クマ取り(脱脂・裏ハムラ・表ハムラ法の施術)で「失敗する人が急増中」。
「脂肪を取ったのにクマが残った」「目の下がえぐれた」「前より老けた気がする」——こんな声が美容医療の相談窓口に溢れています。手術が失敗したのではなく、そもそも診断が間違っていたケースが大半です。
「クマは取れた、でも老けた」悲劇が増えている
目の下のクマ取りは、ダウンタイムが短く、気軽に受けられるイメージが広まったことで、10〜30代の若い層まで受診者が急増していますが、その裏で増えているのが術後の失敗相談です。形成外科・美容外科の修正専門クリニックには、「前の医院で脱脂を受けたが悪化した」という患者が後を絶ちません。
⚠ よくある失敗パターン
・ 脂肪を取ったのに影クマ・くぼみが残った・悪化した
・ 目の下がえぐれて骸骨のような印象になった
・ ゴルゴラインが脱脂前よりくっきり目立つようになった
・ 小ジワが増え、疲れた顔・老け顔になった
・ 顔が面長になり頬骨が出て見えるようになった
クマは「目の下が黒くなっている現象」を指しますが、その原因は複数あり、重なって起きていることがほとんどです。下眼瞼(目の下)の構造を整理すると、関与する解剖学的要素は少なくとも6つあります。
| 要因 | クマへの関与 | 脱脂単独で改善できるか |
|---|---|---|
| 眼窩脂肪のふくらみ | 目の下の膨らみ・影 | ○ できる |
| ティアトラフのへこみ | 涙袋直下の影(青クマ・茶クマ) | ✕ 悪化することあり |
| ゴルゴライン | 頬との段差による影 | ✕ 悪化することあり |
| メーラーファットの下垂 | 中顔面のボリューム低下 | ✕ 改善不可 |
| 皮膚のたるみ・余剰 | 小ジワ・影の増加 | ✕ 改善不可 |
| 眼輪筋のゆるみ | 目の下全体のたるみ感 | ✕ 改善不可 |
この表を見ればわかる通り、脱脂(脂肪を取り除くだけの手術)で改善できるのは「眼窩脂肪のふくらみ」のみです。その他の要因が強い人に脱脂を行うと、ふくらみだけが解消されてへこみが強調され、段差がかえって目立つという逆効果を生みます。
「脂肪を取るだけ」の時代は学術的にも終わっている
📄 学術的背景 / Hamra法の提唱
1992年、形成外科医のHamraは眼窩脂肪を単純に切除する従来の下眼瞼形成術を批判し、arcus marginalis releaseと眼窩脂肪の再配置(Composite Facelift)という概念を提唱しました。「余剰脂肪を捨てるのではなく、陥凹した領域へ移動させてボリュームを補填する」という考え方です。
その後、Louritat-Jacobらをはじめ複数の研究グループがティアトラフ変形(tear trough deformity)のメカニズムを解剖学的に詳述。眼窩脂肪の突出だけでなく、眼窩-頬靭帯(orbitomalar ligament)の弛緩、中顔面脂肪の萎縮・下垂、骨格の後退が複合することでクマが形成されると整理されました。
つまり、学術的な立場では「脂肪を取れば治る」という説明はすでに不十分とみなされています。
脱脂・裏ハムラ・表ハムラ。3つの術式の違いを本気で整理する
① 下眼瞼脱脂(経結膜脱脂)
下まぶたの裏側(結膜側)から眼窩脂肪を切除する手術です。表面に傷がつかず、ダウンタイムも比較的短いため「プチ整形」感覚で受けられます。しかし脂肪を「捨てる」だけなのでへこみへの対処ができません。
⚠ 脱脂だけが向かないケース
・ ティアトラフのへこみが目立つ人(くぼみが悪化する)
・ ゴルゴラインがある人(段差が強調される)
・ もともと頬が痩せている人(中顔面の貧相さが出やすい)
・ 面長・頬骨が張っている人(顔が長く見えやすい)
② 裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)
同じく結膜側からアプローチしますが、脂肪を「捨てる」のではなくティアトラフやゴルゴラインのへこんだ部分へ移動・固定します。ふくらみとへこみを同時に解消できる、現在の下眼瞼形成の標準的な考え方に近い術式です。
✅ 裏ハムラが向いている人
・ ティアトラフ(涙袋の下のへこみ)が目立つ
・ 眼窩脂肪のふくらみとへこみが両方ある
・ ゴルゴラインが気になるが皮膚のたるみは少ない
・ 比較的若く、皮膚の弾力が残っている
