手術終了直後 | 明日への轍

明日への轍

齢五十を過ぎて、ある日大腸がんが見つかる。
手術から回復したと思った一年後、肝臓と肺へがんが転移。
更に続くがんとの付き合いを記録します。

夢を見ていた気がする。何の夢だったのか。今では思い出せない。

名前を呼ばれて気がついた。
「手術終わりましたよ。お疲れ様でした。」と看護師に言われた。
だが、自分は眠っていただけで、お疲れ様は職員の皆さんだけれど。

何とか口が聞けた。
出た言葉は一言:「今何時ですか」
「4時。午後4時位ですよ」「予定通り終わりましたからね」

そう言われて、
「予定通りか。良かった。」
「でも4時ってことは予定より長く掛かったって事かな。」
「想定外の処理があったって事かな。」
漠然とした不安を感じた。

その後、寒い廊下を通って元の病室B棟へとストレッチャーで運ばれた。
だが、寒くて震えが止まらない。そんな状況が暫く続いた。
布団をかけて貰っても同じだった。
後で聞けば、手術直後はこうした震えが来るらしい。麻酔の影響とか。
初めての体験だった。


直後の自分はと言えば、お腹がズッシリ重い感じはするが全然痛くなかった。
相当強い麻酔が効いているのだろう。
その時は、割と元気だった。
母親と姉貴とカミサンへメールを送った。家族Lineも送った。
「まだお腹痛いけど、元気だよ。」
無事に終わったと言われた安堵感と、緊張から解き放たれた高揚感がそうさせたのかもしれない。


自分で想像していた予定終了時刻は午後1時頃だった。
姉貴にもそう伝えていた。
大体五時間位と聞いたはずだったが、自分の想定よりも四時間も余計に掛かった事になる。
こんなときは悪い方にしか考えないものである。
寝ながら想像する。
もしかしたら人口肛門を作ったか、それか他への転移があって時間が掛かったかの等々。

熱があり一時間で毎に目が覚めるような眠りだった。
いつまでたっても朝が来ない。

左手でお腹に触れてみると何かの装置と管があった。これが何か判らない。
肛門にも違和感があった。痛みはないが何かの処置がされているように思われた。