私は昔から、生の舞台観賞が結構好きだった。
バレー、演劇、木下サーカス、シルクドソレイユ、劇団四季、宝塚歌劇団、オペラ、フィギュアスケート、コンサート等、色々楽しんだ。
私自身も小学生の頃から、美空ひばりのような歌手に、世界に羽ばたくスチュワーデスに、学芸会の主役のような女優に、といろいろ夢を見ていた。
いづれも「東京さに出て」こそ、夢はかなうものと思っていた。
しかし、田舎者の限界や自身の素質のなさを知るにつけ、現実的な線に落ち着いていった。
しかし、観賞の楽しみは忘れられなかった。
出張の折、東京で観たり、地方巡業として地元で催される舞台もあった。
片田舎の地元での興行は、大抵手を抜かれた。
例えば、宝塚では男女の主役のどちらかは代役であった。
随分昔の事であるが、地元に来たあまりメジャーでない劇団の舞台を見に行った。
数人の女優さんが鏡に向かって、いきなり上半身を脱いだのにビックリした。
意図はすぐに理解できた。
チケットを売るためには、人の目を引く何かが必要だったのだ。
女優さんが昂然と背筋を伸ばしながら、しかし心の中では歯を食いしばって胸をあらわにしているのが私には分かった気がした。
夢への一歩として覚悟を決めた(今のように、裸に寛容ではなかったので)が、彼女らの内何人が夢をかなえたのだろうか。
当時の私は、臆病でそんな代償など払う勇気はなかった。
だから、都会での華やかな夢はかなえられなくても仕方ないなと納得したものでした。