午前9時に回診があった。担当のN医師とN教授の二名だった。
「順調ですね。これなら今日、肺のドレーンを抜きましょう」との事だった。
看護師からも「ドレーンからの廃液が薄くなっていますから良いですね」と言われた。
夜の間に廃液は多少増えたが量は少なかったのかもしれない。
今現在は、肺のドレーン、尿道カテーテル、そして硬膜外麻酔のカテーテルが入っている。
硬膜外カテーテルは麻酔薬が無くなり次第抜くことになるだろう。
肺のドレーンは廃液の状況を見て医師が判断するようだが、これが今日抜いてもらえるようだ。
それが抜ければ、最後は尿道カテーテルの番だ。
どれも体に付けられて自由を束縛する厭なものであるが、最後の尿道カテーテルが自分としては一番嫌だ。
これがあると排便にも力が入らない。
一見、排便には影響ないように思えるが、実際にこれをしてみるとわかるが、本当に力が入らないものだ。
そして何より一番の急所を握られているようで敗北感が一杯なのだ。
10時半ごろにN医師と数名で来てくれた。肺のドレーン抜去である。
肝臓の時は痛みもなくスルスルと抜けたので、そんなものかと思っていたら、違っていた。
深呼吸して吐いた時に一気にドレーンを抜いたようであるが、その後も抜いた傷口を縛り付けるような痛みがあった。
後で看護師に聞いたら、肺のドレーンを留置した段階で挿入部分に抜いた後の処置のための紐のような物を付けていて、
今回のように抜去した時にそれを縛って止血するようだ。成程、合理的な話ではある。
但し、自分では大腸や肝臓の時と同様に簡単に抜くだけと思っていたから痛みは想定していなかった。
1分程度の事であったが、痛さも直ぐに治まった。
同時に背中の硬膜外カテーテルも抜いてくれた。これは単に絆創膏を剥がすような感じで終了した。
そして十分後ぐらいに看護師が尿道カテーテルを抜いてくれた。
相変わらず抜くときの感覚は厭なものだ。でも、これでスッキリした。解放感で一杯だ。