オバマ大統領就任直前にニューヨークのハドソン川で起きた
USエアウェイズの墜落事故。
奇跡的に全員が生還しました。
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090124/amr0901241008015-n1.htm
鳥がエンジンに飛び込む事故は特に恐れられていますが、最近の機材は
エンジンが2基のものが多く、その両方に鳥を吸い込むと今回のように
飛行そのものが困難になります。あっという間に推力を失ってしまうのです。
事故の直後、数分間の限られた時間に全員が脱出出来たのは
機長の冷静な判断と訓練された客室乗務員によるものであることは
疑いようがありません。
機長へ熟練の操縦と冷静な対応、そして沈む機体から全乗客を
脱出させた後、最後に機外に出た姿が印象的だったようです。
そのサレンバーガー機長はこのように話しています。
「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」
・不時着機長へ賞賛やまず
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090118/amr0901181908004-n1.htm
●飛行機のサービスとは
以前のメルマガでもご紹介しましたが、私は輸送に携わるものの最大の
サービスは「常に安全が担保されていること」に尽きると考えています。
私は運輸業界・旅行業界の経験が長いので、不安全とはどう言う状態かを
一般的な利用者より数倍、いやそれ以上熟知している積もりです。
一般的に乗客は「安さ」「表面的なサービス=ドリンクの提供のような
もの」をサービスだと考えています。それは当然のことでなぜなら、
「安全」であることは議論の余地がない「当然のこと」と言う前提が
あるからです。
皆さんが新幹線や通勤の電車に乗るとき「頼むから安全第一で走って
くれよ、無理はするなよ」などと考えて乗らないと思います。
(私はいつも思いますが)
飛行機のコスト構造は割と単純です。
乱暴に言ってしまえば運行そのもののコストと安全へのコストです。
安全のコストとは、働く人にまともな人件費を払っているか、
そして極めて乗客からは目に見えにくい整備と言った部分
(恐らく乗客の誰からも頑張ってくれてありがとうと言われにくい部分)に、
どれだけコストがかけられるかに掛かっています。
私の経験でお話をします。
ある時、どうしても出張で格安系航空会社を利用せざるを得なかった時、
私はたまたまいちばん前の座席に座っていました。
飛行機が離陸してしばらくはシートベルトのサインが付いたままですから
機内は静かです。するとカーテンの向こうのギャレーから客室乗務員の
おしゃべりが聞こえて来るのです。
「それでさあ、こないだの○○。まったく嫌になっちゃう。」
のようなたわいのない若者の雑談です。
私は鳥肌が立ちました。
この会社の客室乗務員は何かあったときに私達を助けてはくれないでしょう。
と言うより緊急脱出訓練にはまともなコストを掛けてはいないでしょう。
勤務終了後や非番の日に緊急脱出訓練を淡々と繰り返すのは地味な業務
ですし、会社としてはコストが掛かります。
それでも「ないに越したことはない」緊急事態の為に余分なコストが
掛かるのであれば、それは安全コストとして、私達受益者が負担するのは
当然だと考えます。
●鉄道だって同じじゃない
飛行機には格安系とそうでない会社が明確ですから、まだ理解頂ける
かもしれませんが、鉄道はどうでしょうか。
鉄道会社だって安全へのコストは同じではありません。
線路保線への考え方や車両整備へのコスト、安全への投資など、
本気でやっている会社とそうでない会社の差は歴然としています。
私は20代の頃、鉄道会社に勤務していましたが、夜勤明けで眠たい
中を毎月毎月、嫌になるほど「非常時訓練」をやらされました。
列車防護訓練、乗客の避難誘導訓練、人命救助訓練、事故処置訓練・・・。
これらをひたすら繰り返すことで、実際に大きな事故の現場に遭遇しても
不思議な位、冷静に淡々と「やるべき事をこなして」行けるのです。
事故の大きさは比べものになりませんが、サレンバーガー機長が言う
「訓練してきたことをやっただけ。自慢も感動もない」
のは、謙遜しているのではなくホンネだと思います。
訓練してきたことをやれるかやれないかだけなのです。
私達は食品の偽装で痛い目に遭いました。
そこから何を学ぶのか、何をコストとして引受け、消費者として
何を指示するべきなのか。
不況下で格安激安がふたたび社会に広がっています。
『サービスは客が育てる』
これは私の信念です。
消費者がいいかげんな気持ちではサービスそのものが育ちません。