●旅のスタイルは色々

私は日本に1万社もある旅行会社が、
そろそろ「昭和のバブル時代の旅行のあり方」を卒業して、
お客様に「お損」を煽るのではなく、
それぞれの旅行会社各社の個性と強みでお客様に
旅を提案して欲しいと思うのです。

・食べることに特化した旅行会社
・世界遺産にどこよりも詳しい旅行会社
・植物の名前なら必ず答える旅行会社
・いつも必ず晴れる旅行会社
・コンパニオンの質に自信がある旅行会社
・石畳の車椅子アテンドに腕を持つ旅行会社
・ガイドブックに載っていない場所専門の旅行会社


リスボンのガイドさんが、おっしゃっていました。
旅行業界への苦言です。

旅行会社は「売れる商品しか売らない。」

私もカナダでツアーガイドの経験があるので、
リスボンのガイドさんがおっしゃることは痛いほど判ります。

 

現場の最前線でお客さまをご案内されているガイドさんは
「もっとこうしたらよい旅になるのに」と考えています。

 

日本でエアコンの聞いたオフィスで、現場を知らずに
企画された商品は、現場のガイドさんからすると
「良心の呵責と戦いながらご案内をする」ことも多いのです。

 

でも、現場がそんなことを指摘しても聴く耳を持ってくれず、
現場目線の良い旅を提案しても、旅行会社の答えはひとつ。

「そう言うツアーは売れないんです。」

 

売れるツアーと良いツアーは違う。
これが現実です。

 

この現実に流されるのか、
理想を目指して踏ん張るのか。

 

私たちは旅を生業とするプロとして試されています。



ガイドさんは「売れない、売れないと嘆いているのではなく、
それをお客様にきちんと伝えるのが旅行会社の仕事だ」
と言います。

現場の最前線でツアーガイドをされていると、
日本の旅行会社本社がどんどんコストを削られていることを
肌で感じます。

ホテルのランクを下げ、
レストランの予算を下げ、
イヤホンガイドすら使わない。

売値を安くして、中身を削って、誰が幸せになるのか。
何のためにそんなことをするのか。

 

「安く、お得な旅を作って売るため」です。

 

気持ちは分かりますが、とても残念です。
残念としか言いようがない。

 

私は低予算の旅があっても良いと思います。
でも、今の旅行業界は、
「あと1万円払うから、美味しい食事がしたい」とか
「あと2万円払うから、私の希望を取り入れて欲しい」
というオーダーに正面から向き合っていません。

 

丁寧にお客様の声をくみ取る旅行会社は
本当に限られます。



私が今回に限らず、旅に込める想いは、

「お客様に、その国を好きになってもらうこと」

美味しくて、楽しくて、
素敵な人と出逢えた旅は、良い旅です。

帰国したらお客様に

「ポルトガルっていい国ですね。好きになりました。」

と言って、会社の人、親戚、友達に話をして欲しい。

素敵な土地と人、お客さまを繋ぐのが私たちの仕事です。
安く、お得な旅なら、お客様ご自身で組み立てられるのです。

 

 

遊園地ではありません。イワシの缶詰屋さんです。

棚に詰まっているのはすべてイワシの缶詰。

 

リスボンにて。