シリコン豊胸は、美容外科手術の中でも医師の技量差が結果に最も強く反映される分野です。リップリング、被膜拘縮、左右差、位置ズレといったトラブルの多くは、バッグの種類そのものよりも、解剖評価、層選択、ポケット設計、術後管理の質によって左右されます。学会論文や長期レビューでも、一貫して強調されているのは術式名や製品名ではなく適応判断と手技精度です。
まず重要なのは、筋膜下やデュアルプレーンだから良い、乳腺下だから悪いという単純な構図は成り立たないという点です。乳腺下法は現在でも確立した術式であり、皮膚厚と乳腺量が十分にある症例では、自然さ、触感、長期安定性のいずれも良好な結果が出ています。一方で、薄い皮膚に対してサイズ優先で乳腺下に入れると、最悪ケースではリップリングや輪郭露出が顕在化します。逆に筋膜下やデュアルでも、剥離過多や固定不良があれば不自然さやズレが起きます。
論文ベースで整理すると、以下、結果を左右する要因です。
| 評価項目 | 実務で見るところ | 問題が起きる典型例 |
|---|---|---|
| 層選択 | 皮膚厚、乳腺量、BMI、骨格 | 術式名ありきの画一判断 |
| ポケット設計 | 剥離量と固定位置 | 過剰剥離によるズレ |
| サイズ選択 | 幅と高さの骨格適合 | 大きさ優先で合併症増 |
| リップリング対策 | 被覆量と皮膚条件 | 薄皮膚への過大サイズ |
| 感染対策 | 無菌操作と器具管理 | wound protector不使用 |
| 術後管理 | 圧迫、制限、定期診察 | 手術やりっぱなし |
次に豊胸バッグ選択についてです。モティバ、ベラジェル、メンターはいずれも現在臨床で使用されており、優劣は単純ではありません。重要なのは、どのバッグをどう使い分けるかを説明できるかです。
| 指標 | モティバ | ベラジェル | メンター |
|---|---|---|---|
| 表面 | スムース | スムース、テクスチャ | スムース、テクスチャ |
| 特徴 | 流動性が高く自然触感 | 厚みと張り感 | 長期データ豊富 |
| リップリング | 抑制傾向報告あり | 薄皮膚では出やすい | 表面仕様で変動 |
| 被膜拘縮 | 比較的低率報告 | データばらつき | 長期評価多い |
| 論文数 | 増加傾向 | 少なめ | 非常に豊富 |
| 適応 | 個別設計向き | 条件選ぶ | 標準例に強い |
FDA承認の有無は一つの指標にはなりますが、それだけで安全性が決まるわけではありません。実際の論文でも、再手術の多くはバッグ不良ではなく初回設計ミスに起因するとされています。また、在庫処理目的の混合使用や説明不十分なカスタマイズは、責任の所在が曖昧になりやすく実務的に避けるべきです。
名医かどうかを見分ける視点は、肩書や術式名ではありません。なぜ乳腺下を選ぶのか、なぜ筋膜下を避けるのか、リップリングが出た場合にどの層でどう再建するのか、被膜拘縮のグレード別対応を具体的に説明できるかが本質です。JSAPS所属や形成外科専門医は解剖学的トレーニングの指標にはなりますが、それだけで十分ではなく、症例ごとに判断を変えているかが重要です。
最悪ケースとして多いのは、術式名やバッグ名だけを売りにし、術後管理が弱い施設で拘縮や変形が進行し、入れ替えを繰り返す流れです。手術技術と同じくらい、術後フォロー体制と責任の取り方が結果を左右します。
結論として、シリコン豊胸は筋膜下か乳腺下か、モティバかメンターかという話ではありません。解剖評価に基づく層選択、再現性のあるポケット設計、適正サイズ、感染対策、長期フォローが揃って初めて安全域に入ります。検査と診察は必須で、直美や若い年齢の医師は避けるのが無難ですね。

