去年の夏、仕事で日本の温泉に行ったのがとても気に入ったらしい。
普段から、テーマパークや人混みに行くのが苦手な彼。
温泉のようにゆっくりまったりできるのが性に合っているみたい。
昼間は観光をしてたくさん美味しい物を食べた。
彼は温泉まんじゅうが気に入ったようで、お土産に買うといって3つも購入していた。
宿に着いたのは、ちょうど夕日が沈み始めた午後5時。
部屋に着くと見晴らしが良く、思ったより広い。
「わぁお…すごい…」
窓から見える海に感動している彼。
目を見開いてニコニコしている横顔を見てすごく幸せな気持ちになった。
自然とニヤついている自分がいる。
そんな彼をやはり好きだと実感した途端、急に恥ずかしくなった。
自分の気持ちを誤魔化すように声をかける。
『広いねぇ。お茶飲む?』
「うん。ありがと」
彼は座椅子に腰を下ろしても、まだ部屋を見渡している。
二人きりの部屋は何となく照れくさくて、何だかいつも通りの会話ができない。
「広いね。すごいね…ヌナ、お菓子もあるよ」
『あ、うん。ありがと…』
これ以上会話が続かない。
いつも見ている彼の顔すら見れないでいる。
彼も私が顔を上げると目線をそらす。
気まずさから逃げるため
『せっかくだから、温泉入って来ようか』と言ってみた。
彼は一瞬ビクッとして
「そ、そうですね」と敬語。
お互い何故か緊張しているのは、
この先にある夜に期待をしているからかもしれない。
続く