昔からの知り合いのAさんとBさんを、夫と一緒に訪問した。
二人は遠い親戚で、ともに90歳であり、今は一人暮らしであり、かつては教員をしていたという共通点がある。
Aさんは、教育関係の今は亡き夫と海外生活の経験もあり、お子さん二人は東京の名門大学を出てそれぞれ結婚したが、二人とも離婚した。
娘は東京で大学教員をして、息子は遠いところで誘われて仕事をしている。
Aさんは永い教員生活の後は、田舎に戻って今は杖をつきながらもしっかりと暮らしている。
Bさんは、娘の養育のために教員を退職し、同じく教員の夫を支えて見送った。
二人の娘たちも公務員で、教育関係の仕事を定年までしていた。
問題は、独身の長女が脳梗塞で倒れたことである。
口もきけず、体も思うように動かない長女に、ケアマネは施設を進めたが、Bさんは長女の希望を聞いて自宅介護を始めた。
(これは、Bさんが一人になりたくなかったこともあると思っている)
長女は伝い歩きまでできるようになったが、相変わらず言葉は話せない。
近くに嫁いだ次女に、Bさんは毎日の買い物や入浴介助を求めた。
次女は、定年後にも仕事をしていたが、Bさんは次女に退職して欲しがった。
ある日、Bさんに支えきれなかった長女が、転倒して骨折入院した。
わがままな長女は病院食を受け付けず、次女が食事を届けることでようやく手術を受けた。
ケアマネは、今度こそ施設と言うが、Bさんは次女と一緒に自宅で長女を看たがっている。
やはり、次女の退職を前提としたプランである。
Aさんは、即座に次女の仕事を辞めさせるのはとんでもないと言い切った。
一人暮らしの覚悟のあるAさんと、ずっと専業主婦のBさんの違いはどこから来たのか。
ずっと田舎から出たことのないBさんの、経験値かと思っている。