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9月9日（金曜）
眠れないまま朝を迎えました。
朝日が差し込みます。
朝です。朝になったんです。
旦那は…目を覚ましたのでしょうか。
眠い…けど、眠れない。
眠るでもなく、起きるでもなく、布団の中でボー…っとしばらく過ごしました。
14時過ぎ頃、私の両親とあおちゃんがうちに来ました。
あおちゃんは昨夜そのまま実家にお泊まりしたので、うちで着替えなど済ませました。
そして、病院へ行くため車で出発しました。
少し出るのが早いですが、いてもたってもいられない…といった感じです。
昨夜よりだいぶ落ち着きを取り戻しています。
きっと今頃、目を覚ましているだろう。
きっと、大丈夫…！
車の中で祈り続けました。
私はというと…
昨夜から熱を測り続けましたが、微熱が下がらず。
今朝は37.5度ほど。
完全なる、心労。
やばい。
熱あると、面会させてもらえないんだよぉ。
家にあった風邪薬、栄養ドリンクを飲み。
車の中でも冷たいお茶を飲み、水分補給をたくさんしました。
だ、大丈夫。
ピッておでこに向かって検温するやつって、大体低く表示されない？
ドキドキしながらも、病院へ到着。
病院の入り口センサーは、平熱で表示されセーフ！
お次は面会受付です…。
「ICUのご面会ですね、こちらに記入をお願いいたします」
「はい」
患者の名前、自分の名前を記入します。
「検温しますね、首元失礼します…」
受付のお姉さんが機械を持ち、私の首元へピッとしました。
「ん…？」
お姉さんは表示を見て困ったように言いました。
「37.8度…」
オーマイガァーッ！！！
受付のお姉さんもどうにかしてくれようと
おでこや手首など、場所を変えて何回か検温し直しますが
37.5度…
37.3度…
と、37度を超えてしまいます。
「外暑くて、走ってきたので…」
苦しい言い訳をします。
「数分後、また測り直しますので、お待ちください」
ひぃーっ！まじでやばいぞ！！
これで今日旦那に会えないとか、そんなのって無いよぉぉ
半泣きになりながら持っていたメモ用紙をうちわにして、必死に自分を扇ぎます。
父が自販機でペットボトルのお茶を買ってきてくれたので、飲んだり、首やおでこに当てて体をクールダウンさせます。
「もう一回測りますね」
数分後、受付のお姉さんが再度検温してくれます。
しかし、37.1度…。
ノォォォオーーーッ！！！！
「次、これで測ってみてもらえますか？」
お姉さんが手渡してきたのは、脇で測るタイプの体温計でした。
椅子に座り、脇に挟みじっと待ちます。
（この時少し脇を浮かせてました、本当に許して…）
すると36.8度！！！
「よかった！この体温計の方が正確なので」
お姉さんも安堵した様子で、面会バッジを渡してくれました。
昨夜も受付にいた方なので、今日が初面会という事情もわかっていたのかもしれません。
優しい受付のお姉さんでよかった…。
「お、大丈夫だった？もしダメだったら俺が行こうと思っていたのに」
父が横から言いました。
いやいや、旦那も、目が覚めて目の前に自分の奥さんの父がいても微妙でしょ！w
そもそも、面会する人物は私で固定されて変更不可だし。
とにかく、面会中止になる事態にならなくてよかった！
ドタバタな検温騒ぎで、一気に疲れました。
面会時間は16時です。
その時を今か今かと、待ちました。
そして、ついに…。
面会時間5分前になりました。
「じゃあ、行ってくる…」
ドキドキと鼓動をおさえ、私1人エレベーターへ乗り込みます。
昨夜過ごしたラウンジへたどり着き、名前を呼ばれるのを待ちます。
「◯◯◯◯様。こちらへどうぞ」
名前が呼ばれ、看護師さんのもとへ行きました。
手洗い、除菌をすませ、ICUの扉が開かれます。
おねがい…おねがい…、おねがいっっ！
目を、覚ましていて…！！
「昨日とは場所が変わりまして、こちらになります」
看護師さんが案内してくれ、カーテンが開きました。
そこにいた、旦那は…。
眠っていました。
その様子を見て、一瞬心臓がドクンッと跳ねました。
