昨日は早稲田松竹で、劇場で観るのは8年半振りの鈴木清順監督「悲愁物語」を。

最初はいかにも昭和な感じではありながらも、鈴木清順監督の作家性、俳優陣の演技と存在感をしっかりと楽しみつつ、後半の展開は、現代社会のSNSに於ける嫉妬や醜さのあり方と重なり合う所も確実にある人間模様の描き具合が抜群の面白さ。

何よりも江波杏子の怪演ぶりマジ最高。

全てが狂っていて、全てが素晴らしかった。


最初はATGの香りもしながらの描き具合の中で、鳴り響く笑い声とそのカット割りに改めて狂ってるなと思わずにはいられなかった。


ゴルフに於ける師弟関係の酷さというか、醜さや愚かさを感じながら、注目されて行く過程での嫉妬が物凄くリアルだったし、通さないつもりが通り抜けて行くあの感じの中での滑稽ぶりが最高に面白かったし、画の構図の素晴らしさから、鈴木清順監督の脈々と流れ行く物を体感する事が出来た。


栄光を描いて行く中での嫉妬や欲望のリアルさというのは、どの世代にも関係なく感じられる物だったし、人間の欲望の渦の渦中で描いて行く物語が抜群の面白さ。


景色を映し出す中で渦を巻かせて行く事での得体の知れないリアルさは現代社会と繋がって行く所もあるように感じたし、理屈じゃない所での画と音で描く面白さはたまらない物があった。


野呂圭介さんの絶妙な存在感には思わずクスッと笑ってしまうし、良い味出しててあまりにも最高過ぎる。

原田芳雄さんも素晴らしかったし、清順監督作品お馴染みの俳優さんを観る楽しさもありながら、今回はやっぱり江波杏子さんの怪演ぶりがあまりにも最高過ぎた。


江波杏子の怪演ぶりに於ける最初の痛々しさがまたリアルで、ああいう人いるからなーっていう所での面白さが溢れていて。

後にある出来事がきっかけにその関係性が築き上げられて行くその過程はホラーでもあるけども、描かれて行くその過程と出来事はSNSに置き換えて行くと、非常にリアルで恐ろしい物があった。


お互いの関係性を共犯関係と呼べる所もあれば、支配と服従という所での人を描く面白さは凄まじい物があったし、支配と服従という所であれば、その一声でワッと人が押し寄せて好き放題やって、またその一声で去って行く、または次へ向かう感じは近年のSNSそのものの姿がここにあるように思った。


しかしながら、江波杏子が登場して相手の行いにムカついての包丁を使った行いには笑いを堪えるのに必死になってしまったけど、あんな風に包丁を使っている映画は「悲愁物語」以外ない(笑)


江波杏子がしゃしゃり出て来るその過程の描き具合が抜群の面白さだったし、カメラ越しに捉えられていた野呂圭介さんの存在感がまたあまりにも最高過ぎたし、あの運ばれて具合のドタバタ感観ていてとても楽しかったな。

あとこれとは別に、机の下から撮ってた画の構図が素晴らしかったなと。


夢と現実が交差するかのようなその描き具合が一つに繋がって行く終盤の描き具合には釘付けにならずにはいられない凄まじさが溢れていたし、容赦無く徹底的に描いて魅せたからこその物語の終わりの素晴らしさとその後の余韻はたまらない物があった。


2026年の現在と重なり合う所もあれば、そぐわない所もあるとは思うけど、人を描く面白さを存分に楽しむ事が出来たし、鈴木清順監督の作家性、俳優陣の演技と存在感を観る面白さ、画の構図や芸術性の素晴らしさを存分に堪能する事が出来て、全てが最高でした。