・ 傷を表面に残したくない
皮膚を切開しないため余った皮膚を取り除くことはできません。皮膚のたるみが強い人には不十分になることがあります。また、脂肪をどの層に固定するか、どこまで剥離するかで術後の差が大きく出るため、術者の技量と解剖知識が直接仕上がりに反映されます。
③ 表ハムラ法(経皮的下眼瞼形成術)
まつ毛の直下を切開してアプローチします。脂肪移動だけでなく、余剰皮膚の切除・眼輪筋のリドレープも同時に行えるため、「下眼瞼の若返り手術」に最も近い術式です。
✅ 表ハムラが向いている人
・ 目の下の皮膚が明らかに余っている
・ 小ジワが多く、皮膚のたるみが目立つ
・ 眼輪筋のゆるみがある(目が細くなってきた等)
・ 40代以降でたるみ由来のクマが強い
・ 切開の傷・ダウンタイムを受け入れられる
| 術式 | 主な目的 | 向いている人 | できないこと・注意点 |
|---|---|---|---|
| 脱脂のみ | 眼窩脂肪を減らす | 脂肪のふくらみが主原因の人 | へこみがある人は悪化リスクあり |
| 裏ハムラ | 脂肪移動で段差をならす | 皮膚の余りが少なく、へこみ+ふくらみがある人 | 皮膚のたるみは取れない |
| 表ハムラ | 脂肪移動+皮膚・筋肉処理 | たるみ・小ジワ・皮膚余剰が強い人 | 切開の傷・ダウンタイムあり |
| 脂肪注入(併用) | 中顔面のボリューム補填 | 頬が痩せている人・ゴルゴラインが強い人 | 吸収・不均一のリスクあり |
怖いのは「過剰脱脂」。取りすぎた脂肪は戻らない
クマ取りにおいて絶対に避けなければならない失敗が、眼窩脂肪の取りすぎ(過剰脱脂)です。眼窩脂肪は目の下のボリュームを支える構造的な役割を持っています。過剰に切除すると、骨に近い部分が透けて見えたり、目の下がえぐれてくぼんだりします。さらに深刻なのは、一度取りすぎた脂肪は元に戻すことができないという事実です。
🔴 過剰脱脂のリスクが特に高い顔のタイプ
・ もともと頬が薄い・痩せ型の顔立ち
・ ゴルゴラインがある(中顔面がすでに下垂気味)
・ 面長・頬骨が張っているタイプ
・ 眼窩脂肪の量が少ない(ふくらみが小さい)
修正方法としては脂肪注入やヒアルロン酸によるボリューム補填がありますが、自然な仕上がりに戻すことは難しく、修正自体がリスクを伴います。
カウンセリングで「地雷医師」を見抜く7つのチェックポイント
| 確認項目 | 信頼できる医師の説明 | 危ない医師の説明 |
|---|---|---|
| 眼窩脂肪の診断 | 内側・中央・外側の3コンパートメントに分けて説明する | 「脂肪が多いですね」のみで終わる |
| ティアトラフ | ティアトラフのへこみの有無・程度を明示する | 「脱脂すれば消えます」だけ |
| ゴルゴライン | 脱脂で悪化するリスクを先に説明する | 触れない・「関係ない」とする |
| 皮膚たるみの評価 | 皮膚切除の必要性を判断・説明する | 「若返りますよ」だけ |
| 中顔面の評価 | メーラーファットや頬の下垂も確認する | 目の下しか見ない |
| 術式の比較提示 | 脱脂・裏ハムラ・表ハムラ・脂肪注入を比較して説明 | 全員に同じメニューを勧める |
| リスク・失敗の説明 | くぼみ・左右差・ゴルゴ悪化・外反まで具体的に説明 | 「簡単です・ほぼリスクなし」のみ |
「脱脂だけで大丈夫ですよ」の即決カウンセリングは一番危ない
特に警戒すべきなのが、5〜10分のカウンセリングで「あなたは脱脂でOKです。すぐ予約できます」と言い切るパターンです。クマの原因診断には眼窩脂肪のコンパートメント評価、ティアトラフの深さ・範囲の評価、ゴルゴラインの有無、皮膚たるみの程度、中顔面のボリュームなど複数の判断が必要です。これが数分でできるわけがありません。
🔴 こんな選び方は危険
・ 「症例写真が綺麗だから」だけで決める
・ 「料金が一番安かった」で選ぶ
・ 「ダウンタイムが短いと書いてあった」で選ぶ
・ 「SNSで有名だから大丈夫」と思い込む
・ カウンセリングが短くて「流れるように予約になった」
眼窩脂肪の突出、ティアトラフの陥凹、ゴルゴラインの靭帯性変化、メーラーファットの下垂、皮膚の余剰、眼輪筋のゆるみ。これらをすべて評価して初めて、適切な術式が決まります。なんでも脂肪を取る医師ではなく、顔全体を設計できる医師を選んでください。

