【顔の脂肪吸引の闇】カリカリ・ペラペラにしますは危険信号。二重請求・深追い吸引・麻酔体制…地雷クリニックの見抜き方
SNSを開けば、術後の劇的なビフォーアフターがいくらでも流れてきますがその裏側で、不透明な料金設定、危険な深さまでの吸引、そして死亡事故 という、あまり語られない現実があります。
顔の脂肪周りの治療選択肢
「顔の脂肪を取る」と一口に言っても、悩みの部位によって選ぶべき治療は異なります。
気になる部位
主な治療の選択肢
主なリスク
頬の上のほう
メーラーファット除去
取りすぎによる頬のこけ、老けた印象、凹凸
マリオネットライン付近
ジョールファット除去(頬の脂肪吸引に含まれることが多い)
口角を動かす神経の損傷、口元の凹み
首元・顎下
顎下の脂肪吸引、ネックリフト、広頚筋の処理
皮膚のたるみ、神経損傷、首の変形
頬の深い部分
バッカルファット除去
将来のこけ・老け見え、顔の神経や唾液の管の損傷
特にバッカルファットは、スチュージン(Stuzin)らが1990年に『Plastic and Reconstructive Surgery』誌でその解剖と臨床応用をまとめていて、若いうちに取りすぎると、年齢とともに頬がこけて老けて見える という懸念もあり、慎重な適応判断が求められます。一度取った脂肪は元に戻せない です。
脂肪吸引で実際に起きている事故
2023年、大阪市の美容クリニック(ハー〇ビューティ)で頬の脂肪吸引を受けた当時48歳の男性が、翌日に福岡県内の自宅で死亡しました。死因は、出血によって気道が詰まったことによる窒息です。
執刀医は、術後出血による窒息のおそれを予見できたのに適切な措置を指示しなかったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検されました。脂肪吸引は、医師の技術と病院の体制によって、結果どころか安全性まで大きく変わる手術 です。
闇① 「ジョールファット除去」の二重請求
最近よく見かけるのが、「頬の脂肪吸引」と「ジョールファット除去」を別メニューとして両方請求する 料金体系です。
解剖学的には、口元の横のジョール(いわゆるブルドッグラインの膨らみ)は独立した脂肪の区画として知られています。
2007年に『Plastic and Reconstructive Surgery』誌で報告した顔の脂肪区画の研究以降、顔の脂肪は複数の区画に分かれて存在することが広く知られるようになりました。実際の手術では、頬の下半分の脂肪吸引を行えば、マリオネットライン周辺のジョールの範囲も通常は吸引の対象に含まれます。 同じ部位に同じカニューレを通すだけなのに、別メニューとして加算されているなら、それは実質的な二重請求に近い状態です。
見るべきポイント
安心できる説明
注意が必要な説明
吸引範囲
図で範囲を示し、ジョールが含まれるか明言する
「頬とジョールは別物なので両方必要です」とだけ言う
料金
範囲ごとの総額が明確
カウンセリングのたびにオプションが増える
必要性
「あなたはジョールの追加は不要」と言える
全員に同じセットを勧める
「その追加料金で、具体的に何が増えるのですか?」 と聞いて、明確に答えられない院は避けたほうが賢明です。
闇② 「カリカリ・ペラペラにします」の危険性
SNSで目を引くのが、「フェイスラインをカリカリに」「首をペラペラに」といった強い言葉で集客する医師です。こうした仕上がりを狙って、首の皮膚の下にある薄い筋肉「広頚筋(こうけいきん)」のさらに下の層まで吸引を深追いする と、リスクは一気に高まります。
深追い吸引で起こりうること
内容
神経の損傷
口角を動かす神経が傷つき、笑ったときに口元が左右非対称になる
出血・血腫
深い層ほど血管が多く、術後の腫れや気道の圧迫につながりうる
唾液腺の露出・損傷
顎下の腺が目立って見える、腫れが長引く
取りすぎによる変形
首の中央がくぼむ、皮膚が筋肉に貼りついたような不自然な見た目になる
広頚筋より下の脂肪を扱う手術は、本来ネックリフトなど直視下で行う専門的な手術 として位置づけられるものです。首の脂肪吸引の合併症については、口腔顎顔面外科の分野でもまとめられており、神経損傷や輪郭の不整は、吸引の深さや量と密接に関係する と指摘されています。「カリカリ」「ペラペラ」という言葉は、仕上がりのインパクトを約束する一方で、安全マージンを削っているサイン である可能性があることを知っておいてください。
闇③ 麻酔体制の軽視
顔の脂肪吸引は、しっかりした病院では全身麻酔が推奨されることが多い手術 です。
気道に近い部位を扱い、術中の出血や体動のコントロールが安全性に直結するためです。
だからこそ、最低限確認したいのが麻酔科専門医(または麻酔科医)の管理体制 です。
確認すること
理由
麻酔を担当するのは誰か
執刀医が麻酔も兼ねる体制は、急変時の対応が遅れやすい
術中のモニター管理
酸素濃度や血圧を専任で見ている人がいるか
術後の緊急時の連絡・搬送体制
夜間の出血や呼吸苦にどう対応するか
遠方の患者への対応
帰宅後に異変があった場合、近隣の医療機関と連携できるか
麻酔科医のいない体制で全身麻酔や深い鎮静を行う院は、論外と考えてください。
■ 地雷クリニックを避けるチェックリスト
安心できる医師・院
避けたい医師・院
形成外科専門医で、顔の解剖を説明できる
直美(研修後すぐ美容外科に入った医師)で経歴が見えない
吸引範囲と料金を図と総額で説明する
オプションを重ねて料金が膨らむ
取りすぎのリスクや神経損傷を自分から話す
「カリカリ」「ペラペラ」など仕上がりの強さばかり強調
麻酔科医が麻酔を担当する
執刀医が麻酔も兼ねる
術後3〜6か月以上の症例を見せる
SNS映えする術直後の写真ばかり
遠方患者の術後フォロー体制を説明できる
「何かあれば近くの病院へ」で終わる
「取らないほうがいい」と言える
全員に同じセットを勧める
SNSを毎日のように更新しているのに、長期経過の症例や合併症の説明がほとんど見当たらない医師 は要注意です。発信の多さは、技術や安全性の保証にはなりません。
カウンセリングのコツや名医選びのポイント
顔の脂肪吸引で後悔しないために、最後に名医の条件を整理します。
形成外科専門医であることは最低条件ですし、脂肪吸引専門医みたいな直美は避けてください。
・糸リフトとのアップセルをしていないか
・顔の脂肪区画と神経の位置を理解し、
どこを取り、どこを残すか を説明できること
・ジョールなどの追加メニューについて、
本当に必要かどうかを正直に判断できる こと
・広頚筋の下まで深追いせず、安全マージンを守る こと
・麻酔科医による麻酔管理 と、術後の緊急対応体制が整っていること
・術後半年〜1年の長期経過 を見せられること
・「脂肪吸引は必要ない」と言える こと