明日への轍 -12ページ目

明日への轍

齢五十を過ぎて、ある日大腸がんが見つかる。
手術から回復したと思った一年後、肝臓と肺へがんが転移。
更に続くがんとの付き合いを記録します。

今日は、大腸の内視鏡検査の日だった。検査は昨年の2月に受けて以来だ。

毎度であるが、下剤(ニフレック)を朝から飲まなければならない。これがつらい。

最初の2~3回は良いが、その内匂いが我慢できなくなって吐き気を催してくる。

もうこれで確か四度目だと思うが、飲めるコツを少しは判ってきた。

ニフレックは常温だとのみにくい。冷蔵庫で前日から冷やしておけば、よりgood

それに匂いで飲めなくなるので、鼻を抓むか息をしないで200mlを一気に飲む。

口の中に下剤が残ってしまうので、少量の水を時々飲んでみる。

まあ、こんなところかな。

 

検査は予定時間を一時間半も待たされた。担当は女医さんだった。

今回も横になってモニターを見ながら検査を受けた。

時間にして30分位だった。最初に大腸の奥までカメラを入れる。

一番奥まで行くとお腹が張ってくる。

それから徐々にカメラを抜きながら撮影していく。

モニターを見ながら異様な部分がないかしっかり見たが、きれいなピンク色の大腸が見えただけだった。

途中で大腸の手術をした部分を教えられた。

言われれば成程と思う程度であったが、綺麗に吻合されている事をありがたいと思った。

担当の医師からも、「特に問題ないと思います」と終了を告げられた。

正直ホッとした。

 

一年ぶりの大腸の内視鏡検査であったが、再発もなく無事であったようだ。

来週から入院しての抗がん剤治療が始まる。 どんな副作用が出るのか不安だが、仕方がない。

抗がん剤で癌が消えてなくなるようなことは期待できないらしい。良くて現状維持か、少しは小さくなる程度か。

それでも、効果を期待したいものだ。

 

 

 

5日に大腸外科のN医師の診察があった。

抗がん剤の治療に移行するかどうかの意思を聞かれた。

これだけ説明された後であり、勿論同意した。

 

正直言えば、放射線治療についても聞いてみたかった。

癌に対する治療法としては手術と化学療法以外の選択として放射線治療があると聞いている。

欧米では放射線治療は主要な治療法として広く広まっているが、日本ではそれを扱う医師の数が少ないと言う記事も読んだことがある。

それに日本では外科手術が主流であるため、どうも放射線治療は副次的な地位にあるような気がする。もちろん、日本の外科手術は世界でも有数であるとも聞いているし、それはそれでありがたいことではある。でも、手術以外の選択も含めた癌治療全般が進歩して色んな人がそれぞれに合った治療を受けられるのが望ましい姿なのではないかと思えるのだが・・。

T

T大学病院には放射線科もあるようだが、やはり大学病院では手術がメインであるという気がする。

K医師かN医師に以前放射線治療について聞いたことがある。

漠然とした質問だったと思うが、その時の答えとしては、否定はしないものの明確な治療効果がまだ得られていないと言うような説明で、やんわりと流されたように思う。

外科の医師に他の課の治療に対する意見を聞いても無駄な事だと思った。

 

病院内にはセカンドオピニオンを受けつける部署もあるが、有料で60分四万円超との事。

現在の主治医の了解を得て資料を貰い、それから他の医者の意見を聞く。なかなか敷居が高そうな気もする。

 

さて、抗がん剤治療であるが、T大学病院ではなく両国のY医院(Y医師)を紹介された。

土曜日の午前も診察してくれると言うので、7日に行ってみた。

 

二次救急指定病院に指定されてる中規模の病院でベット数は一般56床、他に障碍者施設と地域包括ケア病床を含めて140床の病院だ。

Y医師は禿げ頭の中年の医師であったが、話をよく聞いてくれて抗がん剤の説明についても丁寧だった。T大学病院からの紹介は多いらしく、協力関係にある病院なのだろう。

それにしても、N医師の紹介状にあるY医師の名前も違っていた。

読み方は似ているが、字が全然違う。N医師がY医師と親しい事で紹介したわけではないようだ。

 

大腸がんの治療に使う抗がん剤は次の四つ。

  (一般的名称)         (製薬会社のブランド名)

1 ベバシズマブ           アバスチン 

2 オキサリプラチン         エルプラット 

3 レボホリナートカルシウム    

4 フルオロウラシル         5-FU

 

治療は二泊三日でこれらの点滴治療を行って二週間の休養。

再度、これを繰り返すらしい。

 

当初は週末の休暇日(土日)を絡めてと考えたが、それだと自宅で休養する日時が少なくなる。どうせ病気休暇をとれるのだからと平日をその入院に充ててゆっくり治療しよう。

 

昨年12月21日にPET検査を受けた。

肺への転移がCT検査で疑われたことから、再度他への転移も確認しようという事らしい。

他への転移があれば、肺だけの手術だけで終わらないことになり、治療方針も根本から変わってくる。

PET検査の費用は総額で10万ほど。勿論3割負担であるから三万程ではあるが、安い金額ではない。まあ、そんなことを言ってられる訳でもないけ・・・。

 

