草津温泉に集まる訳ありの人達 毎日 誰かの話で酒が進む ドラマみたいな日々 | 「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

冬の始まりの草津、朝と夜は可成り寒い。

 

この街に来て数ヶ月過ぎた「温泉はいいけど 狭い街だ」

 

働いているホテルには、色々な人達が流れ着く。

 

訳ありの人種は過去を話さない「昔話は聞いても嘘が殆ど」

 

東京からの派遣で来た俺は、期間限定の仕事で気楽だが「朝が早いのがきつい」

 

夜は仕事上がり早いので、温泉と酒の毎晩「その時の話が嘘と本当のてんこ盛り」

 

ある日、少し仲良くなった板前と昼飯時の事、見かけない若い中居が一人で食事してる。

 

板前の彼が「いい女だな なんか影あり気になる」「声かけてみたら」「え〜 ちょっとな」

 

「夜の酒飲みでも誘ったら」「行ってみますか」彼はそっとそばに近づいて行った。

 

「ダメ 全然話しならないよ、無視だよ」「ぶっきら棒に声かけたからじゃないの」

 

「じゃ行ってみてよ」「まっ その内ね」俺はそこまで興味が無いので、話の相槌程度。

 

何日だったか、通路で彼女とすれ違った時「お疲れ様」と言って来た「あっ お疲れ」と返した。

 

「どう仕事慣れた」「少しは慣れたけど 未だ疲れる」「その内慣れるよ 気楽にね」

 

「ありがとうございます」俺は背を向けて歩き始めた「もう仕事は上がりですか」

 

「そうだけど」「お茶しません」「えっ 俺と」「東京から来ているでしょ 私も同じ」

 

「どうして解るの」「言葉使いで解りますよ」湯畑のそばの店で待ち合わせる事になった。

 

板前の彼には黙って合う事にした「何か話したいのかな」

 

先に彼女が来ていた「中居の姿とは違い、若い女子って感じ」「ごめん 待った」

 

「うん〜ん 全然 寒いね」「そうだね 暖かい物食べようか」「お茶じゃなくてもいい」

 

「もちろんよ それと熱燗もね」結構気さくな感じでいい。

 

酒も進み、何となく過去話「東京でOLしていたの、失恋して流れて来た」

 

「何で俺に声かけたの」「食堂での話しが楽しいそうだから」「東京の人の方が話やすいので」

 

「中居さんの中にもいるでしょ」「ここの女は曲者だらけ だから怖い」

 

話も合うので時間が過ぎるのが早い「明日も朝が早いので帰ろ」「そうね帰ろうか 楽しかった」

 

「ねえ 又付き合ってもらってもいい」「いいけど 変に噂されても大丈夫」

 

「ここに真ともな人もいないから大丈夫、ねえ いつまで草津にいるの」「雪が降る前まで位かな」

 

「それまで よろしくお願いしてもいい」「何がよろしく?」「それは又次の時ね」

 

そんな感じで話し友達の様な時間が動き始めた。

 

草津で季節の変わり目を、彼女とドラマみたいな時間で迎える事になるとは。