ろに何が……

「いいですね!プロデューサーさんは細くて!」
「こ、小鳥さんいたんですか。」
「今来たところです!」
「小鳥さんだって十分細いじゃないですか。スタイル抜群ですよ。」

そうは言ってみたものの小鳥さんの機嫌は直りそうになかった。
うむ、乙女心というのは難しいな……

「小鳥さん、ちょっとコンビニ行ってきます。何か食べますか?」
「肉まんで許してあげます。」
「……真は何かいるか?」
「僕も一緒に行きます。」

というわけで、真と一緒に行くことになったんだが。
アイドルと事務所から出てきてコンビニってなんかまずくないか?
こっちの気なんか知らずに真はすごい上機嫌な笑顔だな。

「いらっしゃいませー。」

とりあえず飲み物と。
まず自分のミルクプロテインを手に取った。

「真は何飲む?」
「僕はアクエリで。」

スポーツする人はスポーツ飲料を飲むってのは本当なのか?
たまたまってわけではなさそうだが、永遠に謎のままになりそうだ。

「真も肉まんでいいか?」
「はい。」

レジで肉まん3つ頼む。
やっぱり寒くなる季節は肉まんだよな。
会計を済ませ袋片手に真と事務所に戻る。

「小鳥さん、買ってきましたよ。」
「ありがとうございます。」

これで少しは機嫌が直ったならいいか。
さて、俺も肉まん食べるか。

「あれ?真?」
「真ちゃんなら会議室のほうに行きましたけど。」

なんで、会議室?不思議に思ったが、真の分が袋に入っているので会議室に向かう。

「遅いですよプロデューサー。」
「遅いといわれてもだなー。」
「早く食べましょうよ。」

まあ、せっかくホカホカの肉まんが冷めきっちゃうともったいないしな。

「ほれ、真の肉まんとアクエリだ。」
「ありがとうございます。」

二人とも飲み物を机に置いて肉まんを二つに割る。
すると、真が割った肉まん半分をさらに半分にして俺の口元に持ってくる。

「プロデューサー、あーんしてください。」
「な、なんだ急に。」
「ほら、早くしないと小鳥さんに感づかれちゃいますよ。」

仕方ないから口をあける。
真が肉まんを俺の口に入れたところで……

「ちょ、ちょっとプロデューサー!?」
「うん、肉まんはおいしいな。」
「僕の指ごと食べないでくださいよー。」

だったら最初からやらなきゃよかったのに。

「ほら、真も口あけて。」
「え?ぼ、僕もですか。」
「当たり前だろ。あーん。」

しぶしぶ口をあけた真に肉まんを食べさせる。
仕返しといわんばかりに俺の指が噛まれる。

「真、せめて噛むのはなしにしないか?」
「いきなり僕の指ごと食べたプロデューサーが悪いんですよ。」

なんとも平和なやりとりだな。
恥ずかしさもあって体が暑くなってきたな。




(二人だけホカホカどころか熱々じゃない。私の相手はいつ見つかるの……。)

実は最初から見ていた小鳥の心の叫びであった。