正直言って不安だった。

半年程での肺への再発がある訳だから、血液を通じた癌細胞の転移が他の臓器にも広がっている可能性はある。検査の結果、全身の色んな所に転移が確認されるような事を夢に見ないわけでもない。結果は正月明けの4日だった。 

 

四日、K医師の診察があった。

結果は、肺だけにPETの反応があった。それ以外の臓器には明らかな反応はなかった。

ホッとした。 癌がなくなったわけでもないのに其れだけで嬉しかった。

 

K医師からは、次のように説明された。

現段階では肺がターゲットであると判ったので、これを手術することは可能ではあります。

でも、これだけが転移した癌の全ててあると言えるわけではありません。

もう少し時間をおいて、状況を見るほうが賢明だと思います。

只、その時間をただ待つのではなく化学的治療(抗がん剤)を並行して行っていく方がより効果的です。

化学的治療の過程で癌が小さくなる又はなくなる場合も考えられます。

仮になくならなくても、効果があればその後の手術も有利に働くことになりますから、是非科学的治療をお勧めします。との事だった。

仮に手術をすると言っても、前回のように胸腔鏡で楽に削除するようなわけにはいかないらしい。今回は一個は下葉の真ん中位であり部分切除はできない。もう一か所は上葉の端の方なので部分切除可能であるとの事。

二度目の肺の手術では癒着も起こっているので、やはり開胸となるらしい。

傷も大きくなるし、痛みもあるだろう。

それは一時的なもので仕方がないが、それをしても再々発の可能性が小さくないと判断できる現段階では無駄になる可能性も残っている。 慎重にならざるを得ない。肺は肝臓のように再生しないから。

12月2日に大腸外科のN医師の診察

12月8日に呼吸器外科のK医師の診察

12月16日に大腸外科のN医師に診察があった。

 

すぐにでも1月の手術の予定を組んでくれるものと思っていたが、想定は違った。

呼吸器外科の医師も大腸外科の医師も同じような意見であった。

前回のように肺の癌削除は勿論可能であるが、前回の手術から半年余りで再発したことを考慮すると別の臓器も含めて転移の可能性が高いのではないかと言うものである。

それを検査するために21日にPET検査を行う予定である。

全身を検査して癌の発生を検査するものである。

それにより他の転移の可能性があれば、やはり治療方針も変わってくる。

 

N医師によれば、いずれにしても抗がん剤治療は実施したほうが良いというもの。

仮に手術をして削除しても、その後の転移予防のためには抗がん剤は必要だし、抗がん剤治療をして仮に癌がちいさくなっても、完全に消えることは無く、やはり手術は必要だろうと言う事である。

色々な選択肢があるし、どれが最適と言う判断も難しい。答えがあるようでないようなものだ。

N医師は、その中でもこの選択はだめだという判断はできる。それ以外の選択肢の中で最善だと思われるものを一緒に考えましょうと言う事だ。

今までの治療例の中で結果が良かった例を聞いてみたが、それも千差万別であるらしい。

 

自分が冷静になって考えてみたが、癌の根治を目指すとしたら、やはり部分的な切除よりも抗がん剤による癌治療を先にするのが良いのかもしれない。

そして、他に転移や転移の可能性が少ないと判断できたら、手術で切除してもらうようにしよう。

化学治療(抗がん剤)は著しく進歩していると医師も言っていたし、それに期待したいものだ。

今日は、肝臓のH医師の久しぶりの診察であった。

同時に半年ぶりのCT検査もあったのだが、残念な結果が出た。

 

肝臓に関しては異常はなく、癌マーカーも異常なしと出たのであるが、CTで同時に撮影された画像から肺への転移が疑われるとH医師から告げられた。

一緒にCT画像を見たが、確かに左肺に以前に切除したものと同様の丸く白い腫瘍と思われるものが確認できた。また、同じ左肺の別の場所にも丸くは移っていないがやはり白い影が確認できた。

H医師はどうもこの二つが気になりますねと説明した。

自分は肝臓の専門であり肺の判断は担当の医師に任せたいとの事であった。

 

今日は、朝から何となく嫌な感じがしていた。カミさんにも朝そんな事を言っていた。

また腫瘍が見つかったら、それも仕方ないねと・・・。

虫の知らせだったのかも知れない。それが現実の事となってしまった。 

残念ではあるが。

 

まあ嬉しいことではないが、或る程度は予想した居たことでもあり、それほどショックと言う事でもなかったなと自分では思っている。むしろやっぱりかと言う感じかもしれない。

 

今週の金曜日には大腸のN医師の診断も予定されており、その際に今後の方針を考えてもらうことになりそうだ。

それに呼吸器外科の担当医師の診察も受けねばならないだろうし、検査も諸々だろう。

今からそれを考えると入院・手術は一月になってからと言うのが自分の予測である。

 

前回は肺の部分切除であったが、今回の腫瘍は左肺の真ん中ぐらいにありそう。

6月の手術と同じ左肺であり、今回は部分切除ではなくて左肺葉切除になるかと想像している。復活しない肺だから大事にしたいところではあるが、再発の可能性があるのであればそういう選択になるのかもと素人ながら考えている。

 

肺への転移が二度目だと考えると、この転移の連鎖は止まるのだろうかと心配になってしまう。今後も転移を心配しながら生きていくことになるのであろう。

結構辛いものだ。