皆んなテレビの前に釘付け、山荘に警察が鉄球をぶつけている。
赤軍派が立て篭り人質をとっている。
世の中が騒然としている時、俺はブラジル移民に向かった。
「特に大きな目標もなく、家にいるのが嫌だった」
「ラグビー強豪校で全国大会まで出て、大学も決まっていた」
「なのに親父が警察に捕まり、全てが終わった」
地獄の様な練習の毎日「全てが無駄な青春」
「俺だって赤軍派の様に暴れたい、俺の青春を返せ」
船に乗る時間が来た。荷物を持ちぞろぞろと乗船。
研修所での仲間が来ていた「頑張れよ」
「何が頑張れよだ」自分達は移民を挫折して行かないくせに。
ドラが出発の合図を鳴らす、遠くに親兄弟の顔が見える。
「頑張れよ 頑張れよ」親兄弟が叫んでいる。
「好きでブラジルに行くじゃない、大学に行って青春したかった」
親父の顔が憎らしく見えた「さよなら 当分会う事もない さよなら」
「船って中々出ない」ゆっくりと横浜港を移民船が出る。
「これからどうなるかな、俺の人生」
ガンガンガン! あの時のガラ音は今でも頭にある。