今までの練習の成果を出して絶対勝つ。
俺は背は低いけど、スピードには自信がある。
ポイントガードで今日もスタメンだ。
あと30分で試合が始まる。
そろそろあいつが来るな…
『お!今日は応援がけっこういるなー』
ほらきた。
あいつの声は本当に良く通る。
『グァンソガの横断幕貼らなくちゃ!』
独り言もデカイ。
友達とガサガサと応援の準備をしている。
「グァンソガ、また来てるな。あの子。毎回応援に来てるけど、ホントに付き合ってないの?」
G「付き合ってないよ。」
「ねぇ、ホントに?ホント?」
G「はぁ。だから付き合ってねーよ。何回聞くんだよ。俺は大人しい子が好きなの!」
あまりにもしつこく聞かれて思わず大声を出してしまった。
あっマズイ、あいつに聞かれた!と焦り、応援席を見る。
すると真顔のあいつがこっちを見ていた。
絶対聞かれた。どうしよう…
謝るか?いや、こんなとこで謝ったら変だ。
あれ、何で聞かれたらダメなんだ?別にあいつと付き合ってる訳じゃないし。
もうわからなくなって、振り切るようにコートに戻った。
試合が始まっても、さっきのあいつの真顔が忘れられない。あんな顔初めて見た。
あいつは笑顔や怒った顔、拗ねた顔…いろいろな顔を見せてくれるが真顔だけは見たことがなかった。
ダメだ。試合に集中しなければ。
声を出し、足を動かす。でもいつものように声が出ない。なんでっ…!
「あいつ、ホントにレギュラーかよ。動き悪いし、背低すぎ(笑)」
敵の応援席から、男の声がした。
レギュラーに入れなかったメンバーのようだ。
クソ…!やっぱり、俺、今日動き悪いよな。しっかりしろよ、自分。落ち込みそうになると、女の子の声が。
『もう一回言ったらぶっ飛ばす!背が低くたって、すごい速いんだから!今に見てな!誰にも止められないんだからね!』
え?あいつの声?やめろ、相手は男だぞ。
「うるせーよ。チビはチビなんだよ。実際、全然ボール触って無いじゃん、あのチビ。」
『だーかーら、これからなの!黙って見てなって!』
「お前何なんだよ。声もでけーし、女じゃねーな!」
そこまで聞こえていてもたってもいられず、応援席を見やる。
すると男はあいつの頭を叩いた。
避けようとしたら姿勢を崩しイスに倒れこむ。
あっ…!危ない!と思った瞬間、こめかみに強い衝撃があり、目の前が真っ暗に。
俺の意識は遠のいていった。
目を開けると保健室だった。
ベッドに横になってきるのがすぐわかった。
あぁ。俺は頭にボールが当たって気を失ったんだ。
今全てを思い出した。
あ!試合は!?と焦って起き上がる。
『まだ寝てないとダメだよ。怒られるよ、私が(笑)』
横を見るとあいつがニコニコして座ってる。
『先生に見張ってろと言われたから、私はグァンソガをここから出すわけには行かないよ。怒られるのヤダし(笑)』
「……」
あれ?なんでこいつは平気なんだ?叩かれてたはず…
「ねぇ。叩かれたとこ…」
あいつの頭に手を伸ばす。
『え?あ、大丈夫!避けたから!私、ほら運動神経いいからさっ!』
顔の前で、大丈夫!大丈夫!と必死に手を振る。
その手の動きが少しだけおかしい。
まさか!と思い、右手を奪い袖を捲る。
やっぱり。腕に紫色のアザがあった。
「おい。これは?あいつだろ?まじゆるせねー」
『大丈夫!大丈夫だから!あんなやつムカつくから、殴ってやっ…た…あれ。なんでだろ。ハハハ。ビビってたのかな。なんか安心して涙出てきちゃった。変なのー。ハハハ…』
あぁ!もぅ!
俺は思わず抱きしめる。
「俺の前では強がんなよ。もぅ無茶するな…」
『……』
「心配させるようなことするなよ。俺の側にいろよ。」
『……』
「黙ってないで何か言ってよ(笑)恥ずかしいじゃん、俺。返事は?」
『…グゥ~』
「は?お腹?」
2人顔を見合わせて笑う。
『お腹空いた(笑)』
「帰りに何か食べて帰るか」
『うん、肉!』
「肉かよ(笑)」
飾り気のないこいつを幸せにできるのはやっぱり俺だけだ。
こいつの応援は俺だけの物。
こいつの笑顔を守るのは俺の役目。
fin