「◯◯さん、奥様いらっしゃいましたよ」
看護師さんが声をかけると
「…ん？」
その瞬間、
旦那がゆっくり目を開けました。
「ぉお〜、りぃ」
旦那が、私の名前をよびました！！
うわぁぁああーーーんっっ！！！
私の叫びが、心の中で爆発します。
旦那の側にいき、手に触れました。
「大丈夫？私のこと、わかる？」
旦那の手は、じんわりと暖かかったです。
頬も、腕も、胸も足も、すべて…あたたかい。
「うん、わかるよ」
優しく、旦那が言います。
「よかったぁぁ…っ」
旦那に抱きつく私。
息も、鼓動も、肌を伝わって感じて来ました。
今まで溜め込んでいた、我慢していた涙が一気に溢れ出しました。
抱きつく私に旦那は、私の頭をポンポンと優しく撫でました。
「いや〜、びっくりだよ…」
背もたれが少し上がったベッドで寝ていて、体を起こそうと旦那が動きます。
昨日は人工呼吸器をつけていましたが、今日は鼻についている酸素チューブのようなものになっていました。
「だ、大丈夫なの？どこも痛くない？？」
モゾモゾと体勢を変えようと旦那が動きます。
そうです。
体が動いてるんです！
「手…動くの？足…も…」
私の問いかけに
「ん？うん」
なんでそんなこと聞くの？といった感じで
手をグーパーにしたり、膝を立てて動かしてくれました。
「ぅわぁ〜…よかったぁ…」
ヘナヘナ…と脱力してベッドに寄りかかる私。
「いや〜、どうしてこうなったんだろう？」
両手を頭のうしろに組み、天井を眺める旦那。
「大変だったんだよ！？きのう会社で倒れて、救急車で運ばれて、手術して…」
「えっ！そうなの？」
私の言葉に驚いていました。
「ちがうよ、なんか俺、頭痛くて自分で車で□□病院に向かったんだよー」
「ううん、会社で倒れたんだよ…。それで、心臓の手術をしたの」
「ぇえーっ」
どうやら、手術前後の記憶がないらしい。
救急搬送された病院でも、ここの病院でもない別の病院の名前を口にしていました。
その時、旦那の点滴を取り替えにきた看護師さんに
「あの、いつ頃意識が戻ったんですか？」
聞いてみると
「今日の午前中には、目が覚めていましたよ」
とのこと！
「ここは、□□病院？」
と、私にきく旦那に
「ちがうよ、△△病院だよ」
と言うと
「ぇえーっ」
再度おどろいていました。
「え、でも俺、家でカレー食べてたよね？」
「それは倒れる前の日の水曜の夕飯でしょ？倒れたのは木曜で、今日は金曜だよ」
「ぇえーっ」
手術直後というのもあるのでしょう。
記憶がすっぽり抜けている旦那に、私は何度も説明しました。
旦那の患者着からチラリと見える胸元に
縦に大きな傷がありました。
傷テープで隠れてはいますが、大きな長い傷があります。
心臓の手術、開胸手術をした傷跡が、大変な手術だったという事を物語っています。
心臓の手術をするわけだから、あばら骨を切る…んでしたっけ？
恐ろしい…。
「痛い…よね？ここ、大丈夫？」
胸元を心配そうに見つめる私に
「なんだこれ？」
自分の胸を見て、傷跡を触る旦那。
他にも、腕や体中についている点滴や管を「なんでこれついてるの？」という表情で触ったりしています。
「点滴、取っちゃだめだよ？傷も、あまり触らない方が…」
こちらが心配になるくらい、ガシガシ触る旦那。
「心臓の手術をしたんだもん、大変だったよね…」
「ぇえーっ、手術？そうなの？」
先ほど話したこともすぐに忘れて、話すたびに驚く旦那。
「意識障害」
大動脈解離の症状として手術説明書に書いてあったのを思い出しました。
でも、今はそんなことよりも
目を覚ましてくれて…
体も動き…
言葉も話せて…
私の目を見て笑ってくれて…
よかった。
本当によかった…。
もう、胸がいっぱいすぎて。
普段は手を繋いだりしない私たち夫婦ですが。
この時は旦那の温もりをずっと感じていたいと思い
あたたかい手をずっと握って過ごしました。
あたたかい。
あたたかいって、幸せだ。
本当に、ありがとう…。
次に続きます。
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